建築計画において、特記仕様書の役割は非常に重要なんだ!
設計図書同士の関係性・優先順位・内容を解説しよう!
はじめに
建築工事において、施工の基準や指針となる設計図書は、極めて重要な役割を果たします。その中でも「特記仕様書」は、特に理解を深めておく必要がございます。
本記事では、設計図書の概要と特記仕様書の記載内容やテンプレートについて解説します。
第1章 設計図書は5つの書類から成る
設計図書は、大きく分けて5種類に分類されます。それぞれの図書には優先順位がありますのでご紹介します。
- 質問回答書
- 現場説明書(見積要項書)
- 特記仕様書
- 設計図
- 標準仕様書
参考)建築基準法での「設計図書」の定義を見てみよう!
引用:建築基準法 第二条 (用語の定義)
この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
<中略>
十二 設計図書 建築物、その敷地又は第八十八条第一項から第三項までに規定する工作物に関する工事用の図面(現寸図その他これに類するものを除く。)及び仕様書をいう。
図面のみを指すと誤解されている方が多いので、しっかりと押さえておきましょう。
設計図書1: 質問回答書(優先順位★★★★★)
質問回答書は、主に見積もり先のゼネコン(建設業者)からの質問に対する設計者の回答をまとめた文書です。この文書は、設計の詳細や仕様に関する疑問点を解消するために使用され、見積もり上も建築プロジェクトの初期段階から非常に重要となります。
役割と重要性
- 明確化:プロジェクトや設計図での不明点を明確にし、解消する。
- 記録保持:トラブルを未然に防ぐ為、すべてを記録として保存する。
設計図書2: 現場説明書(見積要項書)(優先順位★★★★☆)
現場説明書(見積要項書)は、施工現場での手順や注意事項を説明する文書です。また、見積に必要な基本的な情報も盛り込まれています。
役割と重要性
- 作業の指針: 施工業者に対して具体的な作業手順を指示。
- 見積基準: 施工見積に必要な基本情報を網羅。
設計図書3: 特記仕様書(優先順位★★★☆☆)
特記仕様書は、特定のプロジェクトにおいて特に重要な仕様や設計の詳細を記載した文書です。特記仕様書は標準仕様書を補完するもので、工事現場ごとに必要な特定の情報を提供します。
役割と重要性
- 詳細仕様: 特定の材料/仕様や施工方法に関する条件を記載。
- 品質管理: 品質担保に向けた基準を設定。
設計図書4: 設計図(優先順位★★☆☆☆)
設計図は、意匠、構造、設備、外構設計の情報を視覚的に示した図面です。これらの図面は、建築物の全体像を把握するために欠かせません。
役割と重要性
- 視覚的な理解: 建物の完成形を視覚的に示す。
- 施工ガイド: 建設業者が正確に作業や見積もりを行うための基準を記載。
設計図書5: 標準仕様書(共通仕様書)(優先順位★☆☆☆☆)
標準仕様書(共通仕様書)は、一般的な建築現場において使用される標準仕様や施工方法をまとめた書類です。一般的に国土交通省の標準仕様書を使用されることが多いです。公共建築工事標準仕様書は、主に公共施設の建設において適用されます。国土交通省が定める技術基準に基づき、3年ごとに改訂されます。
役割と重要性
- 基準の提供: 一般的な施工方法や材料の選定基準を記載。
- 一貫性の確保: 複数の建築計画で一貫した品質を確保する。
第2章 特記仕様書はどうやって作るの?
国土交通省は、特記仕様書のテンプレートを提供していません。特記仕様書は、建築プロジェクト毎に特別な仕様や要求を明確にするための書類で、標準仕様書を補完する図書として使われます。そのため、自治体や設計事務所が独自のテンプレートを用意していることが一般的です。
また、民間企業が標準仕様書の内容を基にした特記仕様書のテンプレートを販売しています。特記仕様書をゼロから作成するには時間がかかるため、テンプレートを利用すると形式がわからなくても簡単に作成できるメリットがあります。
自治体発行の特記仕様書
各自治体では、特記仕様書のテンプレートを公式サイトで公開していることが多いです。これらを活用することで、必要な特記事項を漏れなく記載できます。
↓まずは、無料で見れる自治体発行のテンプレートを見ることから始めよう!
特記仕様書のテンプレートを頒布している自治体(一例)※下記公式リンク添付有
・新潟県
・福島県
・静岡県
・宮城県
・徳島県
・島根県
・熊本県
民間企業発行の特記仕様書
株式会社建築ピボット様より、国土交通省標準仕様書対応の特記仕様書が販売されています。
スポンサーリンク第3章 特記仕様書には何を書くの?
まずは標準仕様書を理解することが重要!
前章の通り、特記仕様書は標準仕様書を補完する役割を担っています。その為、標準仕様書の項目同様に特記仕様書も作成されていることが一般的です。この章では、新潟県の特記仕様書を例に内容を解説します!まずは、標準仕様書の目次を見てみましょう。
ハイライト部分は、工種別に大項目として扱われていることが分かります。
特記仕様書を見てみよう!
特記仕様書は、一般的にA3横向きのレイアウトが多く、4分割して工種毎に記載をしていくことが通例です。前項の標準仕様書の目次のハイライト部分の順番で纏められていることが分かります。赤枠が共通仕様。青枠が各種工事の特記仕様です。
2つの設計図書は、何が違うの?
では具体的に同じ工種で比較をしてみます。ここでは、土工事を抜粋して内容を読み解きます。まずは、「国土交通省公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和4年版」の内容を見ます。
公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和4年版 土工事抜粋
基本的な重要事項については、共通事項として記載がされていますが、「(2)埋戻し及び〜」については、「特記による。」と記載してあるのが分かります。
新潟県建築特記仕様書 土工事抜粋
特記仕様書の土工事部分を見てみましょう。簡潔に選択できるように整理されています。文末の数字番号も国土交通省の標準仕様書の振り分け番号と一致しているのが分かります。
こうして、標準仕様書と特記仕様書は、補完し合い設計図書としてまとめられています。
特記仕様書の注意点
標準仕様書との連携
特記仕様書に記載する内容は、前述の通り標準仕様書と整合性が不可欠です。標準仕様書に特記仕様書の該当箇所を示すマークを付けるなどの工夫を行い、見落としを未然に防ぐことが重要です。
正確な記載とダブルチェック
設計図書の優先順位にある通り、特記仕様書は、標準仕様書や設計図よりも優先されることが多いため、正確な記載が求められます。記載ミスが無いよう、必ずダブルチェックを行いましょう。
スポンサーリンクおわりに
特記仕様書を含む設計図書は、建設工事の円滑な進行と品質の確保に欠かせない重要な書類です。本記事で紹介したポイントを参考にして、正確でわかりやすい特記仕様書を作成してください。テンプレートを活用しつつ、必要情報を漏れなく記載することで、工事の成功に繋がることでしょう。