マンションでの騒音に悩まされています。。。
快適な暮らしに、遮音計画は最重要項目です!解説をしましょう!
はじめに
私たちの日常生活には、さまざまな音が存在しています。音楽や自然の音、人々の声などの心地よい音もあれば、不快な騒音もあります。音の性質やその単位を理解することは、快適な生活環境を作るために重要です。本記事では、音の基本的な性質とその単位、日常生活における音のレベルや伝わり方、さらに遮音性能について詳しく解説します。
スポンサーリンク1. 音の基本的な性質
音とは何か
音は、音源から発せられたエネルギーが空気中を振動として伝わる現象です。この振動が音波となり、私たちの耳に届くことで音として認識されます。音波は、耳の鼓膜を振動させ、それが神経を通じて脳に伝わり、音として知覚されます。
周波数とヘルツ(Hz)
音の波が1秒間に何回上下するかを数値化したものが「周波数」です。周波数はHz(ヘルツ)で表されます。人間の耳に聞こえる周波数の範囲は約20Hzから20kHzまでで、低い周波数は低音、高い周波数は高音として認識されます。周波数が2倍になると、1オクターブ高い音となります。
音の強さとデシベル(dB)
音の強さや大きさは音波の振幅によって決まります。音のエネルギーの大きさは物理的な量で「音の強さ」と呼ばれ、dB(デシベル)で表されます。音の大きさは、人間が感覚的に感じる量を示します。高い周波数の音は、少ないエネルギーでも大きく聞こえます。
項目 | 説明 | 単位 |
---|---|---|
音波 | 空気中を振動として伝わるエネルギー | – |
周波数 | 音の波が1秒間に何回上下するか | Hz(ヘルツ) |
音の強さ | 音波の振幅によるエネルギーの大きさ | dB(デシベル) |
2. 周囲の音のレベル
日常生活における音
日常生活の中で、私たちはさまざまな音に囲まれています。騒音のレベルは、音の強さ(振幅)、高さ(周波数)、そして音色(快・不快)の3つの要素から成り立ちます。
暮らしに紛れる騒音(dB)の具体例
都心部の昼間の市街地は、騒音レベル50dBが一般的です。一般的には60dBを超えると快適な生活が難しくなります。
スポンサーリンク3. 音の伝わり方
空気音と固体音
音には、空気中を伝わる「空気音」と、物体を伝わる「固体音」の2種類があります。空気音にはジェット機のエンジン音や自動車のエンジン音、楽器の演奏音が含まれ、固体音には上階からの足音やスピーカーからの振動音、トイレ利用時の排水音などがあります。
音の種類 | 説明 |
---|---|
空気音 | ジェット機及び自動車のエンジン音、楽器の演奏音 |
固体音 | 上階からの足音、スピーカーからの振動音、トイレ使用時の排水騒音 |
4. 遮音性能の指標
Dr値(旧:D値)、TLD値、T値、L値、ΔL値とは?
遮音性能及び等級を示す指標には、Dr値、TLD値、T値、L値があります。これらの値を理解することで、用途や環境に最適な遮音性能を選ぶことができます。
Dr値(旧:D値)=遮音等級 【空間】
Dr値(遮音等級/sound pressure level Difference)とは、防音性能を数値で表す指標です。具体的には、室内外の音の強さの差を示します。
例えば、音楽室内の音量が「100dB」とします。この音量が音楽室外では「60dB」まで下がると、その音量差は「40dB」になります。この場合の遮音性能を「Dr-40(D-40)」と表記します。つまり、音楽室内の音が外では「40dB」聴こえなくなったということです。
音量(dB) | 音楽室内 | 音楽室外 | 音量差(dB) | 遮音性能(Dr値) |
---|---|---|---|---|
音楽室の事例 | 100dB | 60dB | 40dB | Dr-40(D-40) |
「D値」と「Dr値」で迷われる方がいますが、同じものとしてお考えください。2000年のJIS改訂により「D値」は廃止され、「Dr値」に改訂されています。(JIS A 1419:2000)
スポンサーリンクTLD値=遮音性能【壁】
遮音性能(TLD:Transmission Loss Difference)・・・壁自体の遮音性能を指します。D値が空間の遮音等級を指すのに比べ、TLD値は、壁自体での性能値となります。当然、壁自体の遮音値の方が有利な実験結果となりますので、壁自体の遮音性能(TLD値)は参考程度と考えるようにしてください。
T値【建具】
T値は、サッシやドアの遮音性能を示し、日本工業規格(JIS)に基づいて4つの等級に分類されます。T値が大きいほど遮音性能が高いです。
T-1等級
T-1等級の遮音性能は25dBです。この等級のサッシやドアは、室外で80dBの音を室内では55dBまで下げることができます。つまり、55dBの減音効果があります。
T-2等級
T-2等級の遮音性能は30dBです。この等級のサッシやドアは、室外で80dBの音を室内では50dBまで下げることができます。つまり、30dBの減音効果があります。
T-3等級
T-3等級の遮音性能は35dBです。この等級のサッシやドアは、室外で80dBの音を室内では45dBまで下げることができます。つまり、35dBの減音効果があります。
等級 | 遮音性能(dB) | 外部音(dB) | 内部音(dB) | 減音効果(dB) |
---|---|---|---|---|
T-1等級 | 25dB | 80dB | 55dB | 25dB |
T-2等級 | 30dB | 80dB | 50dB | 30dB |
T-3等級 | 35dB | 80dB | 45dB | 35dB |
下記は、日本建設業連合会 技術研究部会音環境専門部会が出している解説です。サッシの等級設定は、各実験を行い近似の等級設定がされています。
スポンサーリンクL値【床】
L値(floor impact sound Level)は、床の遮音性能を示す指標で、重量床衝撃音(LH)と軽量床衝撃音(LL)に分類されます。
軽量床衝撃音(LL)とは?
