延焼ラインについて詳しく知りたいです!
『延焼の恐れのある部分』ね!
用語の解説から規制内容及び緩和規定について、解説しよう!
はじめに
火災による建物の被害を最小限に抑えるため、建築物間の延焼を防ぐために「延焼ライン」という概念が重要です。
本記事では、延焼ラインの定義、規制、そして緩和条件について詳しく解説します。建築物の設計や防火設備の計画において、延焼ラインがどのように考慮されるのか、そのポイントを明確にします。
スポンサーリンク第1章 延焼ラインとは?
意味:火災時に周囲の建物などに燃え広がる可能性のある範囲を指します。
延焼ライン:通称(正式な名称ではありません。)
延焼の恐れのある部分:法令上の表現
※以降、『延焼ライン』と呼ぶ。
火事が起きても最小限に留めることが重要だよね!
あらかじめ燃え広がらないように、防火性能を高めて未然に防ごう!
延焼ラインの範囲は?
延焼ラインは、下記より1階は3m以内、2階以上は5m以内の範囲を指します。
・道路中心線
・隣地境界線
・2つの建築物の外壁中心線(敷地内に2以上の建物があり、2つの延床面積の合計が500㎡超の場合)
『・2つの建築物の外壁中心線』については、一部除外規定があります。
「下記附属建築物」かつ「主要構造部が不燃材料」の場合、延焼ラインが発生しないものとして扱うことが可能です。
<対象となる附属建築物>
・自転車置場
・ポンプ室
・受水槽上屋
・浄化槽の上屋
・小規模な物置(平家)
これって建築基準法に記載がないよね?
そうなんです。防火避難規定の解説に書いてあるよ。これは設計者必携の1冊です。
必ず1冊購入をおすすめします!
該当する建築基準法を見てみよう!
(用語の定義)
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(中略)
六 延焼のおそれのある部分 隣地境界線、道路中心線又は同一敷地内の二以上の建築物(延べ面積の合計が五百平方メートル以内の建築物は、一の建築物とみなす。)相互の外壁間の中心線(ロにおいて「隣地境界線等」という。)から、一階にあつては三メートル以下、二階以上にあつては五メートル以下の距離にある建築物の部分をいう。ただし、次のイ又はロのいずれかに該当する部分を除く。
イ 防火上有効な公園、広場、川その他の空地又は水面、耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分
ロ 建築物の外壁面と隣地境界線等との角度に応じて、当該建築物の周囲において発生する通常の火災時における火熱により燃焼するおそれのないものとして国土交通大臣が定める部分
『ただし、次の〜』の記載もある通り、緩和もあるんだね!
緩和条件については、別の記事で解説します!
延焼ラインに該当しないケース
下記与件に全て該当しない場合、延焼ラインの規制が発生しません。1つでも該当する場合は、延焼ラインを考慮する必要があります。
・耐火建築物
・準耐火建築物
・法22条区域の木造建築物
・法27条に該当する特殊建築物
・防火地域の建築物
・準防火地域の建築物
第2章 緩和条件について
本章では、延焼ラインの緩和条件について法文を解説していきます!
建築基準法第二条1項六号イについて
『建築基準法第二条1項六号イ』をもう一度見てみよう。
ただし、次のイ又はロのいずれかに該当する部分を除く。
イ 防火上有効な公園、広場、川その他の空地又は水面、耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分
引用:建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)
ここでいう『防火上有効な〜』について、深掘りをしよう!
防火上有効な〇〇とは?
建築基準法にある通り『防火上有効な〜』に該当すると、規制無し若しくは緩和がされるんだ!
防火上有効な範囲として、建築基準法では下記が定められています。
・公園
・広場
・川その他の空地又は水面
・耐火構造の壁
・里道
防火上有効な範囲 | 緩和措置 |
---|---|
公園 | 面する部分は、延焼ラインの規制無し |
広場 | 面する部分は、延焼ラインの規制無し |
川やその他の空地・水面 | 面する部分は、延焼ラインの規制無し |
耐火構造の壁 | 一定の条件を満たす『耐火構造の袖壁』や『防火塀』を設けることで、延焼ラインの規制無し |
里道(下記解説記事です。) | 里道の中心線を基準に延焼ラインが発生 |
建築基準法第二条1項六号ロについて
『建築基準法第二条1項六号ロ』をもう一度見てみよう。
ロ 建築物の外壁面と隣地境界線等との角度に応じて、当該建築物の周囲において発生する通常の火災時における火熱により燃焼するおそれのないものとして国土交通大臣が定める部分
何を言っているのか、さっぱりわからないな。。。
『火元に対して、建物の角度があると火災被害に差があるよね!だから緩和してあげるよ!』
って感じかな!国土交通省の資料から、主旨を抜粋したよ!みてみて!
