内装制限について教えてください!
一定の建築物を対象にする内装仕上げの制限だね!
『建築基準法』を基にわかりやすく解説しよう!
はじめに
建築物における内装制限は、火災時の被害拡大を防ぎ、避難安全を確保するための重要な規制です。特に、特殊建築物や火気使用室、無窓居室など、特定の条件に該当する建築物に対しては、厳格な内装制限が課せられています。
本記事では、これらの内装制限が適用される建築物の種類や条件を、分かりやすく解説します。建築士や設計者として知っておきたい、法的な基準や実際の適用範囲について学びましょう。
スポンサーリンク第1章 内装制限って?
内装制限とは、火災時の被害拡大を防ぐため、壁や天井に不燃性の高い材料を使用することを義務付ける規制です。
内装制限をかけることで、火災の急激な拡大を防ぐことができます。これにより煙の発生を抑制させ、結果として安全な避難経路を確保することが可能です。
内装制限の対象となる建築物って?
内装制限が適用される建築物は、大きく次の4種類に分類されます
・特殊建築物 <第2章で解説>
・大規模建築物 <第3章で解説>
・火気使用室 <第4章で解説>
・無窓居室 <第5章で解説>
内装制限の範囲に対象外はあるの?
床材
火炎は上方向に広がる性質があるため、床は制限の対象外です。
建具
防火性能が求められるのは、防火区画における建具に限られます。
建築基準法を確認しよう!
スポンサーリンク(特殊建築物等の避難及び消火に関する技術的基準)
第三十五条別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物又は延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計)が千平方メートルをこえる建築物については、廊下、階段、出入口その他の避難施設、消火栓せん、スプリンクラー、貯水槽そうその他の消火設備、排煙設備、非常用の照明装置及び進入口並びに敷地内の避難上及び消火上必要な通路は、政令で定める技術的基準に従つて、避難上及び消火上支障がないようにしなければならない。
第2章 『特殊建築物』における内装制限
内装制限がかかる特殊建築物は、多種多様な用途と規模が存在します。下表に該当する場合、内装制限の対象となります。
特殊建築物の内装制限【一覧表】
No. | 建築物の用途 | 耐火建築物、準耐火建築物イ-1 | 準耐火建築物イ-2、ロ-1、ロ-2 | その他の建築物 | 壁・天井仕上げ材料の性能 |
---|---|---|---|---|---|
Ⅰ | 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場 | 客席面積が400㎡以上 | 客席面積が100㎡以上 | 客席面積が100㎡以上 | 居室:難燃材料 通路・階段:準不燃材料 |
Ⅱ | 病院、診療所(患者収容施設を有するもの)、ホテル、下宿、共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設(幼保連携型認定こども園含む) | 3階以上の合計300㎡以上 | 2階部分が300㎡以上 | 床面積が200㎡以上 | 居室:難燃材料 通路・階段:準不燃材料 |
Ⅲ | 飲食店、物品販売業を営む店舗、百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェ、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合所、料理店 | 3階以上の合計1000㎡以上 | 2階部分が500㎡以上 | 床面積が200㎡以上 | 居室:難燃材料 通路・階段:準不燃材料 |
Ⅳ | 自動車車庫、自動車修理工場 | すべての規模に適用 | すべての規模に適用 | すべての規模に適用 | 室・車路:準不燃材料 |
Ⅴ | 地階に配置されたⅠ・Ⅱ・Ⅲの用途部分 | すべての規模に適用 | すべての規模に適用 | すべての規模に適用 | 居室、通路・階段:準不燃材料 |
『Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの特殊建築物』の内装制限範囲について
区分 | 条件 | 壁・天井仕上げ材料の性能 |
---|---|---|
居室 | – 通常の場合 | 難燃材料 |
居室 | – 3階以上に居室がある場合 | 準不燃材料 |
居室 | – 1.2m以下の腰壁 | 規制対象外(免除) |
通路・階段など | – すべてのケース | 準不燃材料 |
『自動車車庫・修理工場』の内装制限範囲について
区分 | 壁の仕上げ | 天井の仕上げ |
---|---|---|
材料 | 準不燃材料 | 準不燃材料 |
住宅のガレージは、よく抜け落ちるので要注意です。
『※特殊建築物の地階』の内装制限範囲について
区分 | 壁の仕上げ | 天井の仕上げ |
---|---|---|
材料 | 準不燃材料 | 準不燃材料 |
※特殊建築物とは?
スポンサーリンク第3章 『大規模建築物』における内装制限
大規模建築物とは、下記条件のいずれかに該当する場合を指します。
<条件>
・『3階以上』かつ『延べ面積が500㎡を超える』建築物
・『2階建て』かつ『延べ面積が1000㎡を超える』建築物
・『1階建て』かつ『延べ面積が3000㎡を超える』建築物
内装制限が適用される範囲
建築物の部分 | 材料の種類 | 免除条件 |
---|---|---|
居室 | 難燃材料 | 腰壁(1.2m以下)は免除 |
通路・階段 | 準不燃材料 | ー |
下記に該当する場合は、内装制限が免除可能です!
区分 | 条件 |
---|---|
学校等の用途 | 学校やこれに類する用途に該当する場合 |
居室(右記1・2のいずれかを満たす場合) | 1: 床面積100㎡以内ごとに準耐火構造の床・壁、または防火設備(法2条九号の二ロ)で令112条19項二号に規定する構造で区画、かつ、法別表第一(い)欄の用途に該当しない居室で、主要構造部を耐火構造とした建築物の場合 |
2: 法2条九号の三イに該当する建築物で、高さが31m以下の部分にある場合 | |
特殊建築物 | 同表(い)欄(二)項の用途に該当し、高さ31m以下の部分の場合 |
第4章 『火気使用室』における内装制限
その名の通り火を扱う諸室を指します。具体的な内装制限のかかる『火気使用室』は下記の通りです。
区分 | 条件 |
---|---|
住宅、および併用住宅の調理室・浴室 | 住宅や併用住宅内に設けられた調理室および浴室に該当 |
最上階の調理室等 | 階数が2以上の場合、最上階にある調理室等は免除 |
住宅以外のボイラー室等 | 住宅以外の施設に設置されたボイラー室などの設備 |
IHキッチンの場合、内装制限を免除することもできます!特に可燃性素材(木材など)を使いたい場合は、有効です!
火気使用室の内装制限
区分 | 壁の仕上げ | 天井の仕上げ |
---|---|---|
材料 | 準不燃材料 | 準不燃材料 |
第5章 『無窓居室』における内装制限
無窓居室とは、建築基準法で定められた基準以下の、採光や換気が不十分な部屋を指します。実際の窓の有無を指しているわけではありません。下記条件を全て満たす場合、内装制限が適用されます。
<条件>
・床面積が50㎡を超える場合
・天井から80cm以内にある開口部の面積が、居室面積の1/50未満の場合
内装制限が適用される範囲
無窓居室の種類 | 対象となる材料 |
---|---|
壁 | 準不燃材料 |
天井 | 準不燃材料 |
無窓居室って4つの種類があるって知ってた??
設計者は是非とも理解すべき内容になっています。下記記事にて解説をしています。
必ず習得して設計スキルを上げてください!
おわりに
内装制限に関する基礎知識を身につけたことで、火災リスクを抑え、安全な建築設計が可能になります。対象となる建築物や制限の範囲を正確に理解し、適切な材料や構造を選ぶことは、建築士としての大きな責任です。今後の設計活動に役立ててください。
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