特別避難階段までの歩行距離の取り方も教えてください!
特別避難階段までの歩行距離は、『附室前まで』だよ!
『建築基準法』と『建築物の防火避難規定の解説』を基にわかりやすく解説しよう!
はじめに
建築物の安全設計において、避難経路の確保は命を守るための最優先事項です。その中でも「特別避難階段までの歩行距離」は、防火避難規定に基づき厳密に定められています。特に、「附室」を含む設計での距離算定については、多くの設計者が疑問を持つポイントです。
本記事では、建築基準法およびその解説書をもとに、特別避難階段の歩行距離の取り扱いについてわかりやすく解説します。歩行距離の基本から附室の扱い、そして注意点までを詳しく掘り下げていきます。
スポンサーリンク第1章 歩行距離とは?
『歩行距離』とは、『直通階段』までの距離を指します。
まずは、『直通階段』についてご紹介します!
直通階段とは、各階で次の階段まで誤りなく通じ、避難階又は地上まで直通する階段を指します。建築基準法施行令第120条で定められています。
上記に関わる直通階段の定義は、建築基準法には載ってないよ!
『建築物の防火避難規定の解説』に載っているんだ。設計者におすすめの一冊です。
階段までの『歩行距離』に要注意!
『直通階段までの歩行距離』に関しても、同条で定められています。火災の時に安全に避難階に避難できるように、建築用途や構造や材料によって適切な歩行距離が定められています。
『歩行距離』 | <主要構造部> 準耐火構造 or 不燃材料の場合(m²) | その他の場合(m²) |
---|---|---|
・令116条の2第1項一号にあたる開口部を有しない居室 ・法別表第一(い)欄(四)項の特殊建築物の主たる用途に供する居室 | 30 | 30 |
・法別表第一(い)欄(二)項の特殊建築物の主たる用途に供する居室 | 50 | 30 |
・(1)または(2)以外の居室 | 50 | 40 |
該当条文を確認してみよう!
避難階以外の階については、下記法文を読んでね!
(直通階段の設置)
第百二十条 建築物の避難階以外の階(地下街におけるものを除く。次条第一項において同じ。)においては、避難階又は地上に通ずる直通階段(傾斜路を含む。以下同じ。)を次の表の上欄に掲げる居室の種類の区分に応じ当該各居室からその一に至る歩行距離が同表の中欄又は下欄に掲げる場合の区分に応じそれぞれ同表の中欄又は下欄に掲げる数値以下となるように設けなければならない。2 主要構造部が準耐火構造である建築物(特定主要構造部が耐火構造である建築物を含む。次条第二項及び第百二十二条第一項において同じ。)又は主要構造部が不燃材料で造られている建築物の居室で、当該居室及びこれから地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路の壁(床面からの高さが一・二メートル以下の部分を除く。)及び天井(天井のない場合においては、屋根)の室内に面する部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。)の仕上げを準不燃材料でしたものについては、前項の表の数値に十を加えた数値を同項の表の数値とする。ただし、十五階以上の階の居室については、この限りでない。
3 十五階以上の階の居室については、前項本文の規定に該当するものを除き、第一項の表の数値から十を減じた数値を同項の表の数値とする。
4 第一項の規定は、主要構造部を準耐火構造とした共同住宅(特定主要構造部を耐火構造とした共同住宅を含む。第百二十三条の二において同じ。)の住戸でその階数が二又は三であり、かつ、出入口が一の階のみにあるものの当該出入口のある階以外の階については、その居室の各部分から避難階又は地上に通ずる直通階段の一に至る歩行距離が四十メートル以下である場合においては、適用しない。
避難階については、下記法文を読んでね!
スポンサーリンク(屋外への出口)
第百二十五条 避難階においては、階段から屋外への出口の一に至る歩行距離は第百二十条に規定する数値以下と、居室(避難上有効な開口部を有するものを除く。)の各部分から屋外への出口の一に至る歩行距離は同条に規定する数値の二倍以下としなければならない。
2 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂又は集会場の客用に供する屋外への出口の戸は、内開きとしてはならない。
3 物品販売業を営む店舗の避難階に設ける屋外への出口の幅の合計は、床面積が最大の階における床面積百平方メートルにつき六十センチメートルの割合で計算した数値以上としなければならない。
4 前条第三項の規定は、前項の場合に準用する。
第2章 歩行距離算定の方法
特別避難階段における歩行距離について
特別避難階段の歩行距離は、直通階段と同様『建築基準法施行令第120条第1項』で定められている歩行距離を適用します。
歩行距離に『附室』や『バルコニー』は含まない!