これについては別記事で解説をします。概要に留めておくよ!
第3章 延焼ラインの開口部に要求される規制
延焼ラインについては、理解できたわ!
じゃあ延焼ラインに抵触した開口部や外壁は、どうすればいいの?
建築基準法の4法文を紹介しよう!
耐火建築物・準耐火建築物の場合(第二条)
耐火建築物及び準耐火建築物の定義を見てみましょう。構造以外に、延焼ラインに抵触する開口部規制があります。これらは、防火設備の計画が必要となります。
九の二 耐火建築物次に掲げる基準に適合する建築物をいう。
イ その主要構造部のうち、防火上及び避難上支障がないものとして政令で定める部分以外の部分(以下「特定主要構造部」という。)が、(1)又は(2)のいずれかに該当すること。
(1)耐火構造であること。
(2)次に掲げる性能(外壁以外の特定主要構造部にあつては、(i)に掲げる性能に限る。)に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること。
(i)当該建築物の構造、建築設備及び用途に応じて屋内において発生が予測される火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。
(ii)当該建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。
ロ その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能(通常の火災時における火炎を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。第二十七条第一項において同じ。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を有すること。九の三 準耐火建築物 耐火建築物以外の建築物で、イ又はロのいずれかに該当し、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に前号ロに規定する防火設備を有するものをいう。
イ 主要構造部を準耐火構造としたもの
ロ イに掲げる建築物以外の建築物であつて、イに掲げるものと同等の準耐火性能を有するものとして主要構造部の防火の措置その他の事項について政令で定める技術的基準に適合するもの
屋根不燃化区域内の場合(第二十三条)
22条区域の木造建築物も注意が必要です。下記の通り、外壁を防火構造とする必要があります。
スポンサーリンク(外壁)
第二十三条 前条第一項の市街地の区域内にある建築物(その主要構造部の第二十一条第一項の政令で定める部分が木材、プラスチックその他の可燃材料で造られたもの(第二十五条及び第六十一条第一項において「木造建築物等」という。)に限る。)は、その外壁で延焼のおそれのある部分の構造を、準防火性能(建築物の周囲において発生する通常の火災による延焼の抑制に一定の効果を発揮するために外壁に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合する土塗壁その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
特殊建築物の場合(第二十七条)
一部の条件を満たす特殊建築物にも規制が発生します。
(耐火建築物等としなければならない特殊建築物)
第二十七条 次の各号のいずれかに該当する特殊建築物は、その特定主要構造部を当該特殊建築物に存する者の全てが当該特殊建築物から地上までの避難を終了するまでの間通常の火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために特定主要構造部に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとし、かつ、その外壁の開口部であつて建築物の他の部分から当該開口部へ延焼するおそれがあるものとして政令で定めるものに、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を設けなければならない。
防火地域・準防火地域内の場合(第六十一条)
当該敷地が、防火地域や準防火地域に位置する場合、開口部に規制が発生します。
スポンサーリンク(防火地域及び準防火地域内の建築物)
第六十一条 防火地域又は準防火地域内にある建築物は、その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸その他の政令で定める防火設備を設け、かつ、壁、柱、床その他の建築物の部分及び当該防火設備を通常の火災による周囲への延焼を防止するためにこれらに必要とされる性能に関して防火地域及び準防火地域の別並びに建築物の規模に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。ただし、門又は塀で、高さ二メートル以下のもの又は準防火地域内にある建築物(木造建築物等を除く。)に附属するものについては、この限りでない。
2 前項に規定する基準の適用上一の建築物であつても別の建築物とみなすことができる部分として政令で定める部分が二以上ある建築物の当該建築物の部分は、同項の規定の適用については、それぞれ別の建築物とみなす。
大事なことを忘れてた!!!
地下はどうすればいいの???
安心してください!地階の場合の延焼ラインは、下記記事で解説してますよ!
おわりに
延焼ラインは、火災時における建物間の火の通り道を制限し、被害を最小限に食い止める重要な規制基準です。本記事を通じて、延焼ラインの範囲と緩和条件について理解を深めていただけたことを願っています。建築設計や防火対策において、この知識が活かされることを期待しています。
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