2直階段設置の際、他の室経由での避難経路は認められますか?
他室を経由する場合、歩行経路として認められないよ!
『建築物の防火避難規定の解説』と『建築基準法』を基に解説しよう!
はじめに
建物の設計では、避難経路の確保が最優先課題の一つです。特に「居室経由避難」は、防火避難規定において明確に制限されており、誤解すると設計ミスやトラブルの原因になりかねません。
本記事では、 建築基準法施行令の条文をもとに、居室経由の避難経路がなぜ認められないのか を詳しく解説します。初心者から経験者まで役立つ内容となっていますので、設計や確認申請に携わる方はぜひ参考にしてください!
スポンサーリンク第1章 2以上の直通階段とは?
『2以上の直通階段』に関しては、建築基準法施行令第121条で定められています。火災の時に安全に避難階に避難できるように、2つ以上の階段を設けることが決められています。
該当条文を確認してみよう!
スポンサーリンク(二以上の直通階段を設ける場合)
第百二十一条 建築物の避難階以外の階が次の各号のいずれかに該当する場合においては、その階から避難階又は地上に通ずる二以上の直通階段を設けなければならない。
一 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂又は集会場の用途に供する階でその階に客席、集会室その他これらに類するものを有するもの
二 物品販売業を営む店舗(床面積の合計が千五百平方メートルを超えるものに限る。第百二十二条第二項、第百二十四条第一項及び第百二十五条第三項において同じ。)の用途に供する階でその階に売場を有するもの
三 次に掲げる用途に供する階でその階に客席、客室その他これらに類するものを有するもの(五階以下の階で、その階の居室の床面積の合計が百平方メートルを超えず、かつ、その階に避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するもの及びその階から避難階又は地上に通ずる直通階段で第百二十三条第二項又は第三項の規定に適合するものが設けられているもの並びに避難階の直上階又は直下階である五階以下の階でその階の居室の床面積の合計が百平方メートルを超えないものを除く。)
イ キャバレー、カフェー、ナイトクラブ又はバー
ロ 個室付浴場業その他客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業を営む施設
ハ ヌードスタジオその他これに類する興行場(劇場、映画館又は演芸場に該当するものを除く。)
ニ 専ら異性を同伴する客の休憩の用に供する施設
ホ 店舗型電話異性紹介営業その他これに類する営業を営む店舗
四 病院若しくは診療所の用途に供する階でその階における病室の床面積の合計又は児童福祉施設等の用途に供する階でその階における児童福祉施設等の主たる用途に供する居室の床面積の合計が、それぞれ五十平方メートルを超えるもの
五 ホテル、旅館若しくは下宿の用途に供する階でその階における宿泊室の床面積の合計、共同住宅の用途に供する階でその階における居室の床面積の合計又は寄宿舎の用途に供する階でその階における寝室の床面積の合計が、それぞれ百平方メートルを超えるもの
六 前各号に掲げる階以外の階で次のイ又はロに該当するもの
イ 六階以上の階でその階に居室を有するもの(第一号から第四号までに掲げる用途に供する階以外の階で、その階の居室の床面積の合計が百平方メートルを超えず、かつ、その階に避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するもの及びその階から避難階又は地上に通ずる直通階段で第百二十三条第二項又は第三項の規定に適合するものが設けられているものを除く。)
ロ 五階以下の階でその階における居室の床面積の合計が避難階の直上階にあつては二百平方メートルを、その他の階にあつては百平方メートルを超えるもの
2 主要構造部が準耐火構造である建築物又は主要構造部が不燃材料で造られている建築物について前項の規定を適用する場合には、同項中「五十平方メートル」とあるのは「百平方メートル」と、「百平方メートル」とあるのは「二百平方メートル」と、「二百平方メートル」とあるのは「四百平方メートル」とする。
3 第一項の規定により避難階又は地上に通ずる二以上の直通階段を設ける場合において、居室の各部分から各直通階段に至る通常の歩行経路の全てに共通の重複区間があるときにおける当該重複区間の長さは、前条に規定する歩行距離の数値の二分の一をこえてはならない。ただし、居室の各部分から、当該重複区間を経由しないで、避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するものに避難することができる場合は、この限りでない。
4 第一項(第四号及び第五号(第二項の規定が適用される場合にあつては、第四号)に係る部分に限る。)の規定は、階数が三以下で延べ面積が二百平方メートル未満の建築物の避難階以外の階(以下この項において「特定階」という。)(階段の部分(当該部分からのみ人が出入りすることのできる便所、公衆電話所その他これらに類するものを含む。)と当該階段の部分以外の部分(直接外気に開放されている廊下、バルコニーその他これらに類する部分を除く。)とが間仕切壁若しくは次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める防火設備で第百十二条第十九項第二号に規定する構造であるもので区画されている建築物又は同条第十五項の国土交通大臣が定める建築物の特定階に限る。)については、適用しない。
