
「寒冷地や積雪が多い地域での工作物の留意点」について教えて下さい!

地域毎の特性を把握して計画に落とし込むことが重要だよね!
『寒冷地での工作物の留意事項について』を解説しよう!
はじめに

寒冷地の建築では、建物本体だけでなく外部に付随する工作物にも数多くのリスクが潜んでいます。煙突や看板、外部階段、手すりなどは、積雪や凍結の影響を直接受けやすく、破損や事故につながる恐れがあります。また、灯油タンクや埋設物といったライフライン関連の要素も、凍害によって大きなトラブルを引き起こす可能性があります。
本記事では、寒冷地における代表的な工作物の設計課題を整理し、実務に役立つ具体的な対応策をご紹介します。

第1章 煙突について

煙突は冬季の降雪や落雪の影響を強く受ける部分であり、設置や納まりを誤ると破損につながります。ここでは雪害に対する基本的な対策を示します。
- 問題事象
積雪や落雪の影響で煙突が破損する恐れがある。 - 主な原因:雪害
- 対応策
- 煙突の上部に陣笠を取り付けて雪の侵入を防ぐ。
- 屋根の落雪が直接煙突に当たらない配置計画とする。
第2章 テレビアンテナ・避雷針について

勾配屋根では落雪によってアンテナや避雷針が損傷を受けやすく、特に支柱やケーブル部分が被害を受けやすい箇所です。
- 問題事象
屋根からの落雪によりアンテナや避雷針が破損する可能性がある。 - 主な原因:雪害
- 対応策
- 落雪の影響を受けにくい妻側に設置する。
- 妻側に設置する場合でも、積雪や落雪の影響を軽減するため、破風板から外側に張り出すように設置する。
第3章 屋外看板について

看板は積雪や氷の荷重によって破損や落下を招き、通行者への危険につながります。
- 問題事象
積もった雪や氷が看板から落下し、危険を生じる。 - 主な原因:雪害
- 対応策
- 雪が積もりにくい形状の看板を採用する。
- 突き出し看板ではなく、建物外壁に組み込んだ形式とする。
第4章 外部階段について

外部階段は雪や氷に直接さらされるため、凍害や腐食のリスクが高い部位です。安全性を維持するための設計上の工夫が欠かせません。
4-1. 鉄骨階段の劣化
- 問題事象
融雪と凍結を繰り返すことで塗装が劣化し、鉄部が腐食・破損する恐れがある。 - 主な原因:雪害・凍害
- 対応策
- 防錆処理を徹底する。
- 床面に水抜き穴を設けるなど、水はけを良くする設計とする。
4-2. 使用困難となるケース
- 問題事象
雪の吹き込みにより階段の使用が難しくなる場合がある。 - 主な原因:雪害
- 対応策
- 開放性を考慮した防風対策を行う。
- 床材にはエキスパンドメタルやグレーチングを採用する。
第5章 手すり・門・塀について

外部に設置される手すりや門扉は、雪害や凍害の影響で破損しやすく、安全性を損なう可能性があります。
5-1. 手すりの凍害
- 問題事象
鋼製手すりでパイプ内部に水が浸入すると、凍結膨張で破損する恐れがある。 - 主な原因:凍害
- 対応策
- 丸鋼や平鋼を採用する。
- 継手溶接を確実に行い、浸水を防ぐ。
- パイプを使う場合は水抜き穴を設ける。
5-2. 柵やフェンスの破損
- 問題事象
雪の荷重や除雪による堆雪でフェンスや塀が破損することがある。 - 主な原因:雪害
- 対応策
- 雪荷重に耐えられる強度の部材を使用する。
- コンクリート腰壁を適切な高さまで設け、その上にフェンスを設置する。
5-3. 門扉の不具合
- 問題事象
積雪により門扉が開閉不能となる場合がある。 - 主な原因:雪害
- 対応策
- ロードヒーティングを導入する。
- 上吊り式や吊りスライド式の門扉を採用し、金物やレールの強度・耐久性を確保する。
5-4. 基礎の凍上
- 問題事象
凍上によって基礎が浮き上がりや沈下を起こし、地盤差がある場合は傾斜することがある。 - 主な原因:凍害
- 対応策
- 基礎を凍結深度より深く設置する。
- 基礎周囲を砂や砂利など透水性の高い土で置換する。
第6章 埋設物について

地中に設置される機械基礎や独立看板の基礎は凍害の影響を受けやすく、凍上により構造の安定性が損なわれる恐れがあります。
- 問題事象
地中の基礎が凍上し、沈下や不陸を引き起こす。 - 主な原因:凍害
- 対応策
- 基礎を凍結深度以下に設置する。
- 周囲を凍上しにくい砂や砂利で埋め戻す。
第7章 灯油タンクについて

灯油タンクは寒冷地で頻繁に利用される設備ですが、凍上や積雪によって設置や使用に支障をきたすことがあります。
7-1. 凍上による不陸
- 問題事象
屋外に独立設置した灯油タンクは凍上により不陸が発生する。 - 主な原因:凍害
- 対応策
- 基礎を凍結深度以下まで根入れする。
- 基礎周辺を砂や砂利で埋め戻す。
- ブラケット式を採用し、外壁面に設置する。
7-2. 給油の困難さ
- 問題事象
積雪によって灯油タンクへの給油が難しくなる。 - 主な原因:雪害
- 対応策
- 道路に面してタンクを配置する。
- 給油経路を除雪し、メンテナンス動線を確保する。
- 給油口が雪に埋まらないよう庇や屋根を設ける。
おわりに

寒冷地での工作物の設計は、雪害や凍害の影響を的確に想定し、適切な対策を講じることが不可欠です。煙突やアンテナ、看板といった小規模なものから、外部階段や灯油タンクといった生活に直結する設備まで、あらゆる要素が気候の厳しさにさらされます。設計時にリスクを織り込み、耐久性や安全性を高めることで、安心して使える建築環境を実現することができます。
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積雪時の設計で参考になる書籍としては、下記を推奨します。非常に細部までまとめられていますので、寒冷地での計画に関わる人の必携本です。