切土、盛土ってどういう意味?
造成工事の基本用語と、盛土規制法について、解説しよう!
はじめに
一級建築士のSUPERREです。昨今の土砂災害を受け、日本では造成に関する法律「宅地造成及び特定盛土等規制法」の施行が令和5年5月26日に開始しました。本記事では、造成工事の基礎知識と規制の概要について解説をします。
スポンサーリンク第1章: 切土(キリド)と盛土(モリド)について
切土とは?
切土(きりど)とは、斜面の土を削り取る作業のことを指します。
傾斜地を平らにするために、元々あった地盤を切り取ります。切土により表出する地盤は、締まっていることが多く、地盤が硬いのが特徴です。そのため、切土部分は比較的安定しており、建物を建てる際にも安心です。
ポイント
- 自然の地盤がそのまま出てくるため、硬く締まっている。
- 地盤が安定しているので、建物を建てる際に安心。
盛土とは?
盛土(もりど)とは、地面を平らにするために土を上に付け足す作業を指します。
この盛土は、後から載せるため、元々の地盤とは異なり、比較的柔らかいことが多いです。少し機械で締め固めただけでは不十分で、上に建物を載せると沈下してしまうことがあります。
ポイント
・後から土を載せるため、柔らかい地盤面となりやすい。
・締め固めが不十分だと、建物が沈下するリスクがある。
不同沈下などの地盤不良は、下記記事で解説!
地盤補強については、下記記事で解説!
第2章: L形擁壁と盛土の関係
傾斜や高低差の大きい造成工事の場合、L形擁壁を使うことが多いです。
L形擁壁を使う場合、擁壁の側に盛土が行われます。擁壁の下には水平部分をつくるために少し切土が必要ですが、その後、斜面の高い側を削り取って出てきた土を盛土に利用します。このため、擁壁寄りの土地は柔らかい可能性が高く、建物を建てる際には特に注意が必要です。
ポイント
- L形擁壁の側は盛土となるため、地盤が柔らかい。
- 擁壁寄りの土地には注意が必要。
第3章: 宅地造成とは?
造成に関して、「宅地造成」という言葉を聞いたことがあると思います。
「宅地造成」とは、山や丘陵に対して切土や盛土を行い、宅地に転用することを指します。こうして形成される土地を「造成地」と称されます。宅地造成に関する法律について、次章で解説をします。
スポンサーリンク第4章: 宅地造成及び特定盛土等規制法について
皆様は、宅地造成等規制法をご存知でしょうか。
昨今の土砂災害を踏まえ、宅地造成及び特定盛土等規制法に改正されています。従来の規制対象範囲が大幅に広がって改正されていますので、造成工事を行う場合は、特に注意が必要です。
「宅地造成及び特定盛土等規制法」(通称「盛土規制法」)について印刷用ページ
国土交通省HPより引用
盛土等による災害から国民の生命・身体を守る観点から、盛土等を行う土地の用途やその目的にかかわらず、危険な盛土等を全国一律の基準で包括的に規制する「宅地造成及び特定盛土等規制法」(通称「盛土規制法」、令和4年5月27日公布)が、令和5年5月26日から施行されました。
※ 盛土規制法は、国土交通省と農林水産省による共管法です。
改正の背景
皆様記憶に新しいとは思いますが、静岡県熱海市で起きた大規模な土砂災害により、多くの被害を被りました。本改正以前は、宅地造成に関する規制が主でしたが、造成工事に対して包括的に規制を拡大していく流れが、今回の改正となります。
スポンサーリンク背景
国土交通省HPより引用
令和3年、静岡県熱海市で大雨に伴って盛土が崩落し、大規模な土石流災害が発生したことや、危険な盛土等に関する法律による規制が必ずしも十分でないエリアが存在していること等を踏まえ、「宅地造成等規制法」を抜本的に改正して、「宅地造成及び特定盛土等規制法」とし、土地の用途にかかわらず、危険な盛土等を包括的に規制します。
新制度の規制区域について
下記参考資料を見て頂くとお分かり頂けると思いますが、規制対象が「宅地造成」から土地利用全般に広がります。各地域にて個々に規制範囲が指定されています。必ず市町村に確認を行い、規制範囲及び内容をご確認ください。
規制対象の概要について
規制の対象は、エリア毎に定められた区域によりますが、切盛土の高さや面積に応じて規制がかけられます。都市計画法の形質の変更に似た規制内容が多いですが、開発許可不要の場合でも、盛土規制法に抵触する可能性がある為、注意が必要です。
工事及び検査について
今回の改正に合わせて、申請時点ての土地所有者等への同意や周辺住民への説明会などが求められるようになりました。他にも許可申請時の施行者能力や資力などが要求されることや、中間検査の追加がなされており、全体として厳格化されています。
おわりに
本記事では、造成工事の基本的な概念と新たに施行された「宅地造成及び特定盛土等規制法」について解説しました。この法律の改正により、造成工事に対する規制が強化され、安全な土地利用がより一層求められるようになりました。特に盛土の扱いについては、これまで以上に慎重な対応が必要です。
造成工事を検討されている方や、関連する事業に携わる方は、法律の詳細を理解し、適切な対応を取ることが重要です。今後も安全な土地利用のための知識を深め、安心して暮らせる環境を築いていくことが求められます。
国土交通省の擁壁の収まりをカラーで図説!
納まりって理解するのに時間と労力が必要ですよね。
下記記事は、国土交通省の図面を基に塗り分けをし、可能な限り理解を深めて頂く記事としています。収まりをマスターして一流の建築士になりましょう。