一 特定階を第一項第四号に規定する用途(児童福祉施設等については入所する者の寝室があるものに限る。)に供する場合 法第二条第九号の二ロに規定する防火設備(当該特定階がある建築物の居室、倉庫その他これらに類する部分にスプリンクラー設備その他これに類するものを設けた場合にあつては、十分間防火設備)
二 特定階を児童福祉施設等(入所する者の寝室があるものを除く。)の用途又は第一項第五号に規定する用途に供する場合 戸(ふすま、障子その他これらに類するものを除く。)
第2章 他居室経由での避難について
建築基準法施行令第121条第1項の規定により、2つ以上の直通階段を設ける場合には、通常の歩行経路によってこれらの階段に接続することが必要です。
『通常の歩行経路』の基本要件
『通常の歩行経路』には、明確な定義がなく建築基準法でも記載がありません。しかし、『建築物の防火避難規定の解説』ではしっかりと触れられています。
本項では、建築物の防火避難規定の解説を読み取り、重要部分をまとめています。それでは、通常の歩行経路に求められる要件についておさらいをしていきます。
スポンサーリンク合理的な動線であること
居室から廊下へ、そして廊下から階段へと、わかりやすい経路である必要があります。
- 廊下から一旦別の部屋を経由するルートは避難経路として認められません。
- この規定により、避難者が非常時に迷わず移動できることが保証されます。
日常的に利用されていること
非常時に突然使用されるのではなく、普段から使われているルートであることが望ましいです。日常的に慣れ親しんだ経路であれば、緊急時にも迅速に移動できます。
項目 | 内容 |
---|---|
避難経路の一貫性 | 居室 → 廊下 → 階段の順で動線が確保されること。 |
重複距離の制限 | 各直通階段への経路が交差・重複する場合、その重複区間の長さが制限される。 |
部屋の経由禁止 | 廊下から別の部屋を通る経路は、原則として「通常の歩行経路」として認められない。 |
2直階段の重複距離については、下記記事にて解説をしているよ!
学校の平面図を例にするとこんな感じのイメージです!
建築基準法施行令第120条第1項との関係
建築基準法施行令第120条第1項で定められる歩行距離の規制も、原則として「通常の歩行経路」に基づいて適用されます。これは、避難者が廊下や階段などの避難施設を利用することを想定し、効率的かつ安全な避難を可能にするための基準です。
直通階段の定義や構造って知っていますか?
実は、認められない条件もあるので設計者は必ず確認の内容です!
下記記事にて解説をしています。
建築基準法を見てみよう!
(直通階段の設置)
第百二十条 建築物の避難階以外の階(地下街におけるものを除く。次条第一項において同じ。)においては、避難階又は地上に通ずる直通階段(傾斜路を含む。以下同じ。)を次の表の上欄に掲げる居室の種類の区分に応じ当該各居室からその一に至る歩行距離が同表の中欄又は下欄に掲げる場合の区分に応じそれぞれ同表の中欄又は下欄に掲げる数値以下となるように設けなければならない。2 主要構造部が準耐火構造である建築物(特定主要構造部が耐火構造である建築物を含む。次条第二項及び第百二十二条第一項において同じ。)又は主要構造部が不燃材料で造られている建築物の居室で、当該居室及びこれから地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路の壁(床面からの高さが一・二メートル以下の部分を除く。)及び天井(天井のない場合においては、屋根)の室内に面する部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。)の仕上げを準不燃材料でしたものについては、前項の表の数値に十を加えた数値を同項の表の数値とする。ただし、十五階以上の階の居室については、この限りでない。
3 十五階以上の階の居室については、前項本文の規定に該当するものを除き、第一項の表の数値から十を減じた数値を同項の表の数値とする。
4 第一項の規定は、主要構造部を準耐火構造とした共同住宅(特定主要構造部を耐火構造とした共同住宅を含む。第百二十三条の二において同じ。)の住戸でその階数が二又は三であり、かつ、出入口が一の階のみにあるものの当該出入口のある階以外の階については、その居室の各部分から避難階又は地上に通ずる直通階段の一に至る歩行距離が四十メートル以下である場合においては、適用しない。
直通階段について、他にも重要なルールがあるよ!合わせて学んでおこう!
第3章 「建築物の防火避難規定の解説」を手に入れよう!
建築基準法や国土交通省の告示や通達を見ても、
本記事に関する情報は、載ってニャイよね?
そうなんだよ。『建築物の防火避難規定の解説』にしか載っていないんだ。
つまりこれがないと、設計が行き詰まってしまう場合があるんだ。
設計者は必ず購入すべき本です!少し高いけど、ずっと使えるから持っておくべきだよ!
おわりに
避難経路の設計は、建物の安全性を確保する上で欠かせない要素です。特に居室を経由する避難経路は、合理的な動線や非常時の有効性を欠くことから、原則として認められていません。
今回解説した内容は、建築基準法施行令の重要ポイントに基づいていますが、実務ではケースごとの判断が求められることもあります。法令を正確に理解しつつ、実際の設計に適用するための判断力を養いましょう。