階高設定はどれくらいが適正?実際の設計現場を踏まえた注意事項を建築士が徹底解説!RC造

建築知識
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設計者・デザイナーの方必見!ディテール(納まり)ポータルサイトを作りました!
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設計者A
設計者A

階高検討をしているのだけど、どれくらいが適正なのか。。。

一級建築士:SUPERRE
一級建築士:SUPERRE

階高は、寸法根拠を押さえて覚えることをおすすめするよ!

私が普段検討している実際の設計思考を解説しよう

<おすすめ>スケッチやホテルに興味がある方必見!建築士が客室をスケッチしました。
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はじめに

建築設計をする上で外せないのが「階高」です。まずは、一般的な階高の寸法体系を学ぶことが重要です。事業性重視なのか、空間体験重視なのか、建築目的によっても計画寸法が変わります。設計を行う一級建築士のSUPERRE目線で、本記事では「階高設定」の設計ポイントを解説していきます。

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第1章 階高とは?

階高と天井高さと天井懐の理解

階高に纏わる基礎知識 用語の解説模式図
階高に纏わる基礎知識 用語の解説模式図
No.項目略称説明
1階高FH (Floor Height)階と階の垂直方向の寸法を指します。
2天井高さCH (Ceiling Height)床から天井までの垂直方向の寸法を指します。
3天井懐フトコロ天井と上階の隙間の垂直方向の寸法を指します。主に設備スペースとして利用可能することが多いです。
用語の解説リスト

まずは、基本的な用語の解説を行います。上記の図と表を参照ください。これらは通常断面計画をする際に考慮すべき項目となります。階高とは、ある階の床からその上の階の床までの垂直方向の寸法を指します。この階高が建物の設計において非常に重要な役割を果たします。設計に入ると、変更に手間を要しますので最初の検証が最も重要です。

一級建築士:SUPERRE
一級建築士:SUPERRE

階高は建物の骨格みたいなもんです。

数値根拠を定めてから決めないと、設備が収まらないなんてことも…設計段階で要チェック!

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第2章 階高によるメリットとデメリットについて

設計者A
設計者A

階高が変わるとどうなるんだ?

メリデメ比較がないと判断がつかないな。

一級建築士:SUPERRE
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そしたら階高の高低による傾向を分析してみよう!

下の図を見てくれ

階高メリットデメリット
高い場合・非日常的な開放感を演出
・ハイサイドライトや長いペンダント照明など光の演出に長けている
背丈のある家具や意匠性の高い大きい階段を設置できる
空調効率が悪い
音が反響し易い
・設備機器や照明のメンテナンス性に劣る
低い場合建築費用を縮小できる
空調効率が上昇する
・照明機器のメンテナンス性が向上する
閉塞感がある
・窓の面積や位置が相対的に低くなり、採光性に劣る
階高の高低差による傾向分析表
設計者A
設計者A

なるほど!両方の特性を踏まえた上で決定していくのか!

フロア毎にゾーニングをして、階高を変えてもいいかもね!

一級建築士:SUPERRE
一級建築士:SUPERRE

大切なことはメリハリをつけること!

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第3章 どれくらいの寸法を確保すればいいの?

設計者A
設計者A

じゃあ実際にどれくらいの寸法が必要なのかな?

一級建築士:SUPERRE
一級建築士:SUPERRE

私がよく設計をするRC構造を事例に解説しよう!

階高寸法と一纏めに言っても、これらは寸法の積み上げです。本記事では、鉄筋コンクリート造の場合を想定し、各部位毎にまとめてみましょう。天井有の場合で解説をします。

階高の考え方 結論概略図
階高の考え方 結論概略図

結論:階高希望天高(※大梁下)+1100mm程度
あくまで個人的な感覚ですので参考程度として下さい。

1100mmの内訳:大梁800mm+天井100mm(梁下有効)+二重床200mm
※詳細は下記をご参照ください。

スラブ

スラブと梁の関係性
スラブと梁の関係性

コンクリートで固められた床を「スラブ」と呼びます。普段よく扱う寸法は、スラブ厚180mm程度が最も多いです。RC造の場合、後述する梁とスラブが一体となって成型されます。
梁せいとスラブ厚は重複する為、階高試算時は1100mmの内訳には含めておりません。

※詳細は構造設計の上、個別の設計フェーズで必ず検証して下さい。あくまで参考程度にして下さい。

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梁(はり)

