
自然公園法上の敷地の考え方や、用途不可分の取り扱いについて教えてください!

用語の定義やホテル開発で起きた用途不可分の考え方について解説します!
はじめに

建築計画において「敷地」は、すべての前提条件となる極めて重要な概念です。特に自然公園法が絡む案件では、建築基準法や都市計画法と同じ感覚で敷地を捉えると、協議のやり直しや計画変更に発展しかねません。
本記事では、実務経験をもとに自然公園法における「敷地」や「用途不可分」の考え方と、設計上の注意点をわかりやすく解説します。

第1章|自然公園法における「敷地」の考え方とは

自然公園法では、「敷地」という言葉が使われていますが、その定義は建築基準法とは大きく異なります。まず重要なのは、敷地=登記上の土地の単位ではないという点です。環境省の運用解釈では、敷地は建築計画上の概念として整理されており、設計者がその意味を正しく理解していないと、後工程で大きな問題になります。
自然公園法における「敷地」の原文定義
「敷地」の定義
一つの建築物又は用途上不可分の関係にある2つ以上の建築物がある一区画の土地をいう。 なお、建築物の敷地界が所有界と一致しているか否かを問わない。貸別荘群のように、一連の土地に用途上可分な建築物を多数設けるような場合には、個々の建築物の敷地を区画させ図面等により明定させる必要がある。
出典:環境省「自然公園法の行為の許可基準の細部解釈及び運用方法」

👉 ポイント
- 所有界(筆界)と一致している必要はない
- 敷地は「任意に設定される計画単位」
つまり、敷地は設計者が“どう切るか”によって成立する概念であり、法的にはかなり柔軟に扱われています。
第2章|「用途上不可分の建築物」とは何を指すのか

自然公園法では、複数棟の建築物を一つの敷地として扱うかどうかを判断するために、「用途上不可分」という考え方が用意されています。これは、単に物理的に近接しているかどうかではなく、機能的に切り離せるかどうかが判断基準になります。
用途上不可分の原文定義
「用途上不可分である建築物」の定義
住宅に付随して設けられる物置、車庫等のように、主たる建築物の用途を補完するために付随して設けられる建築物、又は研修所等における宿泊棟、研修棟、食堂棟、管理棟のように、それぞれの施設単独では用途上の目的を果たせず、いずれをとっても互い に補完しあう関係にある建築物のことをいう。一つの建築物のみで用途上の目的を果たすことが可能な貸別荘群と管理棟との関係はこれに含まれない。
出典:環境省「自然公園法の行為の許可基準の細部解釈及び運用方法」

👉 具体例
- 住宅+物置・車庫 → 用途上不可分
- 研修棟+宿泊棟+食堂棟 → 用途上不可分
- 一棟完結型の貸別荘+管理棟 → 用途上可分
第3章|自然公園法には「接道義務」が存在しない

建築基準法では敷地と道路の関係が厳しく規定されていますが、自然公園法には接道義務の規定はありません。この点は、設計上の自由度を高める一方で、誤解も生みやすいポイントです。
建築基準法の接道義務の法文を見てみよう!
(敷地等と道路との関係)
第四十三条 建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。
一 自動車のみの交通の用に供する道路
二 地区計画の区域(地区整備計画が定められている区域のうち都市計画法第十二条の十一の規定により建築物その他の工作物の敷地として併せて利用すべき区域として定められている区域に限る。)内の道路引用:建築基準法より抜粋

上記は建築基準法であり、自然公園法には関係がありません。
よって自然公園法上の「敷地」を細かく分けても、
- 接道条件
- 道路幅員
といった要件は、問われることはありません。
しかし、安心するのは早計です。特別地域では、別の制約が強く効いてきます。
スポンサーリンク第4章|特別地域で必ず確認すべき「外壁後退距離」

自然公園法の国立公園に指定されている地域は、それぞれに地域区分が設定されており、中でも特別地域に要注意です。今回ご紹介している「敷地」に絡む部分は、敷地境界線から建築物までの後退距離が定められています。これは、敷地の切り方次第で、配置計画に致命的な影響を与える規制です。

