
「寒冷地や積雪が多い地域での設計の留意点」について教えて下さい!

地域毎の特性を把握して計画に落とし込むことが重要だよね!
『寒冷地での設計の留意事項について』を解説しよう!
はじめに

積雪寒冷地での建築計画は、ただ建物を建てるだけではなく、地域特性を踏まえた安全性と快適性の両立が求められます。本記事では、各フェーズごとの設計上の注意点と対策について解説します。

第1章 地域の気候と周辺環境の調査について

寒冷地での建築では、敷地周辺の気象条件や自然環境を正確に把握することが不可欠です。雪や風の影響は建物設計に直結するため、事前調査が重要となります。
確認ポイント
- 年間の気温、積雪量、降雪頻度、風向・風速などの気象データの収集
- 周囲建物や道路からの吹きだまりや雪堆積の状況確認
- 近隣の雪処理状況や風の影響の評価
- 雪処理方法の計画と手順の明確化

除雪に関しては、敷地内で自分たちで行うのか?地元の協力業者への手配を行うのか?でも対策は変わります!
第2章 敷地内配置と建物形状の計画について

雪や強風に備えるためには、建物配置や形状の工夫が不可欠です。棟数や間隔、通路設計に配慮することで、機能性と安全性を両立できます。
確認ポイント
- 敷地内での雪処理を考慮した配置
- 建物を集約化し、隣棟間隔を十分に確保
- 積雪時に歩行可能な通路や出入口の計画
- 建物形状と配置により自然流雪を活用
第3章 屋根・屋上の形状と素材選定について

屋根は積雪や凍害の影響を直接受けるため、形状・勾配・材料選定が重要です。安全性と耐久性を高めるための設計が求められます。
確認ポイント
- 落雪リスクを低減する屋根形状の選定
- 勾配3寸以上の屋根を金属板で施工
- 陸屋根の水勾配を十分に確保し凍害対策。
- 雪庇形成を抑制する風向対応策の検討
- 雪止め金物や融雪設備の活用
第4章 外装材と壁面形状について

外装材や壁面形状は、雪や氷による損傷を防ぐために慎重に設計する必要があります。耐候性・耐久性・安全性を確保することが設計上の重要ポイントです。
確認ポイント
- 棚面や緩傾斜面を避ける形状設計
- 厳しい気象条件に耐える外装材と施工方法の採用
- 吸水率の低い材料を選び凹凸を避ける
- 凍害による剥離防止策の検討
第5章 最下階および外気に接する床の設計について

ピロティや基礎周辺など外気に触れる床部分は、断熱や凍結防止対策が欠かせません。構造と設備の両面から安全性を確保します。
確認ポイント
- 外気に接する床の断熱強化
- 配管や設備の凍結防止策の実施
- 基礎底を凍結深度以下に設定
- 排水性の高い砂地や誘発目地の設置

凍結震度は、地域毎に異なるから必ず確認しましょう。役所などに問い合わせをすることで照会可能です。
第6章 開口部の性能と設計について

窓やドアは、断熱性能や結露対策、日射条件を考慮して設計する必要があります。快適な室内環境の維持に直結します。
確認ポイント
- 適切な断熱性能を持つ建材の使用
- 方位と日照条件の考慮
- 結露防止策の実施
- 水切れや排水性能を考慮した納まり
第7章 断熱と気密の設計について

建物全体の温熱環境は、断熱性能と気密層の適切な計画で大きく左右されます。開口部や熱橋も含め、綿密な設計が重要です。
確認ポイント
- 暖房室・非暖房室の用途決定
- 適した断熱材・断熱工法の選定
- 気密層の確保
- 熱橋部の断熱補強
- 開口部周辺の充填断熱材によるライン連結

熱橋(ヒートブリッジ)対策の納まりについては、下記でまとめているよ。
第8章 外構計画と凍結対策について

外構は、凍上や融雪時の排水、植栽の選定など地域特性を考慮して計画することで、建物周囲の安全性と利便性を向上させます。
確認ポイント
- 凍上防止策の導入
- 凍結しやすいポーチの対策
- 春先の融雪でも水たまりを作らない排水設計
- 適応樹種の選定と植栽配置
第9章 維持運営と安全管理について

建物完成後も、雪や氷による危険を回避するため、除雪方法や外装・設備の安全対策、更新計画を継続的に管理することが重要です。
確認ポイント
- 除排雪・融雪方式の確定
- 看板や外装材の落下防止策
- 更新機器のリストアップと管理方法
- 安全性を保つ維持運営計画
おわりに

寒冷地や積雪地の建築計画では、地域環境の特性を正確に理解し、各フェーズで対策を施すことが不可欠です。安全で快適な建築設計を実現するための指針として活用してください。
寒冷地での計画に関してのおすすめ書籍

積雪時に参考になる書籍としては、下記を推奨します。非常に細部までまとめられていますので、寒冷地での計画に関わる人の必携本です。



