駐車場って何を手掛かりに計画すればいいの?
車によって大きさが違うし・・・
駐車場の寸法は、国土交通省が基準値を決めているよ!
基準値や車種の大きさを踏まえつつ、個人的な計画ポイントを解説しよう!
はじめに
馴染みが深い駐車場。でも実際の寸法や車路の幅員まで熟知している人は意外と少ないです。
本記事では、一級建築士が国土交通省の駐車場基準や実際の車の大きさを踏まえ、個人的な駐車場計画のポイントを解説します。
第1章 道路運送車両法上の車の種別について
まずは車自体の大きさを知るところから始めよう!
駐車場の計画において、車の種類と大きさを理解することは不可欠です。
一般的な自動車規格は、道路運送車両法によって下記3種類に分類されます。
上記の分類は、「排気量」と「サイズ(全長、全幅、全高)」の2つの指標で構成されています。
下記は、サイズと排気量によって分類される自動車の規格表です。
車種 | 全長 | 全幅 | 全高 | 総排気量 |
---|---|---|---|---|
軽自動車 | 3,400mm以下 | 1,480mm以下 | 2,000mm以下 | 660cc以下 |
小型自動車 | 4,700mm以下 | 1,700mm以下 | 2,000mm以上 | 2,000cc未満 |
普通自動車 | 4,700mm以上 | 1,700mm以上 | 2,000mm以上 | 2,000cc以上 |
分類① 軽自動車
軽自動車は全長が3,400mm以下、全幅が1,480mm以下、全高が2,000mm以下の車種です。総排気量は660cc以下です。
分類② 小型自動車
小型自動車は全長が4,700mm以下、全幅が1,700mm以下、全高が2,000mm以上の車種です。総排気量は2,000cc未満の車種です。
分類③ 普通自動車
普通自動車は全長、全幅、全高のいずれかひとつでも小型自動車の基準を上回る車種であり、また総排気量が2,000cc以上の車種です。
以上が、自動車の規格とそれぞれの車種の基準です。今回は代表的な自動車に絞り解説をしております。2輪車やトラックなどの取り扱いは、下記HPを参照願います。
国土交通省発行スポンサーリンク
第2章 一般的な車の種別について
私はハイエースをよく乗るんだけど、
一般的には大型車だと思うんだよね。。。
いいところに気がつきましたね!
本章では、具体的な車種を事例に車種毎に振り分けてみましょう!
道路運送車両法の分類がお分かり頂けたところで、本章では一般的な車の種別のご紹介を行います。「車種」と「道路運送車両法」の分類をご覧頂き、普段目にする車はどれに該当するか見てみましょう。より理解が深めていきます。
車種 | 道路運送車両法の分類 | 全幅 (mm) | 全長 (mm) | 全高 (mm) | 代表的なモデル(例) |
---|---|---|---|---|---|
軽自動車 | 軽自動車 | 1,480 | 3,400 | 1,750 | スペーシア(スズキ)、タント(ダイハツ)、N-BOX(ホンダ) |
コンパクトカー | 小型自動車 | 1,700 | 4,100 | 1,500 | ヤリス(トヨタ)、ノート(日産)、フリード(ホンダ) |
中型車 | 普通自動車 | 1,700 | 4,700 | 1,500 | カローラ(トヨタ)、プリウス(トヨタ)、スカイライン(日産) |
ワンボックスカー | 普通自動車 | 1,700 | 4,800 | 2,000 | ノア(トヨタ)、フリード(ホンダ)、セレナ(日産) |
大型車 | 普通自動車 | 1,850 | 5,000 | 1,500 | ハイエース(トヨタ)、Gクラス(メルセデスベンツ)、デリカD5(三菱) |
小型トラック (2t) | 小型自動車 | 1,700 | 4,700 | 2,000 | ダイナ(トヨタ)、エルフ(いすゞ)、キャンター(三菱) |
中型トラック (4t) | 普通自動車 | 2,200 | 7,600 | 2,680 | フォワード(いすゞ)、コンドル(日野)、プロフィア(日産) |
大型トラック (10t) | 普通自動車 | 2,500 | 12,000 | 3,800 | スーパーグレート(日野)、クエスト(UDトラックス)、キングランガー(いすゞ) |
それぞれを平面図上で重ね合わせたのが、下図だよ!
「道路運送車両法」で同じカテゴリーでも、全然大きさが違うのがわかるね。
第3章 駐車場の適正な大きさ
ここまでで車の法的な分類と身近な車のサイズ感を把握頂きました。本章では、国土交通省が定める駐車場の標準寸法と実態について解説をします。実際の設計でも、これらの数値を根拠とし設計することが多い為、暗記するだけでプロ顔負けの計画レベルがつきます。
駐車ますとは、車一台あたりの駐車スペースを指します。
車の大きさはバリエーション豊富だけど、駐車マスの基準寸法のバリエーションは少ないね!
本来は車に合わせて、もっとバリエーションがあっても良いと思うけど。。。
その通り!いいところに気がついたね!
