コロナ渦の影響でホテル経営難のところが多かったみたいだね。
その点、無人運営はコストを抑えられそう!
無人運営にするには、適切な設備配置や運営体制が必要なんだよ!
実際に開業までにトラブルになったケースと対策法を解説するね!
はじめに
本記事では、無人運営ホテルの現場で実際に起こった5つのトラブル事例を取り上げ、その解決策を詳しく解説します。
無人運営のホテルは、効率的なコスト削減や感染症対策として近年注目を集めています。しかし、その一方で実際の現場では、さまざまなトラブルが発生し、オーナーや運営者にとって大きな課題となっています。
無人運営のメリットとデメリットを理解しつつ、ホテル開業を検討している方やすでに運営している方にとって、有益な情報を提供できれば幸いです。
スポンサーリンク第1章 無人運営のイロハ
『無人運営』に定義はない!
実は、『無人運営』の法的な定義はないんだ!
なんとなくで理解していれば、OKってことか!
前述の通り、『無人運営』に法的な明確な定義はないです。一般的には、下記を指して使われることが多いです。
『無人運営』とは?
スタッフを常駐させず、お客様自身でセルフチェックインが可能な運営体制
一般的なホテルの運営は、チェックインカウンターでフロントマンとの接触を通しチェックインが成立します。対する無人運営は、フロントにてIT端末(タブレットなど)を通し、お客様ご自身でチェックインする運営です。
『無人運営』の利点と欠点
無人運営の利点と欠点を比較していきましょう。まずは、結論を表にまとめました。
利点/欠点 | 内容 | 説明 |
---|---|---|
利点1 | ランニングコストの低減 | 無人運営により人件費を削減でき、深夜の勤務コストも効率的に管理できる。IT機器の電気代増加はあるが、全体的に費用対効果が高い。 |
利点2 | 人的ミスの防止 | 金銭管理やルームキーの管理などが機械化されることで、ミスが減り、事業者と顧客双方に安心感を提供する。 |
利点3 | 採用活動の省力化 | 無人化により、雇用の難しい地域でもスタッフを少数精鋭で運営でき、採用活動の負担を軽減できる。 |
利点4 | 感染症への配慮 | 非接触対応により、感染リスクを減少させ、施設の評判を保つことができる。 |
欠点1 | おもてなしの欠如 | 無人運営では「おもてなし文化」が減少し、対面サービスを好む日本人にとっては不満が残る可能性がある。 |
欠点2 | イニシャルコストの増大 | 無人化には高額な初期投資が必要で、さらに定期的なメンテナンス費用もかかる。 |
欠点3 | トラブル解決に時間を要す | 問題が発生した場合、スタッフがいないため、対応に時間がかかりやすい。 |
欠点4 | 緊急時の体制の構築 | 緊急時対応の契約事が必要で、結果的に追加のランニングコストが発生する場合もある。 |
細かくは下記に記載しますね!
『無人運営』の4つの利点
1.ランニングコストの低減
なんと言っても、人件費は大きく低減が可能です。通常の時間に加え、業務が少ない深夜帯の勤務なども効率的にカバーできます。IT機器による電気代の増加は多少ありますが、費用対効果の高い施策と言えます。
2.人的ミスの防止
金銭授受における間違いやルームキーの管理など、機械での管理に代替されるため、正確性が向上します。お客様にとっても事業者にとっても、安心した運用になること間違いなしでしょう。
3.採用活動の省力化
ホテルや旅館は、地域によって雇用が難しい場合が多く、採用活動が課題となることが非常に多いです。スタッフを少数精鋭型で配置し、無人化=機械化可能な部分は振り返ることで、採用活動の省力化に大きく寄与します。
4.感染症への配慮
コロナウイルスの蔓延が、無人運営の更なる後押しを図ったと感じます。非接触対応で宿泊ができるということは、感染者の低減から施設のレピュテーションリスク回避まで、感染症に対して幅広い恩恵を受けることが可能です。
スポンサーリンク『無人運営』の4つの欠点
1.おもてなしの欠如
日本における慣習の特徴として『おもてなし文化』があります。サービス内容は同じでも有人サービスと無人サービスでは、感じ方が異なります。一概に欠点とは言いにくいですが、おもてなしを重んじる日本人からすると対面での接客を好む人が多いと思います。
2.イニシャルコストの増大
無人化にあたり設備機器を導入する必要があります。当然導入には高額な初期投資がかかり、メンテナンス費用も定期的にかかります。
3.有事の際に時間がかかる
チェックインやチェックアウトなど、少し迷う瞬間は必ず生じます。有人型のホテルの場合、一言スタッフに聞けば済むところ、無人運営の場合は通信方法や会話手段を調べた上で、通信を繋ぎ、回答を受けるな、有事の際の手間や時間がどうしても多くかかる傾向にあります。
4.緊急時の体制の構築
緊急時の連携体制を構築し、消防や保健所との事前の擦り合わせや申請が必要です。無人にしたのは良いものの、結果としてランニングコストで多くかかってしまったという声もよく耳にします。
スポンサーリンク第2章 旅館業法で定める必要設備とは?