特別避難階段の付室やバルコニーは、建築基準法施行令第123条第3項に基づき、避難時に安全な空間として機能することが求められています。そのため、歩行距離を算定する際は、付室やバルコニーの入口までの距離を基準とすることとされています。
スポンサーリンク(避難階段及び特別避難階段の構造)
第百二十三条 屋内に設ける避難階段は、次に定める構造としなければならない。
一 階段室は、第四号の開口部、第五号の窓又は第六号の出入口の部分を除き、耐火構造の壁で囲むこと。
二 階段室の天井(天井のない場合にあつては、屋根。第三項第四号において同じ。)及び壁の室内に面する部分は、仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ること。
三 階段室には、窓その他の採光上有効な開口部又は予備電源を有する照明設備を設けること。
四 階段室の屋外に面する壁に設ける開口部(開口面積が各々一平方メートル以内で、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備ではめごろし戸であるものが設けられたものを除く。)は、階段室以外の当該建築物の部分に設けた開口部並びに階段室以外の当該建築物の壁及び屋根(耐火構造の壁及び屋根を除く。)から九十センチメートル以上の距離に設けること。ただし、第百十二条第十六項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
五 階段室の屋内に面する壁に窓を設ける場合においては、その面積は、各々一平方メートル以内とし、かつ、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備ではめごろし戸であるものを設けること。
六 階段に通ずる出入口には、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で第百十二条第十九項第二号に規定する構造であるものを設けること。この場合において、直接手で開くことができ、かつ、自動的に閉鎖する戸又は戸の部分は、避難の方向に開くことができるものとすること。
七 階段は、耐火構造とし、避難階まで直通すること。
2 屋外に設ける避難階段は、次に定める構造としなければならない。
一 階段は、その階段に通ずる出入口以外の開口部(開口面積が各々一平方メートル以内で、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備ではめごろし戸であるものが設けられたものを除く。)から二メートル以上の距離に設けること。
二 屋内から階段に通ずる出入口には、前項第六号の防火設備を設けること。
三 階段は、耐火構造とし、地上まで直通すること。
3 特別避難階段は、次に定める構造としなければならない。
一 屋内と階段室とは、バルコニー又は付室を通じて連絡すること。
二 屋内と階段室とが付室を通じて連絡する場合においては、階段室又は付室の構造が、通常の火災時に生ずる煙が付室を通じて階段室に流入することを有効に防止できるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。
三 階段室、バルコニー及び付室は、第六号の開口部、第八号の窓又は第十号の出入口の部分(第百二十九条の十三の三第三項に規定する非常用エレベーターの乗降ロビーの用に供するバルコニー又は付室にあつては、当該エレベーターの昇降路の出入口の部分を含む。)を除き、耐火構造の壁で囲むこと。
四 階段室及び付室の天井及び壁の室内に面する部分は、仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ること。
五 階段室には、付室に面する窓その他の採光上有効な開口部又は予備電源を有する照明設備を設けること。
六 階段室、バルコニー又は付室の屋外に面する壁に設ける開口部(開口面積が各々一平方メートル以内で、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備ではめごろし戸であるものが設けられたものを除く。)は、階段室、バルコニー又は付室以外の当該建築物の部分に設けた開口部並びに階段室、バルコニー又は付室以外の当該建築物の部分の壁及び屋根(耐火構造の壁及び屋根を除く。)から九十センチメートル以上の距離にある部分で、延焼のおそれのある部分以外の部分に設けること。ただし、第百十二条第十六項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
七 階段室には、バルコニー及び付室に面する部分以外に屋内に面して開口部を設けないこと。
八 階段室のバルコニー又は付室に面する部分に窓を設ける場合においては、はめごろし戸を設けること。
九 バルコニー及び付室には、階段室以外の屋内に面する壁に出入口以外の開口部を設けないこと。
十 屋内からバルコニー又は付室に通ずる出入口には第一項第六号の特定防火設備を、バルコニー又は付室から階段室に通ずる出入口には同号の防火設備を設けること。
十一 階段は、耐火構造とし、避難階まで直通すること。
十二 建築物の十五階以上の階又は地下三階以下の階に通ずる特別避難階段の十五階以上の各階又は地下三階以下の各階における階段室及びこれと屋内とを連絡するバルコニー又は付室の床面積(バルコニーで床面積がないものにあつては、床部分の面積)の合計は、当該階に設ける各居室の床面積に、法別表第一(い)欄(一)項又は(四)項に掲げる用途に供する居室にあつては百分の八、その他の居室にあつては百分の三を乗じたものの合計以上とすること。
特別避難階段の歩行距離に関する要点
項目 | 内容 |
---|---|
適用基準 | 建築基準法施行令第120条第1項:直通階段に付室・バルコニーを含む歩行距離を適用。 |
付室・バルコニーの役割 | 建築基準法施行令第123条第3項:避難上安全な空間としての機能が必要。 |
歩行距離の算定方法 | 付室またはバルコニーの入口までの距離を基準にする。 |
参考)大阪の凡例を見てみよう!
大阪府内建築行政連絡協議会でのQ&Aの中に、『特別避難階段』の歩行距離の取り扱いについて同様の質疑応答がなされています。『付室又はバルコニー』前までを歩行距離とすることは共通しています。しかし、歩行距離を最短距離で取ることを禁止しています。家具等の配置によっては最短距離でもやむを得ないとの記載もある為、歩行距離の取り方は、指定確認検査機関や行政との協議が必須になってきます。
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建築基準法や国土交通省の告示や通達を見ても、
本記事に関する情報は、載ってニャイよね?
そうなんだよ。『建築物の防火避難規定の解説』にしか載っていないんだ。
つまりこれがないと、設計が行き詰まってしまう場合があるんだ。
設計者は必ず購入すべき本です!少し高いけど、ずっと使えるから持っておくべきだよ!
おわりに
特別避難階段の歩行距離を正しく理解することは、避難の安全性を確保する上で極めて重要です。「附室前まで」とされる理由は、火災時における安全な空間の役割が深く関係しています。今回の記事を通じて、歩行距離に関する基準と算定方法を整理し、実際の設計にどう反映すべきかを学んでいただけたと思います。
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