
竪穴区画において、避難階から直上階や直下階に通ずる吹抜けの取り扱いを教えて下さい!

解釈と条件について、『建築物の防火避難規定の解説』をもとに解説します!
はじめに

建築設計において、竪穴区画の計画は建築物の安全性確保に直結する重要なテーマのひとつです。とりわけ、避難階と直上階または直下階との間に設けられた吹抜け空間の取り扱いについては、一般的な防火区画のルールとは異なる緩和条件が適用される場合があり、正確な理解が求められます。
本記事では、国土交通省が監修する『建築物の防火避難規定の解説』をもとに、吹抜けの緩和条件とその際に必要となる内装制限の範囲、適用外となるケースについて、具体的かつ実務的な視点から丁寧に解説します。

第1章 避難階からその直上階又は直下階のみに通ずる吹抜きについて

1 避難階からその直上階または直下階のみに通じる吹抜けの場合

避難階からその直上階または直下階のみに通じる吹抜き部分として区画を免除した場合の内装制限の範囲については、単に吹抜き部分のみを対象とするのでは不十分です。
そのため、吹抜き部分と一体となっている空間全体を内装制限の対象とする必要があります。

また、不燃材料による下地および仕上げを行うべき範囲は、当該吹抜き部分を含め、準耐火構造の床または壁、特定防火設備、または両面20分の防火設備で区画された部分すべてといたします。
なお、二層だけに通ずる吹抜き部分や階段部分については、その部分の壁および天井の室内に面する仕上げおよび下地を不燃材料とすることで、他の部分への延焼を防ぎつつ、所要の避難安全性を確保することを目的としています。
スポンサーリンク2 避難階の直下階から直上階までの三層にまたがる吹抜けの場合

「避難階の直上階または直下階のみに通ずる吹抜き部分」とは、避難階と直上階、もしくは避難階と直下階の二層にわたる空間を指し、避難階の直下階から直上階までの三層にまたがるものについては、緩和の対象外となります。



ここでいう「下地」とは、壁の場合には仕上げ材のボード類を取り付ける間柱や胴縁を、天井の場合にはつり木や野縁を指します。
(防火区画)
第百十二条 法第二条第九号の三イ若しくはロのいずれかに該当する建築物(特定主要構造部を耐火構造とした建築物を含む。)又は第百三十六条の二第一号ロ若しくは第二号ロに掲げる基準に適合する建築物で、延べ面積(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の二分の一に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)が千五百平方メートルを超えるものは、床面積の合計(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の二分の一に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)千五百平方メートル以内ごとに一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備(第百九条に規定する防火設備であつて、これに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後一時間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。以下同じ。)で区画しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物の部分でその用途上やむを得ないものについては、この限りでない。(中略)
11 主要構造部を準耐火構造とした建築物(特定主要構造部を耐火構造とした建築物を含む。)又は第百三十六条の二第一号ロ若しくは第二号ロに掲げる基準に適合する建築物であつて、地階又は三階以上の階に居室を有するものの竪たて穴部分(長屋又は共同住宅の住戸でその階数が二以上であるもの、吹抜きとなつている部分、階段の部分(当該部分からのみ人が出入りすることのできる便所、公衆電話所その他これらに類するものを含む。)、昇降機の昇降路の部分、ダクトスペースの部分その他これらに類する部分をいう。以下この条において同じ。)については、当該竪たて穴部分以外の部分(直接外気に開放されている廊下、バルコニーその他これらに類する部分を除く。次項及び第十三項において同じ。)と準耐火構造の床若しくは壁又は法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で区画しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する竪たて穴部分については、この限りでない。
一 避難階からその直上階又は直下階のみに通ずる吹抜きとなつている部分、階段の部分その他これらに類する部分でその壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造つたもの
二 階数が三以下で延べ面積が二百平方メートル以内の一戸建ての住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸のうちその階数が三以下で、かつ、床面積の合計が二百平方メートル以内であるものにおける吹抜きとなつている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分その他これらに類する部分
第2章 「建築物の防火避難規定の解説」を手に入れよう!


建築基準法や国土交通省の告示や通達を見ても、
本記事に関する情報は、載ってニャイよね?

そうなんだよ。『建築物の防火避難規定の解説』にしか載っていないんだ。
つまりこれがないと、設計が行き詰まってしまう場合があるんだ。
設計者は必ず購入すべき本です!少し高いけど、ずっと使えるから持っておくべきだよ!
おわりに

竪穴区画に関する規定、とりわけ避難階と隣接階にまたがる吹抜け空間の取り扱いについては、法令上の明記が乏しいことも多く、『建築物の防火避難規定の解説』のような専門書を通じた深い理解が不可欠です。
吹抜け空間を区画免除とする場合であっても、その影響が及ぶ空間全体に対して適切な内装制限を講じなければ、法的な不適合のみならず、安全性を損なう結果にもつながりかねません。
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