旅館業法では、『宿』は3つに分類される!
宿泊施設の分類は、旅館業法上では大きく3種類の営業方針に大別できます。
第二条 この法律で「旅館業」とは、旅館・ホテル営業、簡易宿所営業及び下宿営業をいう。
2この法律で「旅館・ホテル営業」とは、施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう。
3この法律で「簡易宿所営業」とは、宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のものをいう。
4この法律で「下宿営業」とは、施設を設け、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業をいう。
イマイチ頭に入ってこない。。。
分かりにくいから実例で紹介するね!
『旅館・ホテル営業』→リゾートホテル/ビジネスホテル/旅館
『簡易宿所営業』→民宿/ペンション/ゲストハウス/カプセルホテル
『下宿営業』→1ヶ月以上から宿泊可能な宿(一般的ではない)
旅館・ホテル営業では、どんな設備が必要なの?
旅館・ホテル営業の場合、具体的に必要な基準は『旅館業法施行令第一条』で規定されています。一号から八号までありますが、客室内部の設備や面積、室内外の環境に関しての規定が多数です。唯一属性が異なるのが、『二号の玄関帳場』です。
(構造設備の基準)
第一条 旅館業法(以下「法」という。)第三条第二項の規定による旅館・ホテル営業の施設の構造設備の基準は、次のとおりとする。
一 一客室の床面積は、七平方メートル(寝台を置く客室にあつては、九平方メートル)以上であること。
二 宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場その他当該者の確認を適切に行うための設備として厚生労働省令で定める基準に適合するものを有すること。
三 適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること。
四 当該施設に近接して公衆浴場がある等入浴に支障を来さないと認められる場合を除き、宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の入浴設備を有すること。
五 宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の洗面設備を有すること。
六 適当な数の便所を有すること。
七 その設置場所が法第三条第三項各号に掲げる施設の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む。)の周囲おおむね百メートルの区域内にある場合には、当該施設から客室又は客の接待をして客に遊興若しくは飲食をさせるホール若しくは客に射幸心をそそるおそれがある遊技をさせるホールその他の設備の内部を見通すことを遮ることができる設備を有すること。
八 その他都道府県(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市又は特別区。以下この条において同じ。)が条例で定める構造設備の基準に適合すること。
第三条 旅館業を営もうとする者は、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市長又は区長。第四項を除き、以下同じ。)の許可を受けなければならない。ただし、旅館・ホテル営業又は簡易宿所営業の許可を受けた者が、当該施設において下宿営業を営もうとする場合は、この限りでない。
2 都道府県知事は、前項の許可の申請があつた場合において、その申請に係る施設の構造設備が政令で定める基準に適合しないと認めるとき、当該施設の設置場所が公衆衛生上不適当であると認めるとき、又は申請者が次の各号のいずれかに該当するときは、同項の許可を与えないことができる。
玄関帳場とは?
施行令第一条一項2号に『玄関帳場』というワードがあります。所謂『フロント機能』と捉えて下さい。このフロント機能を計画してください。と、旅館業法施行令第一条二号で規定がされていました。
ちょっと待って!!!
ICT設備を設けてくれればフロント(=玄関帳場)は設けなくてもいいですよ!と国土交通省が『「旅館業法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令」について(概要)』の中で明言をしています。下記をご参照ください。
第3章 実際にあったトラブル5選
本章では、現場でトラブルになりやすい項目と対策について触れていきます。
<現場の声>
トラブルは、各地域毎の上乗せ条例により起こるものが多い印象です。
各地域での協議を通して、1つ1つ明確にして進めていくことが求められます。
各都道府県での上乗せ条例は、
『旅館業法施工令の第一条一項八号』で触れられているのか!
