
「寒冷地や積雪が多い地域での型枠工事の監理の留意点」について教えて下さい!

地域毎の特性を把握して計画に落とし込むことが重要だよね!
『寒冷地での型枠工事の留意事項について』を解説しよう!
はじめに

寒冷地で行う型枠工事では、凍害や結露、低温障害といった環境要因が大きなトラブルの原因になります。地盤の凍上による支保工の変形、型枠内部の雪氷による打設不良、そして断熱材の不備による結露や熱橋など、見落とせないリスクが多く存在します。
本記事では、冬期施工における「支保工」「型枠」「断熱材打込み」「複合板」「デッキ型枠」などの各工程で注意すべきポイントと対策を、わかりやすく整理して解説します。

第1章 支保工の設置と凍上対策

地盤が凍結すると膨張(凍上)が起こり、型枠や支保工が持ち上がる危険があります。この章では、支保工を安全に設置するための対策を解説します。
寒冷地で支保工を設置する際、地盤面に直接設置するのは避けることが鉄則です。凍上によって支柱が押し上げられると、型枠が変形しコンクリート精度に影響します。
対策としては、次のような方法が有効です。
- 支保工を直接地面に設置しない。
- 設置が必要な場合は、支持地盤部分を砂や切込み砂利に置き換えることで凍上を防止する。
第2章 型枠内の雪氷対策

雪や氷が型枠内に残った状態でコンクリートを打設すると、空隙が発生し、仕上がり精度が著しく低下します。
施工時には、打設前に型枠内部を必ず確認し、付着した雪や氷を完全に除去することが必要です。わずかな残留でも仕上げや構造性能に影響を与えるため、事前点検を徹底しましょう。
スポンサーリンク第3章 断熱材打込み時の施工管理

断熱材の打込みは、結露防止や熱橋対策に直結する繊細な工程です。固定不良や隙間の発生は、建物全体の断熱性能を大きく損なう原因となります。
主な対策は以下の通りです。
- 断熱材はジョイナーでしっかり型枠に固定する。
- セパレーターが熱橋とならないよう、型枠解体後に軸脚を撤去し、現場発泡ウレタンで充填する。
- ジョイント部にセメントペーストが入り込んだ場合は完全除去し、断熱連続性を確保する。
- 欠けや取り合い部、サッシまわりなどは発泡ウレタンで補修する。
- コンクリートの増し打ち時は、断熱材端部近くにセパレーターを設置する。
- 鉄筋スペーサーは、断熱材がめり込まないようプレート付きタイプを使用する。
- 隅角部はプラスチックピースなどで確実に重ね固定し、梁型ではセパレーター位置に注意する。
- 型枠解体時には、断熱材の損傷防止を最優先に行う。
これらを徹底することで、断熱欠損や結露の発生を防ぎ、長期的な断熱性能を確保できます。
スポンサーリンク第4章 複合板の施工と落下防止策

寒冷地では結露や温度差によって複合板が剥離・変形することがあるため、確実な固定と目地処理が求められます。
施工時の注意点は以下の通りです。
- スラブ下で複合板を打ち込む際は、ジョイナーとスラブ筋をステンレス線で結束し、落下を防止する。
- 柱側面などでは、複合板端部にセメントペーストが流入しやすいため、目地棒やシール材を活用して侵入を防ぐ。
第5章 デッキ型枠の断熱と結露防止

デッキ型枠を使用する現場では、リブ内の空洞部が内部結露を起こすケースがあります。これを防ぐためには、形状選定と断熱計画が重要です。
- 現場発泡ウレタンで外周部を巻き返す場合は、空洞のない製品を使用する。
- 最上階では、デッキ型枠下の断熱よりも外断熱の採用を検討することで、発泡材使用量を抑えつつ効率的に断熱性能を確保できる。
第6章 その他の施工上の注意点

型枠工事に付随する断熱関連のディテールも、寒冷地では見落とせません。熱橋や断熱欠損を防ぐ工夫が必要です。
代表的な留意点は次の通りです。
- スラブ下断熱材に天井インサートを設ける場合は、熱橋を防ぐために樹脂製インサートを使用。
- 吊りボルトには150mm以上の断熱巻き返し(現場発泡ウレタン)を施す。
- 屋上外断熱では、RD・機械基礎などで断熱が切れるため、スラブ下で補強断熱を行う。
- 現場発泡ウレタンは低温下で発泡が不十分になりやすいため、施工時に室内を採暖または器具を加温しておく。
おわりに

型枠工事は、単なる「コンクリートを形づくる工程」ではなく、建物の断熱・防露性能を左右する重要なフェーズです。寒冷地では特に、凍上や結露といった自然現象への理解と、現場ごとの対策が欠かせません。
地盤・温度・湿度といった環境条件を考慮し、「予防的な施工計画」を立てることが、長寿命で快適な建築を支える第一歩です。
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積雪時の設計で参考になる書籍としては、下記を推奨します。非常に細部までまとめられていますので、寒冷地での計画に関わる人の必携本です。