『共同住宅における代替進入口の特例』について教えてください!
解釈と条件について、『建築物の防火避難規定の解説』をもとに解説します!
はじめに
共同住宅における防火・避難計画の要として、規模や条件によっては「非常用進入口」の設置が義務付けられています。
本記事では、建築基準法施行令に基づき、「代替進入口」が適用される条件や、その具体的な構造基準について詳しく解説します。設計・施工の現場で適切に対応できるよう、基本知識を整理していきましょう。
スポンサーリンク第1章 代替進入口が必要な建築物とは?
『代替進入口』とは、『非常用の進入口設置』の緩和措置として設けることができる消防隊の進入口を指すよ!まずは、『非常用の進入口』を含めておさらいしよう!
まずは非常用進入口を理解しよう!
皆様は『非常用進入口』を聞いて何を思い浮かべるでしょうか。非常用進入口とは、その名の通り災害などの有事の際に、消防隊が外部から進入できるように設ける開口部などを指します。基準については建築基準法で定められています。
非常用進入口に要求される構造は?
非常用の進入口の構造については、建築基準法施行令第126の7で定められています。下記は、その基準を表にしたものです。
非常用進入口の構造について | 基準 |
進入口の間隔 | 40m以下 |
進入口の大きさ | 幅75㎝以上 / 高さ120㎝以上 |
進入口の高さ | 床面から進入口下端=80㎝以下 |
バルコニー | 奥行1m以上 / 長さ4m以上 |
赤色灯 | 常時点灯かつ30分間点灯の予備電源を設置 |
赤色反射塗料 | 一辺20㎝の正三角形 |
代替進入口に要求される構造は?
代替進入口の構造について | 基準 |
進入口の間隔 | 10m以下 |
進入口の大きさ | 幅75㎝以上 / 高さ120㎝以上 または直径1m以上の円が内接できること |
進入口の高さ | 床面から進入口下端=1.2m以下 |
バルコニー | 不要 |
赤色灯 | 不要 |
赤色反射塗料 | 不要 |
代替進入口の方が、間隔に関しての規制力が強いね!一方で、赤色灯や赤色反射塗料などの掲出に関する規制力は弱いんだ!
建築基準法を見てみよう!
第五節 非常用の進入口
(設置)
第百二十六条の六 建築物の高さ三十一メートル以下の部分にある三階以上の階(不燃性の物品の保管その他これと同等以上に火災の発生のおそれの少ない用途に供する階又は国土交通大臣が定める特別の理由により屋外からの進入を防止する必要がある階で、その直上階又は直下階から進入することができるものを除く。)には、非常用の進入口を設けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合においては、この限りでない。
一 第百二十九条の十三の三の規定に適合するエレベーターを設置している場合
二 道又は道に通ずる幅員四メートル以上の通路その他の空地に面する各階の外壁面に窓その他の開口部(直径一メートル以上の円が内接することができるもの又はその幅及び高さが、それぞれ、七十五センチメートル以上及び一・二メートル以上のもので、格子その他の屋外からの進入を妨げる構造を有しないものに限る。)を当該壁面の長さ十メートル以内ごとに設けている場合
三 吹抜きとなつている部分その他の一定の規模以上の空間で国土交通大臣が定めるものを確保し、当該空間から容易に各階に進入することができるよう、通路その他の部分であつて、当該空間との間に壁を有しないことその他の高い開放性を有するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを設けている場合
(構造)
第百二十六条の七 前条の非常用の進入口は、次の各号に定める構造としなければならない。
一 進入口は、道又は道に通ずる幅員四メートル以上の通路その他の空地に面する各階の外壁面に設けること。
二 進入口の間隔は、四十メートル以下であること。
三 進入口の幅、高さ及び下端の床面からの高さが、それぞれ、七十五センチメートル以上、一・二メートル以上及び八十センチメートル以下であること。
四 進入口は、外部から開放し、又は破壊して室内に進入できる構造とすること。
五 進入口には、奥行き一メートル以上、長さ四メートル以上のバルコニーを設けること。
六 進入口又はその近くに、外部から見やすい方法で赤色灯の標識を掲示し、及び非常用の進入口である旨を赤色で表示すること。
七 前各号に定めるもののほか、国土交通大臣が非常用の進入口としての機能を確保するために必要があると認めて定める基準に適合する構造とすること。
つまり用途に限らず、31m以下の『3階以上の階』には必要になるんだね!
ただし、『代替進入口』を設ける場合は免除可能なんだね。
(構造)
第百二十六条の七 前条の非常用の進入口は、次の各号に定める構造としなければならない。
一 進入口は、道又は道に通ずる幅員四メートル以上の通路その他の空地に面する各階の外壁面に設けること。
二 進入口の間隔は、四十メートル以下であること。
三 進入口の幅、高さ及び下端の床面からの高さが、それぞれ、七十五センチメートル以上、一・二メートル以上及び八十センチメートル以下であること。
四 進入口は、外部から開放し、又は破壊して室内に進入できる構造とすること。
五 進入口には、奥行き一メートル以上、長さ四メートル以上のバルコニーを設けること。
六 進入口又はその近くに、外部から見やすい方法で赤色灯の標識を掲示し、及び非常用の進入口である旨を赤色で表示すること。
七 前各号に定めるもののほか、国土交通大臣が非常用の進入口としての機能を確保するために必要があると認めて定める基準に適合する構造とすること。
第2章 共同住宅に設ける代替進入口の特例
① 共同住宅における代替進入口の基準
共同住宅における代替進入口は、階段室・バルコニー・廊下のいずれかを経由して各住戸へ進入できるものとし、以下のいずれかに該当すれば問題ありません。
1 階段室型住棟
- 各住戸のバルコニーへ進入可能
- 各階段室の踊場へ進入可能
2 片廊下型住棟
- 各住戸のバルコニーへ進入可能
- 廊下または階段室の踊場へ進入可能であり、いずれかの進入口から全住戸へ歩行距離20m以内で到達できること
3 中廊下型住棟
- 各住戸のバルコニーへ進入可能
- 廊下または階段室の踊場へ進入可能であり、いずれかの進入口から全住戸へ歩行距離20m以内で到達できること
4 ツイン型住棟
- 各住戸のバルコニーへ進入可能
- 廊下または階段室の踊場へ進入可能であり、いずれかの進入口から全住戸へ歩行距離20m以内で到達できること
② 外廊下を経由した進入口の特例
上図のように、外廊下面を経由して各住戸へ20m以内で進入できる場合は、道路に面する外壁面に進入口を設置する必要はありません。なお、この適用にあたっては、バルコニー面に関する特別な条件はありません。
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建築基準法や国土交通省の告示や通達を見ても、
本記事に関する情報は、載ってニャイよね?
そうなんだよ。『建築物の防火避難規定の解説』にしか載っていないんだ。
つまりこれがないと、設計が行き詰まってしまう場合があるんだ。
設計者は必ず購入すべき本です!少し高いけど、ずっと使えるから持っておくべきだよ!
おわりに
共同住宅における「代替進入口」は、非常用進入口の設置要件を一部緩和できるものの、適用には厳格な条件が伴います。設計時には、建築基準法の規定を正しく理解し、消防計画とも整合を図ることが重要です。適切な避難経路を確保し、万が一の災害時にも迅速な救助活動が行えるよう、適法かつ合理的なプランニングを心掛けましょう。
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