軽量床衝撃音は、硬くて軽い物を落とした際に発生する高い音です。具体例としては、以下のような音があります。
例・・・ナイフやお箸などの食器を落とす音、床で遊ぶ音(プラレールや積み木など)
重量床衝撃音(LH)とは?
重量床衝撃音は、重くて柔らかい物が落ちた際に発生する低い音です。以下のような音が該当します。
例・・・歩行音、椅子を動かす音、机を移動する音
L値のポイント
- L値は小さいほど防音性能が高い
数字が小さいほど遮音性能が高く、逆に大きいほど防音性能が低いです。 - 床の構造による違い
L値は床の構造、特にコンクリートスラブの厚みに依存します。例えば、スラブの厚さが120mmの場合、遮音性能は150mmのスラブよりも劣ります。 - L値は推定値である
L値は実験室での測定データを基に推定された値であり、実際の現場では異なる場合があります。
理想的なL値の目安
日本建築学会は、適用等級1級を推奨しています。
スポンサーリンク「ΔL値」とは?
「ΔL値」は2008年に財団法人日本建築総合試験所の「床材の床衝撃音低減性能の表現方法に関する検討委員会」によって導入された指標です。
「L値」と「ΔL値」の違い
「L値」の特徴
- 空間での防音対策基準:L値は部屋全体の防音性能を推定するための基準です。
「ΔL値」の特徴
- 製品単体の防音性能:ΔL値は床材や防音製品がどれだけ衝撃音を減少させるかを示します。
なぜ「L値」が一般的に使用されているのか?
現在でも「L値」が広く使用されている理由は、長い間使用されてきた実績と信頼性にあります。多くの建築基準や設計ガイドラインが「L値」に基づいているため、依然として「L値」が主流となっています。
指標 | 特徴 | 使用目的 |
---|---|---|
L値 | 空間全体の防音対策を推定する基準 | 部屋全体の防音性能評価 |
ΔL値 | 床材や防音商品の単体の防音性能を示す | 製品単体の防音性能評価 |
5. 遮音性能の具体的な数値
ここまでで遮音性能は、対象部分の音の強さの差分によって性能が決まることをお伝えしてきました。その差分は専門用語で、「透過損失:TL」(Transmission Loss)と呼び、対象に入る音と出る音の数値の差dBで求められます。例えば、入射音が100dBで透過音が60dBの場合、透過損失TLは40dBとなります。
スポンサーリンクTL = 10log10(1/τ)
(TL:音響透過損失[dB]、τ:透過率)
透過損失TLの公式
6. 遮音対策
遮音対策の具体例
外壁やサッシの遮音性能を上げても、音の回り込みや隙間から音が入ってくる可能性があります。建物の配置計画や間取りを考慮することが重要です。
空気音の対策
- 建物の気密性を上げる
- サッシの形状に注意する
- 換気扇に防音対策を施す
- 重く厚い材料を使用する
固体音の対策
- 構造体の剛性を高める
- 床の遮音性を上げる
おわりに
音の性質や遮音性能について理解することは、快適な生活環境を作るために重要です。日常生活における音のレベルや伝わり方、適切な遮音対策を知ることで、より良い住環境を実現することができます。ぜひ、本記事を参考にして、快適な空間を計画ください。