【界壁】共同住宅や長屋における範囲や構造の取扱い|防火避難規定の解説

建築知識
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見習い女の子
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共同住宅や長屋における界壁の範囲や構造について教えて下さい!

建築戦士スー
建築戦士スー

解釈と条件について、『建築物の防火避難規定の解説』をもとに解説します!

はじめに

界壁の番人が現れた!
界壁の番人が現れた!

共同住宅や長屋といった集合住宅においては、火災の拡大を防ぎ、安全な避難を確保するために、住戸間の界壁が極めて重要な役割を果たします。とりわけ界壁の構造や範囲については、防火上・避難上の観点から、建築基準法やその施行令、そして国土交通省の解釈に基づく詳細な規定が設けられています。

本記事では、「建築物の防火避難規定の解説」に基づき、界壁に関する法的背景および構造的な取り扱いを整理し、実務上の留意点を明らかにします。住戸間の延焼リスクを的確に制御し、安全な居住空間を設計するために必要な知識を、体系的に理解できる内容となっています。

記事のレベル
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第1章 界壁の範囲及び構造の取り扱い

ファイヤーブレスを無効化するモバイル型の界壁
ファイヤーブレスを無効化するモバイル型の界壁

長屋や共同住宅は、就寝など生活の基盤となる建築物であり、各戸ごとに所有または管理の主体が異なります。そのため、各戸間の延焼防止に重点を置き、界壁の構造については、耐火建築物や延焼防止建築物の場合は耐火構造準耐火建築物およびその他の建築物の場合は準耐火構造とすることが定められています。

特に、準耐火構造でつくられた各戸の界壁を小屋裏にまで達するようにするのは、火災時に小屋裏を通って火炎が延焼することが多いためです。したがって、これらの壁は小屋裏まで隙間なく区画しなければなりません。

各戸の界壁
各戸の界壁

各戸の界壁」とは、住戸間の壁を指し、住戸と廊下などの境の壁は該当しません。ただし、共同住宅の廊下部分の小屋裏については、住戸間の延焼を防止するために、下図の①および②のように界壁と同様の措置を講じることが望ましいです。

①中廊下形式の場合

①中廊下形式の場合のイメージ
①中廊下形式の場合のイメージ

②片廊下形式の場合

②片廊下形式の場合のイメージ
②片廊下形式の場合のイメージ
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また、この界壁は、建築基準法第30条(長屋または共同住宅の各戸の界壁)の規定に基づき、遮音性能を有する構造としなければなりません

(長屋又は共同住宅の各戸の界壁)
第三十条 長屋又は共同住宅の各戸の界壁は、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。
一 その構造が、隣接する住戸からの日常生活に伴い生ずる音を衛生上支障がないように低減するために界壁に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。
二 小屋裏又は天井裏に達するものであること。
2 前項第二号の規定は、長屋又は共同住宅の天井の構造が、隣接する住戸からの日常生活に伴い生ずる音を衛生上支障がないように低減するために天井に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものである場合においては、適用しない。

引用:建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)

竜の火炎攻撃により床が激しく揺れている
竜の火炎攻撃により床が激しく揺れている

建築基準法施行令第114条第1項は「界壁」についての規定ですが、重層長屋の住戸間にある「床」についても、同様の措置を講じることが望ましいとされています。

建築戦士スー
建築戦士スー

114条区画については、下記にて解説をしています!もっと詳しく知りたい方は、是非読んでください!

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(建築物の界壁、間仕切壁及び隔壁)
第百十四条 長屋又は共同住宅の各戸の界壁(自動スプリンクラー設備等設置部分その他防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分の界壁を除く。)は、準耐火構造とし、第百十二条第四項各号のいずれかに該当する部分を除き、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。
2 学校、病院、診療所(患者の収容施設を有しないものを除く。)、児童福祉施設等、ホテル、旅館、下宿、寄宿舎又はマーケットの用途に供する建築物の当該用途に供する部分については、その防火上主要な間仕切壁(自動スプリンクラー設備等設置部分その他防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分の間仕切壁を除く。)を準耐火構造とし、第百十二条第四項各号のいずれかに該当する部分を除き、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。
3 建築面積が三百平方メートルを超える建築物の小屋組が木造である場合においては、小屋裏の直下の天井の全部を強化天井とするか、又は桁行間隔十二メートル以内ごとに小屋裏(準耐火構造の隔壁で区画されている小屋裏の部分で、当該部分の直下の天井が強化天井であるものを除く。)に準耐火構造の隔壁を設けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物については、この限りでない。
一 法第二条第九号の二イに掲げる基準に適合する建築物
二 第百十五条の二第一項第七号の基準に適合するもの
三 その周辺地域が農業上の利用に供され、又はこれと同様の状況にあつて、その構造及び用途並びに周囲の状況に関し避難上及び延焼防止上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合する畜舎、堆肥舎並びに水産物の増殖場及び養殖場の上家
4 延べ面積がそれぞれ二百平方メートルを超える建築物で耐火建築物以外のもの相互を連絡する渡り廊下で、その小屋組が木造であり、かつ、けた行が四メートルを超えるものは、小屋裏に準耐火構造の隔壁を設けなければならない。
5 第百十二条第二十項の規定は給水管、配電管その他の管が第一項の界壁、第二項の間仕切壁又は前二項の隔壁を貫通する場合に、同条第二十一項の規定は換気、暖房又は冷房の設備の風道がこれらの界壁、間仕切壁又は隔壁を貫通する場合について準用する。この場合において、同項中「特定防火設備」とあるのは、「第百九条に規定する防火設備であつて、これに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後四十五分間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの」と読み替えるものとする。
6 建築物が火熱遮断壁等で区画されている場合における当該火熱遮断壁等により分離された部分は、第三項又は第四項の規定の適用については、それぞれ別の建築物とみなす。

引用:建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)

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合理的な戦略により無敵化する勇者
合理的な戦略により無敵化する勇者

なお、共同住宅などの界壁に関する防火措置が合理化されたことにより、界壁に対する防火上の規制については、自動スプリンクラー設備の設置や天井を強化天井とすることで、界壁が小屋裏や天井裏に達していなくてもよいとされました。

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第2章 「建築物の防火避難規定の解説」を手に入れよう!

建築物の防火避難規定の解説を読む勇者のイメージ
建築物の防火避難規定の解説を読む勇者のイメージ
残業ブラッキー
残業ブラッキー

建築基準法や国土交通省の告示や通達を見ても、

本記事に関する情報は、載ってニャイよね?

建築戦士スー
建築戦士スー

そうなんだよ。『建築物の防火避難規定の解説』にしか載っていないんだ。

つまりこれがないと、設計が行き詰まってしまう場合があるんだ。

設計者は必ず購入すべき本です!少し高いけど、ずっと使えるから持っておくべきだよ!

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おわりに

界壁の知識を手に入れた!
界壁の知識を手に入れた!

共同住宅や長屋における界壁の取り扱いは、単なる防火のための構造要件にとどまらず、住戸の安全性、快適性、そして設計の信頼性に直結する要素です。本記事では、建築基準法およびその施行令の該当条文をもとに、設計者が押さえるべき界壁の範囲と構造の基本的な考え方を解説しました。

特に「建築物の防火避難規定の解説」に記された実務的な解釈は、法令だけでは読み取れない部分を補完する重要な情報源です。設計者としての責務を果たすためにも、界壁に関する理解をより深め、安全性と法令適合性の両立を目指しましょう。

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