自然公園法で特別地域に建築物を計画する場合、多くの場合が「第二種特別地域」であることが多いよ!集合別荘や集合住宅や保養所ではない場合、実際にどういう規制がかかるか?
まずは、自然公園法施行規則第11条6項を見てみよう!
(特別地域、特別保護地区及び海域公園地区内の行為の許可基準)
第十一条 法第二十条第三項第一号、第二十一条第三項第一号及び第二十二条第三項第一号に掲げる行為(仮設の建築物(土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱又は壁を有するものをいい、建築設備(当該工作物に設ける電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙若しくは汚物処理の設備又は煙突、昇降機若しくは避雷針をいう。第二十条第九号イ(5)において同じ。)を含む。以下同じ。)の新築、改築又は増築に限る。)に係る法第二十条第四項、第二十一条第四項及び第二十二条第四項の環境省令で定める基準(以下この条において「許可基準」という。)は、次のとおりとする。ただし、既存の建築物の改築、既存の建築物の建替え若しくは災害により滅失した建築物の復旧のための新築(申請に係る建築物の規模が既存の建築物の規模を超えないもの又は既存の建築物が有していた機能を維持するためやむを得ず必要最小限の規模の拡大を行うものに限る。)又は学術研究その他公益上必要であり、かつ、申請に係る場所以外の場所においてはその目的を達成することができないと認められる建築物の新築、改築若しくは増築(以下「既存建築物の改築等」という。)であつて、第一号、第五号及び第六号に掲げる基準に適合するものについては、この限りでない。
一 設置期間が三年を超えず、かつ、当該建築物の構造が容易に移転し又は除却することができるものであること。
二 次に掲げる地域(以下「特別保護地区等」という。)内において行われるものでないこと。
イ 特別保護地区、第一種特別地域又は海域公園地区
ロ 第二種特別地域又は第三種特別地域のうち、植生の復元が困難な地域等(次に掲げる地域であつて、その全部若しくは一部について文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第百九条第一項の規定による史跡名勝天然記念物の指定若しくは同法第百十条第一項の規定による史跡名勝天然記念物の仮指定(以下「史跡名勝天然記念物の指定等」という。)がされていること又は学術調査の結果等により、特別保護地区又は第一種特別地域に準ずる取扱いが現に行われ、又は行われることが必要であると認められるものをいう。以下同じ。)であるもの
(1) 高山帯、亜高山帯、風衝地、湿原等植生の復元が困難な地域
(2) 野生動植物の生息地又は生育地として重要な地域
(3) 地形若しくは地質が特異である地域又は特異な自然の現象が生じている地域
(4) 優れた天然林又は学術的価値を有する人工林の地域
三 当該建築物が主要な展望地から展望する場合の著しい妨げにならないものであること。
四 当該建築物が山稜線を分断する等眺望の対象に著しい支障を及ぼすものでないこと。
五 当該建築物の屋根及び壁面の色彩並びに形態がその周辺の風致又は景観と著しく不調和でないこと。
六 当該建築物の撤去に関する計画が定められており、かつ、当該建築物を撤去した後に跡地の整理を適切に行うこととされているものであること。(中略)
6 法第二十条第三項第一号、第二十一条第三項第一号及び第二十二条第三項第一号に掲げる行為(前各項の規定の適用を受ける建築物の新築、改築又は増築以外の建築物の新築、改築又は増築に限る。)に係る許可基準は、第一項第二号から第五号まで並びに第四項第七号及び第九号から第十一号までの規定の例によるほか、次のとおりとする。ただし、第二項ただし書に規定する行為に該当するものについては、この限りでない。
一 当該建築物の高さが十三メートル(その高さが現に十三メートルを超える既存の建築物の改築又は増築にあつては、既存の建築物の高さ)を超えないものであること。
二 当該建築物に係る敷地の範囲が明らかであり、かつ、総建築面積の敷地面積に対する割合及び総延べ面積の敷地面積に対する割合が、前項第二号の表の上欄に掲げる地域及び敷地面積の区分ごとに、それぞれ同表の中欄及び下欄に掲げるとおりであること。

なんて書いてあるか分からないよ。。。もっとわかりやすく書いてあるのはないの?

流石にわかりにくかったのか、環境省が表としてまとめてくれているよ。これを見てみて!
結論から言うと、敷地境界線から5mの範囲には建築できないって書いてあるよ。



👉 ここで抑えておきたいのは、敷地を細かく切るほど、後退距離の影響が増幅するという点です。
第5章|要注意|複数の客室棟を計画する場合のトラブル


それではここで問題です。
下記の場合、用途上可分でしょうか?それとも不可分でしょうか?
<計画条件>

・宿泊施設として複数の客室棟を計画予定。
・チェックイン機能の共用棟で受付後、宿泊棟の別棟に移動してそれぞれが宿泊をする。
・共用棟には、リネン庫/厨房/多目的WC/管理人室を計画している。

答えは、、、

と判断されることが多いです。私が実務で協議をした結果、上記の判定になりました。
これ実は、当初の判定が覆ったと言う経緯があります。
私自身、自然公園法の特別地域で宿泊施設を計画した際、地方環境事務所との協議では当初「用途上不可分」という整理で合意していました。しかし、その後環境省本省からの指摘により「用途可分」と判断が覆る事態が発生しました。
結果として
- 敷地の再設定
- 配置計画の全面見直し
が必要になりました。以降、同様の施設形態については「用途可分として扱う」よう明確な指導を受けています。
※実務では必ず所管行政と事前協議を行ってください。
第6章|用途可分になった場合の現実的な対策

用途可分と判断された場合、敷地は用途可分の建物毎に個別に設定され、
- 各敷地ごとに外壁後退
- 建物配置の自由度が大幅に低下
という影響が出ます。
有効な打開策:自然公園法の公園事業の採用
自然公園法には、許可基準の他に「公園事業」と言う認可制度がございます。これを適用することで、
- 外壁後退規制の適用除外による、配置計画の柔軟性確保することができます。
が可能になるケースがあります。事業スキームの検討も、設計者の重要な役割です。

外壁後退に関する規制が外れると言うのは、下記の整理表でも明らかだね!


おわりに

自然公園法における敷地の考え方は、建築基準法や都市計画法とは根本的に異なります。特に、
- 用途可分/不可分の判断
- 敷地の切り方
- 外壁後退規制
は、計画の成否を左右します。敷地は線ではなく、戦略である。その意識を持つことが、自然公園法案件では何より重要です。
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