
「寒冷地や積雪が多い地域での監理上の防水工事の留意点」について教えて下さい!

地域毎の特性を把握して計画に落とし込むことが重要だよね!
『寒冷地での防水工事の留意事項について』を解説しよう!
はじめに

寒冷地や積雪地域では、防水工事における低温・凍害・雪害の影響が非常に大きく、通常の地域とは異なる施工管理が求められます。特に、下地や材料の乾燥不良、低温時の接着不良、凍結による剥離などは、施工後の漏水トラブルの主要因となるため、計画段階からの慎重な対応が不可欠です。
本記事では、現場での具体的な留意点を「施工条件」「下地の乾燥」「材料別対応策」などの観点から整理します。寒冷期に防水工事を予定している設計者・監理者の方は、ぜひチェックしてみてください。

第1章 一般事項|寒冷地での防水工事の基本方針

寒冷地での防水工事では、まず「降雪」や「低温」に耐えられる工法と養生方法を採用することが大前提です。
地域の気候条件に応じた材料選定と、現場状況に合わせた施工スケジュールの調整が欠かせません。
- 降雪や低温環境に対応できる工法を採用する
- 施工時期を厳冬期に重ねないよう計画する
これらを前提に、次章からは各工程ごとの具体的な対策を見ていきます。
スポンサーリンク第2章 施工条件|気温・天候・時期の判断基準

防水工事は、乾燥した安定した環境下で行うことが原則です。降雪直後や強風時、気温が氷点下となる日は施工を避けましょう。
- 降雪後など、施工面が十分に乾燥していない場合は作業を行わない
- 月平均気温が氷点下になる期間は防水工事を計画しない
- 気温が−5℃以下(塗膜・シート防水では5℃以下)の場合は施工を中止
- やむを得ず施工する際は、保温養生や採暖設備で温度管理を行う
気温条件を軽視したまま施工を進めると、後に接着不良・膨れ・剥離などの重大な欠陥を招く恐れがあります。
スポンサーリンク第3章 下地の乾燥|凍害を防ぐための最重要ポイント

防水層の密着性を左右するのが「下地の乾燥」です。防水工事後は下地の乾燥が難しくなるため、事前の含水率確認が重要です。
- 含水率が8%を超える場合は施工を行わない
- 下地が乾燥しない場合は、養生上屋を設けて加熱機器で強制乾燥させる
- 露出防水では脱気装置を設置し、内部の水蒸気を逃がす
乾燥不足のまま防水層を施工すると、凍結による浮き・剥離が発生するため注意が必要です。
スポンサーリンク第4章 プライマーの乾燥|低温時の時間管理に注意

プライマーは、防水層と下地を確実に密着させるための接着促進剤です。しかし、低温下では乾燥に時間がかかり、表面が完全に乾かないまま次工程に進むと、密着不良の原因になります。
- 気温や下地の種類に応じた乾燥時間の確保が必要
- 表面がベタつく状態で次工程に進まない
特に冬季は、時間的余裕を持った施工計画が品質確保の鍵となります。
スポンサーリンク第5章 材料選定と構造対策|凍害・低温に耐える仕様づくり

アスファルト・押えコンクリート
- アスファルトはJIS K2207に規定された防水工事用4種を使用
- 押えコンクリートは厚さ80mm以上・6Φ@100×100の溶接金網入り・金ゴテ押え
- 伸縮目地の幅は25mm以上
- 薄塗り補修は凍害で剥離の恐れがあるため避ける(やむを得ない場合は補修後にウレタン塗膜防水を施工)
- 水抜き穴付きルーフドレンを使用し、ワイヤーマットで養生して穴の閉塞を防ぐ
- 凍害に強い「砂利押え」も有効な選択肢
第6章 防水工法別の注意点|シート防水・塗膜防水

シート防水(ゴム系・塩ビ系)
- 低温による接着不良・硬化遅延を防ぐため、5℃以上の作業環境を確保
- 硬化不良が懸念される場合は、採暖や加温で材料温度を管理する
塗膜防水(溶剤型・エマルジョン型)
- 溶剤型:2℃以上、エマルジョン型:5℃以上の環境で施工
- 低温下では造膜が遅れ、硬化不良や膜厚不足を引き起こすため、温度管理を徹底する
おわりに

防水工事は「見えなくなる工事」でありながら、建物全体の耐久性を左右する重要な工程です。特に寒冷地では、気温・湿度・下地の乾燥状態が仕上がりを大きく左右します。「気温が低いからこそ、計画と準備でカバーする」この意識を持つことで、施工後の不具合を防ぎ、長期的に安定した防水性能を確保することができます。
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積雪時の設計で参考になる書籍としては、下記を推奨します。非常に細部までまとめられていますので、寒冷地での計画に関わる人の必携本です。