梁の呼称概略図
梁の呼称概略図

大梁:柱同士を接続 or 柱と梁を接続
小梁:大梁同士を接続
孫梁:小梁同士を接続

梁は、柱または梁を繋げる横架材を指します。大梁・小梁・孫梁など、何と接続するかによって呼称が変わります。上記は、それぞれの梁の呼称を解説する概念図であり、上記条件で呼び分けられるのが一般的です。

RC造はスパンを飛ばすのに不向き。
RC造の特徴として、非常に重く、揺れに対してしなやかに動く構造ではない為、大きなスパンを飛ばすのに向いていません。

RC造の梁せいを求める際、一般的に下記の式が用いられます。

梁せい(m)/柱間隔(m)=1/10

例えば、柱同士の間隔(スパン)を7mとした場合、梁せいは0.7mとなります。大梁に限らず小梁や孫梁も同様の考え方で良いでしょう。

私がよく計画しているホテルでも、6mから8mのスパンが多いです。梁の大きさの一例を挙げておきます。

梁のイメージ図
梁のイメージ図
呼称梁幅 (mm)梁せい (mm)
大梁450800
小梁300600
一般的な梁メンバ一の例

<断面検証用>大梁せい:800mmで想定します。

※詳細は構造設計の上、個別の設計フェーズで必ず検証して下さい。あくまで参考程度にして下さい。

鋼製天井

引用:桐井製作所建築用鋼製天井下地材

天井を張るには、下地を組まなければいけません。上記は、「桐井製作所」様の天井姿図を引用させていただきました。これは何回見ても分かり易いですね。。

上階のスラブのインサート金物から金物を吊って、鋼製天井を組みます。通称CチャンやMバーといった金物で組み上げ、天井を張っていきます。

今回の断面検証では、大梁下を天井レベルとして想定します。

一級建築士:SUPERRE
一級建築士:SUPERRE

簡単に説明すると、上階のスラブから金物を吊って天井を貼るイメージです!

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大梁下をどれだけあければ天井を張れるの?

梁と天井の取合いイメージ
梁と天井の取合いイメージ

結論、梁下端から100mm下がりのレベルを天井面とすることができます。設備を梁下で通そうとするとこの寸法では足りません。設備ルートや口径は、設計者にて事前にあたりをつけておくことをおすすめします。

天井に関しての納まり記事

二重床

床納まり概念図
床納まり概念図

床下には、排水設備をはじめとする多くの設備を計画します。通常水回りは、スラブレベルを下げて洗面脱衣とFLをゾロで揃えることが多いです。床下の懐が必要な理由としては、キッチンや便所からの排水経路として、水勾配を取ってPSに接続する必要がありますFL=SL+200程度でまずは見込むことが多いです。大体の客室は引き回し可能でしょう。

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第3章 実際の設計での留意点

実際の設計では、「ヴォリュームチェック」という簡易的な設計をしてから基本計画を進めることが一般的です。

ヴォリュームチェックでは、どれくらいの規模で何が計画できるかのラフな全体計画を主としています。当然、階高寸法のパターン検証も行います。前章でご紹介した寸法体系をベースに、程度の良い数値調整を行います。

事業性の検証により決まることがある

ホテルに限らずテナントビルや集合住宅など事業性が求められる場合、「この敷地に50室作れないか?」など、要望ありきで進めることも珍しくないです。この目標値ありきで階高も調整することがあります。

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斜線制限や天空率採用などを考慮して微調整する

都市計画法や建築基準法や関連条例には、建築物の高さに関して規定があります。具体的には、「斜線制限」「高度制限」「日影規制」を指します。そこから階高を逆算して目一杯建築するというやり方が、非常に多いです。

設備計画は早期にあたりをつけるべし

給排水設備や空調設備や電気設備など、天井や床下に隠して配管をしています。その際、それぞれの設備配管に必要なルートや寸法を確保しておかないと、当初の建築計画が崩壊してしまいます。具体的には、「梁下の配管なのか?」「梁貫通を利用するのか?」などが挙げられます。また、中層以上のホテルの場合、一階の天井内で設備配管を引き回すことが多い為、一階の階高は少し高めに設定しておくなどテクニックがございます。これら詳細な設備設計は後のフェーズでするにしても、早期に根拠を持って進めることが非常に重要です。

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おわりに

今回は、階高の基本的な概念から、具体的な寸法の考え方、そして実際の設計での留意点までを解説しました。建築設計者として、階高を慎重に検討し、寸法根拠を明確にすることで、後々の設計段階でのトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。今後の設計業務においても、本記事で紹介したポイントを参考に、より精度の高い計画を立てていただければ幸いです。

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