【寒冷地/積雪地】絶対に設計時にチェックすべき5つの計画上の注意点

建築知識
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一級建築士 / DJ / ブロガー / TOEIC815 / 設計事務所勤務。建築・不動産関連及び宿泊事業に関するサイト「アーキクエスト」の運営者。JIA優秀賞受賞/元組織設計事務所勤務/学生コンペ受賞/米国バックパッカー

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見習い女の子
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「寒冷地や積雪が多い地域での建築設計の計画上の留意点」について教えて下さい!

建築戦士スー
建築戦士スー

地域毎の特性を把握して計画に落とし込むことが重要だよね
寒冷地での計画上の留意事項について』を解説しよう!

はじめに

寒冷地の番人が現れた
寒冷地の番人が現れた

雪国における建築計画は、一般的な設計とは異なる課題が数多く存在します。積雪や吹きだまり、凍害といった自然環境への配慮が欠けると、建物の安全性や快適性に大きな影響を及ぼします

本記事では、積雪寒冷地で想定される計画上の主要な問題点と解決策についてご紹介します。

記事のレベル
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第1章 計画段階での雪処理の考え方

魔物との決戦では雪の地形を読み取ることが必須スキルとなる
魔物との決戦では雪の地形を読み取ることが必須スキルとなる

寒冷地での設計では、最初に「雪をどう処理するか」を決めておくことが重要です。除排雪方法が不明確なまま建築を進めると、隣地への越境や雪害リスクが高まります。

問題事象:雪(積雪・落雪・吹きだまり)の処理が困難になる。

  • 対応策
  • 計画初期に除排雪の方法を確定する
  • 雪処理を敷地外に頼らない
  • 建物配置や形状に雪処理の計画を組み込む(堆雪スペース、融雪設備の確保)
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第2章 建物配置と敷地利用の工夫

効率的に集約された建物
効率的に集約された建物

建物の置き方次第で、雪の吹きだまりや越境リスクは大きく変わります。特に狭い敷地では、境界との距離を確保することが課題になります。

問題事象①:堆雪や落雪によって、敷地外へ雪がはみ出す。

対応策:余裕のある配置計画、境界との距離確保、融雪設備やフェンスの導入。


問題事象②:建物を分散配置すると低層部が雪で埋もれる。

対応策:建物を集約配置し、隣棟間隔を確保。無落雪屋根を採用し、日照条件も配慮する。

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第3章 屋根形状と落雪対策

雪が自然落下する円形の屋根
雪が自然落下する円形の屋根

屋根のデザインは積雪地での安全性を左右します。落雪やつららによる事故を防ぐには、形状の工夫と設備対策が欠かせません。

問題事象①:落雪や落氷による人や建物の被害。

対応策:無落雪屋根、雪止めやフェンス、進入禁止策、庇防止策、屋根勾配と軒高を考慮。


問題事象②:複雑な形状の建物は損傷しやすい。

対応策:シンプルな屋根・平面形状を基本とする。


問題事象③:風上側外壁で吹きだまりが発生。

対応策:風向を調査し、防風板を設置。出入口は避ける。


問題事象④:風上側外壁は温度低下し凍害を受けやすい。

対応策:丸みをもたせ、突出を避けた外形とする。


問題事象⑤:ポーチや袖壁など突き出し部分が凍上しやすい。

対応策:凍結深度以下の基礎、建物本体との一体化。

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第4章 通路と出入口の確保

宝の周りは、空地が確保されている
宝の周りは、空地が確保されている

積雪が多い地域では、通路や出入口の使いやすさが冬季の体験に直結します。配置や庇、防滑仕上げなどの工夫で安全性を高める必要があります。

問題事象①:敷地内通路が雪で埋まり通行不能。

対応策:方位や風向を考慮した配置、屋根や融雪設備を設け、除雪体制を整える。


問題事象②:風上側の出入口は雪や風の吹き込みが激しい。

対応策:風下側に配置、風除室や防風板を設置。


問題事象③:出入口上部からの落雪・落氷。

対応策:庇やポーチ屋根を設け、雪庇防止策を導入。


問題事象④:雪や凍結で建具が開閉不能。

対応策:大きめの庇、防風板、融雪設備、凍結を防ぐ納まりにする。


問題事象⑤:玄関や風除室の床が滑りやすい。

対応策:粗面仕上げの床材、適切な排水計画。

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第5章 その他の特別な配慮

特別な氷の結晶を採取しに行く勇者
特別な氷の結晶を採取しに行く勇者

雪害や凍害に加え、中庭や屋根上作業、設備配管といった特殊な条件にも備えが必要です。

問題事象①:中庭が雪で埋まり除雪困難。

対応策:雪処理方法を計画し、排水・融雪設備を導入。


問題事象②:屋根雪下ろし作業の危険。

対応策:命綱用のフックを設置。


問題事象③:PS(パイプスペース)配管が凍結。

対応策:外周部を避け内部に配置。やむを得ず外周部に設ける場合はヒーターを導入。


問題事象④:北側や風上側で結露が発生しやすい。

対応策:水蒸気発生室や収納を配置しない。

おわりに

寒冷地の知識を手にいれた
寒冷地の知識を手にいれた

積雪や寒風の厳しい地域では、設計段階から雪害や凍害に対する十分な配慮が欠かせません。小さな工夫が建物の耐久性や利用者の安全を大きく左右します。今回ご紹介した留意点を押さえれば、寒冷地でも安心して暮らせる建築を実現できるでしょう。

本記事のサマリー

カテゴリー問題原因対応策
計画全般雪処理ができない雪害雪処理方法の確定、堆雪・融雪設備の計画
配置敷地外へ雪が越境する雪害配置の余裕、境界距離確保、融雪設備
配置分散配置で低層部が雪に埋まる雪害集約配置、無落雪屋根、隣棟間隔
建物形状落雪・落氷による被害雪害・凍害無落雪屋根、雪止め、進入制限
建物形状複雑形状で損傷しやすい雪害シンプルな形状計画
建物形状吹きだまりが生じやすい雪害風向調査、防風板、入口回避
建物形状風上側外壁の凍害凍害丸みをもたせ突出を避ける
建物形状突出部分の凍上凍害凍結深度以下の基礎、一体化構造
通路通路が雪で埋まり使用不能雪害屋根・融雪設備、風向考慮配置
出入口風上側の吹き込み雪害配置工夫、防風板・風除室
出入口出入口上部の落雪・落氷雪害庇・ポーチ屋根、雪庇防止策
出入口建具が開閉不能雪害・凍害大庇、防風板、融雪設備
出入口玄関床が滑りやすい雪害・凍害防滑仕上げ、排水処理
その他中庭の除雪困難雪害雪処理方法の計画、融雪設備
その他屋根雪下ろしの危険雪害命綱フック設置
その他配管凍結雪害内部配置、ヒーター設置
その他北側・風上側で結露結露発生源となる室を避ける配置

寒冷地での計画に関してのおすすめ書籍

勇者を救う救世主が残した魔本
勇者を救う救世主が残した魔本

積雪時に参考になる書籍としては、下記を推奨します。非常に細部までまとめられていますので、寒冷地での計画に関わる人の必携本です。

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