
「寒冷地や積雪が多い地域での建築設計の外壁仕上げ・外断熱・断熱の留意点」について教えて下さい!

地域毎の特性を把握して計画に落とし込むことが重要だよね!
『寒冷地での留意事項について』を解説しよう!
はじめに

寒冷地や積雪地域では、外壁や断熱の設計を誤ると、雪害や凍害による劣化、結露による快適性の低下が生じます。建物を長持ちさせ、住まい手が安心できる環境をつくるためには、地域特有のリスクに応じた対策が不可欠です。
本記事では、「外壁仕上げ」「外断熱」「断熱全般」の3つの観点から、Q&A形式で設計上のポイントを整理します。

第1章 外壁仕上げの留意点について

外壁は建物を守る“顔”であると同時に、寒冷地では雪や凍結の影響を直接受ける部分です。仕上げ材の選び方や納まりの工夫次第で、耐久性に大きな差が出ます。ここでは外壁仕上げに関する典型的な疑問を取り上げます。
Q. 腰壁や足元が汚れやすいのはなぜ?
A. 融けた雪や泥が付着しやすく、見た目の劣化を招きます。
対策
- 水はけの良い平滑な仕上げを採用する
- 汚れが目立ちにくい色を使う
- 建物周辺を舗装や砂利敷きにして泥の跳ね返りを防ぐ
Q. 外壁に凸凹があると何が問題?
A. 凍害を受けやすく、ひび割れや劣化の原因になります。
対策
- 凹凸のない壁面とする
- 水切れの良い納まりに工夫する
Q. 外装材が剥離するリスクは?
A. 凍害によりタイルや石材が浮いたり剥がれたりする可能性があります。
対策
- 吸水率1%以下の磁器質タイルを選定
- 隅角部は役物タイルを使用し小口を露出させない
- 水切り板は金属製を使用
- 外装石材は花崗岩や安山岩を採用し、PC工法・乾式工法で施工
Q. ALC板は使えますか?
A. 吸水率が高いため凍害を受けやすく、外壁には不向きです。
Q. シーリング材の劣化が心配です。どう対処すべき?
A. 低温下で劣化が早まり、浸水や凍害の原因となります。
対策
- 気象条件に合ったシーリング材を採用
- 一次シールだけでなく二次止水も確保する
第2章 外断熱の留意点について

外断熱は、寒冷地において建物の快適性と耐久性を左右する重要な要素です。工法やディテールを誤ると結露や断熱性能の低下を招きます。ここでは、外断熱に関する典型的な課題と解決策をまとめます。
Q. 外断熱の工法はどう選べばいい?
A. 通気層工法と非通気層工法(密着工法)があります。
対策
- 通気層工法:断熱材の湿気を放出できる
- 非通気層工法:仕上げ材を直接施工するが、断熱材の吸水率に注意
- 耐火構造の場合は大臣認定工法を使用
- 吸水率の低い断熱材を採用
Q. アンカー金物は問題になりますか?
A. はい。コールドブリッジ(熱橋)となり、結露の原因になります。
対策
- 熱伝導率の低いアンカー材を使用
- 断熱補強を併用
- 防錆処理や錆びにくい素材を選定
Q. 外部突出部の断熱はどう考える?
A. バルコニーや外階段などは断熱材が途切れやすく、熱橋となります。
対策
- 断熱材をできるだけ連続させる
- やむを得ず断熱が途切れる場合は十分な補強を行う
第3章 断熱全般の留意点について

寒冷地では、結露や断熱欠損による性能低下を防ぐことが欠かせません。ここでは断熱全般の基本的な確認事項をQ&Aで整理します。
Q. 北側の外壁で結露が発生しやすいのはなぜ?
A. 日射が少なく冷えやすいため、結露リスクが高まります。
対策
- 北側外壁は十分に断熱する
- 収納を設ける場合は断熱と換気を強化
Q. グラスウールやロックウールは使って大丈夫?
A. 吸湿すると断熱性能が低下します。
対策
- 防湿層を隙間なく施工し湿気を遮断する
Q. 断熱欠損のチェックは必要?
A. はい。欠損部分が結露や性能低下を招きます。
対策
- 断熱ラインを現場で確認
- バルコニーや床スラブ廻りなど不連続部は必ず補強
おわりに

積雪寒冷地の建築設計では、外壁仕上げ・外断熱・断熱全般のいずれも、雪害・凍害・結露といったリスクを念頭に置く必要があります。設計段階から適切な対策を盛り込むことで、耐久性を高め、快適な住環境を実現できます。
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積雪時の設計で参考になる書籍としては、下記を推奨します。非常に細部までまとめられていますので、寒冷地での計画に関わる人の必携本です。