住宅3点セット/住宅の定義を解説!用途上不可分で計画する設計手法と「住宅扱い」が及ぼすトラブルを現場設計士が解説!

建築知識
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設計者A
設計者A

住宅3点セット?用途上不可分?

何が何だか分かりません。

一級建築士:SUPERRE
一級建築士:SUPERRE

設計関係の仕事をするなら是非とも理解しておくべきポイントだよ!

実際のトラブル例も交えて説明しよう

はじめに

建築や設計の仕事に携わるならば、「用途上不可分」という概念を理解しておくことは非常に重要です。特に、住宅の設計においては「住宅3点セット」や複数棟にわたる建物の関係性を適切に判断することが求められます。本記事では、実際のトラブル事例を交えながら、住宅の定義や用途上不可分の概念について、詳しく解説していきます。この記事を通じて、設計上の注意点やポイントをしっかりと学び、今後の実務に役立ててください。

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第1章 原則1つの敷地に建物は1つしか建てられない

設計者A
設計者A

1つの敷地に1つの建物?

でもウチの実家は、離れがあるんだけど。。。

一級建築士:SUPERRE
一級建築士:SUPERRE

原則は1つしか建てられないよ!

条件を満たせば複数建物作ることができるんだ!

建築基準法には何て書いてあるの?

第一条 この政令において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 敷地 一の建築物又は用途上不可分の関係にある二以上の建築物のある一団の土地をいう。

引用:建築基準法施行令 第一条一項一号

一級建築士:SUPERRE
一級建築士:SUPERRE

要約すると・・・↓

1の敷地には、1の建築物とする。
1の敷地に2以上の建築物の場合は、用途上不可分とすること。

設計者A
設計者A

用途上不可分ってどういう意味?

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用途上不可分とはなにか?

用途上不可分の事例「学校」1
用途上不可分の事例「学校」1

分かりやすい「学校」を例に説明します。「学校」という用途は、様々な諸室・機能により成立しています。具体的には、「教室」「体育館」「職員室」「更衣室」「プール棟」「便所」「保健室」などです。一つでも欠けると「学校」という機能が不成立になってしまい、「学校」という用途を成立させる上で不可分な関係性にあります。これを「用途上不可分」と呼びます

用途上不可分:「用途」成立の為に必須な諸室・機能同士の関係性を指す。

具体的にはどういうこと?

用途上不可分の事例「学校」2
用途上不可分の事例「学校」2

棟1:プール棟(「更衣室」「プール」)
棟2:体育館
棟3:講義棟(「教室」「職員室」「便所」「保健室」)

「学校」の事例の続きですが、上記は学校用途成立の為の機能を3棟で成立させています。これらは、「学校」用途を3棟で成立させている為、用途上不可分とすることが可能です。

用途上可分 or 不可分の判定について
複数建物の場合、迷いますよね。1つの建物で用途が完結している場合は、可分と見なされることが一般的です。詳しくは、確認申請提出先の判定員にご相談ください。

代表的な用途上不可分の事例

一般的に用途上不可分の扱いで語られる機能は、下記が挙げられます。(一例)

住宅:母屋と車庫

集合住宅:母屋とゴミ倉庫

ホテル:共用棟と宿泊棟

工場:事務棟と製作棟

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第2章 住宅と離れは用途上不可分なの?

設計者A
設計者A

あれ?でもウチの実家の離れは?どうなんだろう。。。

一級建築士:SUPERRE
一級建築士:SUPERRE

そうなんですよ!

母屋と離れの関係性を説明する為に、「住宅」の定義を解説しますね。

「住宅」の定義は、「住宅3点セット」を押さえるべし!

どんな機能が揃うと住宅とみなされるのか?実は建築基準法には明確な定義がありません。しかし、通例とされている考え方があります。

通称:住宅3点セットと言われています。

住宅の定義の解説図
住宅の定義の解説図

『住宅』=『キッチン』+『浴室』+『便所』
これらが3点揃うと『住宅』と見なされことが多い為、『住宅3点セット』と呼ばれます。
本項は、一般論です。必ず所管行政庁にてご確認ください。

これは全国のリゾートホテル開発をする私自身様々な市町村や確認申請機関と協議をする中で聞く為、一般論として覚えて頂いて差し支えないと思います。

設計者A
設計者A

つまり、ウチの実家の「離れ」は『住宅3点セット』の内、

いずれかを外して用途不可分としているのかもしれない

一級建築士:SUPERRE
一級建築士:SUPERRE

鋭いね!その可能性が高いと思うよ!

自治体や審査機関により判断が分かれます。必ずご確認の上、設計下さい。

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余談)シェアハウスの確認申請上の用途について

共用部を持つシェアハウスなどは、建築確認申請を出す際の用途は、一見集合住宅と考えられそうそうてすが、建築確認申請の用途は、寄宿舎として出していることが多いです。それは、占有部を極力コストを抑えることから住宅3点セットのいずれかを共用部でまかなうことで、「住宅」の定義から外しているのです。実際に私も寄宿舎として申請をしたことがあります。

中には厳しいケースも!埼玉県所沢市の事例!

引用:住宅に附属する「離れ」の取扱い、注意点についてを一部ハイライト

中には厳しい判定を下す自治体も御座います。ここでは、埼玉県所沢市の取扱いをご紹介します。住宅の離れについて、上記のような公式文章を出しています。

台所及び便所があれば一戸建て住宅に該当します。

引用:住宅に附属する「離れ」の取扱い、注意点について

このように自治体によって住宅の定義は、大きく変わりますのでご留意ください

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第3章 流行りの1棟貸しホテルはどうしているの?

コロナ禍も明け、外国人観光客向けにホテルも増えてきています。その中でも人との接触を避け、大人数で利用できる1棟貸しに注目が集まっています。こちらも用途不可分のロジックを利用して、計画されていることが多いです。

一棟貸しを1敷地に複数棟計画する場合の用途条不可分の関係性の一例
一棟貸しを1敷地に複数棟計画する場合の用途条不可分の関係性の一例

「ホテル用途」の構成要素である、「チェックイン」「リネン庫」「倉庫」「厨房」「事務室」「飲食室」「給湯室」「チャペル」「プール」などを分散させているということです。

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第4章 「住宅の定義」でつまづくことがある

私が宿泊施設の設計をする際に体験したトラブルをご紹介させて頂きます。

宿泊施設が町条例では集合住宅扱いに。

設計用途:宿泊施設
階数:4階
客室間取り:リビング/ダイニング/キッチン/便所/浴室/寝室

宿泊施設用途として上記の計画を進めていたところ、市町村条例では「集合住宅等」として判断されました。その為、集合住宅同等の厳しい規制が加わってしまいました

ここで問われたのが『住宅3点セット』です。

各客室内にキッチンと便所と浴室が計画されていることにより『住宅』としてみなす。よって集合住宅として扱う。という指摘でした。これはあくまで、一市町村の見解ですので他の市町村では異なる場合がございます。皆様も十分にご留意ください。

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おわりに

「用途上不可分」の考え方や「住宅3点セット」の重要性は、建築設計において非常に大きな影響を及ぼすものです。設計を進める際には、各自治体や審査機関の判断が異なることも考慮し、慎重に進めることが求められます。本記事で紹介したトラブル事例を参考に、今後のプロジェクトで同様の問題に直面しないよう、事前の確認や適切な対応を心がけてください。建築士として、より良い設計を目指して一歩進んでいきましょう。

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