車の大きさをプロットして余剰寸法がどれくらい取れるのか、検証してみよう!
国交省の定める駐車ますはどれくらいの大きさなの?
「駐車場設計・施工指針」で推奨されている駐車マスは、実際の車が駐車した際どれくらいの余裕があるか検証してみましょう。
車種 | W (国交省駐車ます – 車両の大きさ) | D (国交省駐車ます – 車両の大きさ) |
---|---|---|
軽自動車 | 2.0 – 1.48 = 0.52m | 3.6 – 3.4 = 0.2m |
小型自動車 (小型乗用車) | 2.3 – 1.7 = 0.6m | 5.0 – 4.1 = 0.9m |
普通乗用車 (中型車-大型車) | 2.5 – 1.7 = 0.8m 2.5 – 1.85 = 0.65m | 6.0 – 4.8 = 1.2m 6.0 – 5.0 = 1.0m |
国土交通省としては、W方向:0.5m以上 D方向:1m程度の離隔を標準としていることが読み取れました。※軽自動車のD方向の残り距離のみ例外的な寸法でした。
国が推奨するくらいだからこれって使いやすいんだよね?
これは個人的な見解だけど、使いやすい大きさではないと考えるよ!
実は、まだ見落としていることがあるんだよ。。。
実は、ここまでベースとしていた車の大きさは、サイドミラーが含まれていません。
それは、カタログに載っている車の寸法は、サイドミラーが取り外された状態の寸法なのです。
法令根拠は、下記引用部分となります。
四 車体外に取り付けられた後写鏡、後方等確認装置、保安基準第44条第5項の装置、側
道路運送車両の保安基準の細目を定める告示【2020.12.25】 第162条(長さ、幅及び高さ)
面周辺監視装置(その突出量が保安基準第2条第2項第3号及び第4号に定める突出量を
超えないものに限る。以下この号において同じ。)及びたわみ式アンテナについては、
これらの装置を取りはずした状態。この場合において、車体外に取り付けられた後写
鏡、後方等確認装置、保安基準第44条第6項の装置及び側面周辺監視装置は、当該装置
に取り付けられた灯火器及び反射器を含むものとする。
サイドミラーを含めて、ドアをゆとりある寸法で開けるには、
一体どれくらい確保すればいいんだ??
その悩み、私なりに考察してみよう!
・一般的なサイドミラーは、片側250mm程度ですので、両側で500mm程度になります。
・サイドドアをフルオープンにする場合、800mm程度が必要になります。
・バックドアは、車体に応じた離隔距離の確保が望ましいです。車種によって開閉軌跡が異なるので、要メーカー確認です。
これらを踏まえ、駐車マスの大きさをプロットし直してみよう!
そうすれば使いやすい大きさが求められるはずだ!
片側サイドドアをフルオープン可能とする場合の理想値(案)
補足 超高齢化社会に向けたバリアフリー駐車ますの考え方
超高齢化社会を迎える日本にとって、今後は一層バリアフリー対応が求められることは必須です。補足として身障者用駐車ますのご紹介をします。一般的に国土交通省では、車椅子利用者用駐車ますは、W=3.5m以上とされています。
2.5 身体障害者等に対する配慮
平成 6 年 9 月 28 日建設省道企発第 63 号
身体障害者等による駐車場の円滑な利用を図るため、以下の措置を講ずるものとする。 (1) 身体障害者等の利用が可能な駐車ます(以下「車椅子利用者用駐車ます」という。)
を出入口(自動車のみの用に供するものを除く。以下同じ)、サービス施設などの諸 施設の近傍で、駐車場内の歩行距離が短く、自動車の交通動線との交錯が極力少なくなる位置に配置するものとし、次の基準によるものとする。
1 車椅子利用者用駐車ますの幅は3.5m以上とする。
2 車椅子利用者用である旨を見やすい方法で表示する。
平成 6 年 9 月 28 日建設省道企発第 63 号スポンサーリンク
4章 敷地内の車路計画について
駐車マスは理解できたね!
次は、駐車マス(車室)に面した車路の幅を解説しよう!
本章では車路の幅員について解説を行います。下記表は、国土交通省が定める「車室に面した車路の幅員」の基準寸法です。
左側の幅員欄は、計画上好ましい寸法です。右側の幅員欄は、計画上やむを得ない場合の許容寸法です。
スポンサーリンクおわりに
駐車場の計画は、車両の種類やサイズを理解し、国土交通省の基準に従うことが重要です。しかし、基準値はあくまで目安であり、実際の使用状況や環境に応じて調整することが求められます。例えば、サイドミラーやドアの開閉を考慮することで、実際に使いやすい駐車スペースを確保することができます。
また、超高齢化社会に向けたバリアフリー対応も忘れてはなりません。今後、更に超高齢化社会を迎えるにあたり、ニーズも多様化していくことでしょう。本記事が、少しでもお役立ちできたら幸いです。