(構造設備の基準)
第一条 旅館業法(以下「法」という。)第三条第二項の規定による旅館・ホテル営業の施設の構造設備の基準は、次のとおりとする。
(中略)
八 その他都道府県(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市又は特別区。以下この条において同じ。)が条例で定める構造設備の基準に適合すること。引用:旅館業法施行令(昭和三十二年政令第百五十二号)
では、現場でトラブルの元になりがちな5つのポイントについて解説を行います。
これらは、全て実体験に基づくものです。
1 防火管理者の専任要件は?
結論:各地域毎に規定されています。
施設規模によりますが、防火管理者を定める必要があります。その場合、専任要件として宿泊施設が所在する都道府県内の在住者という与件が加わる場合がございます。県外在住者で可の場合でも、オペレーションを明確に示し慎重に協議をする必要があります。
スポンサーリンク2 有事の際の駆け付けは、何分までOK?
結論:概ね徒歩10分(約800m程度)で駆け付け可能な体制とすること。
下記の『公衆浴場における衛生等管理要領等について 別添3 旅館業における衛生等管理要領』の中で、『玄関帳場・フロント』に代替する機能を有する設備を備える場合の条件について、規定されています。
(玄関帳場又はフロント)
8 善良風俗の保持上、宿泊しようとする者との面接に適し、次の(1)~(4)までの要件を満たす構造設備の玄関帳場又はフロントを有すること。ただし、(5)の要件を満たす場合は、玄関帳場又はフロントに代替する機能を有する設備を備えているものとして、玄関帳場又はフロントを設置しないことができること。
(中略)
(5) 次の全ての要件を満たし、宿泊者の安全や利便性の確保ができていること。
1) 事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応のための体制が整備されていること。緊急時に対応できる体制については、宿泊者の緊急を要する状況に対し、その求めに応じて、通常おおむね10 分程度で職員等が駆けつけることができる体制を想定しているもの であること。
2) 営業者自らが設置したビデオカメラ等により、宿泊者の本人確認や 出入りの状況の確認を常時鮮明な画像により実施すること。
3)鍵の受渡しを適切に行うこと。
『概ね10分で駆け付けることができる体制』って一体どれくらいなの?
『不動産の表示に関する公正競争規約施行規則』で定義されていて、
『徒歩1分=80m』で見ておくのが一般的だよ!
第5章 表示基準
第1節 物件の内容・取引条件等に係る表示基準
(物件の内容・取引条件等に係る表示基準)
第9条 規約第15条(物件の内容・取引条件等に係る表示基準)各号に規定する事項について表示するときは、次の各号に定めるところにより表示する。
(中略)
〔各種施設までの距離又は所要時間〕
(9) 徒歩による所要時間は、道路距離80メートルにつき1分間を要するものとして算出した数値を表示すること。
参考:要領等の原文
<現場の声:事前に確認をしておこう!>
警備会社や関係会社との連携を図る上で、非常に立地が重要ということです。警備会社に委託する場合、警備会社の事務所が計画地から800m圏内であるか?要確認です。
3 管理者の常駐は必須?
結論:地域毎に上乗せ条例で個別に定められています。
厚生労働省からは、下記のFAQで職員を常駐させないことも可能と明言しています。しかし、各地域ごとに規定されていますので、必ず該当エリアで情報を取得するようにしてください。
<現場の声>
これにより常駐管理室が必要となったり、
ベットやシャワー給湯設備など、必要設備や諸室が増える場合があります。
金額も追加でかかることも。。。早めの協議が事業計画を左右させます。
4 代替可能設備の設置により玄関帳場を中止にできる?
結論:代替可能設備を設置する場合でも、玄関帳場が設置必須の地域もある。
共用部に玄関帳場(フロント)を設けるか否か?については、各地域で明確に回答が分かれます。
<現場からの声>
共用棟の計画が変更になるなど、全体の配置及び動線計画に大きく関わります。
必ず聞き漏れのないようにしましょう。
5 客室建具に設置するスマートキーに決まりはある?
結論:特段規定はございません。
しかし、建具の厚みや機構によっては取り付け不可となります。建具との相性や納まりを十分に確認ください。
スマートキーメーカーや建築士に対して、建具との干渉及び加工の有無について必ずご確認ください。
<現場の声>
いざ現場フェーズで取り付けができない!ということが意外に多いです。
必ず事前に確認をするようにしてください。
おわりに
無人運営のホテルは、コスト削減や効率化の面で大きな可能性を秘めていますが、その導入には慎重な計画と準備が不可欠です。特に、法律上の規定や地域ごとの条例を把握し、緊急時の対応策をしっかりと設けることが重要です。本記事で紹介したトラブル事例とその対策を参考に、無人運営の利点を最大限に活かしながら、リスクを最小限に抑えた運営を目指してください。