避難階段って?いくつか種類があるみたいだけど・・・
避難階段には、『屋内避難階段』と『屋外避難階段』と『特別避難階段』があるよ!
概要と緩和条件を解説しよう。
はじめに
避難階段は、建物での安全な避難を確保するための生命線です。火災や地震などの非常時には、多くの命を守る重要な役割を果たします。
本記事では、建築基準法で定められた避難階段の定義や種類、そしてその構造について詳しく解説します。特に、屋内避難階段・屋外避難階段・特別避難階段という3つのタイプに焦点を当て、それぞれの特徴や設置基準を分かりやすく紹介していきます。
スポンサーリンク第1章 避難階段って?
避難階段は、防火性能を強化した直通階段のことを指します。災害時に多くの人々が迅速かつ安全に避難できるよう、地上へ直接通じる構造になっています。
避難階段は、3種類ある!
建築基準法では以下の3つに分類されています。
1:屋内避難階段
2:屋外避難階段
3:特別避難階段
避難階段は、『直通階段』を兼ねるよ!
下記のような包含関係にあるから覚えておいて!
高層建築物と避難階段の重要性
高層建築物では、災害時に階段が使えなくなると、救助活動が困難になります。そのため、耐火構造の壁や防火扉で階段室を区画し、煙や火炎の侵入を防ぐ設計が必須です。
スポンサーリンク第2章 避難階段が必要な建築物について
避難階段の設置が必要な建物とは?
下記条件のいずれかに該当する場合、『避難階段』を設置する必要があります。
・5階建て以上の建築物
・地下2階以下の建築物
・3階以上の階を物品販売店舗とした建築物
設置不要になる2つの緩和条件について
緩和条件1:下記条件に全て該当する場合、『避難階段』は設置不要です。
・主要構造部が準耐火構造、または不燃材料で造られている建築物
・5階以上の階、または地下2階以下の階の床面積の合計が100㎡以下である場合
緩和条件2:下記条件に全て該当する場合、『避難階段』は設置不要です。
・主要構造部が耐火構造である建築物
・床面積の合計100㎡(共同住宅の住戸にあつては200㎡)以内ごとに耐火構造の床・壁・特定防火設備で区画されている場合
第3章 特別避難階段が必要な建築物について
特別避難階段は、避難階段と比べてより厳しい条件を満たす必要があります。以下条件をいずれか満たす場合、『特別避難階段』の設置が必要となります。
・15階建て以上の建築物
・地下3階以下の建築物
・5階以上の階を物品販売店舗とした建築物
建築基準法を見てみよう!
(避難階段の設置)
第百二十二条 建築物の五階以上の階(主要構造部が準耐火構造である建築物又は主要構造部が不燃材料で造られている建築物で五階以上の階の床面積の合計が百平方メートル以下である場合を除く。)又は地下二階以下の階(主要構造部が準耐火構造である建築物又は主要構造部が不燃材料で造られている建築物で地下二階以下の階の床面積の合計が百平方メートル以下である場合を除く。)に通ずる直通階段は次条の規定による避難階段又は特別避難階段とし、建築物の十五階以上の階又は地下三階以下の階に通ずる直通階段は同条第三項の規定による特別避難階段としなければならない。ただし、特定主要構造部が耐火構造である建築物(階段室の部分、昇降機の昇降路の部分(当該昇降機の乗降のための乗降ロビーの部分を含む。)及び廊下その他の避難の用に供する部分で耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画されたものを除く。)で床面積の合計百平方メートル(共同住宅の住戸にあつては、二百平方メートル)以内ごとに耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備(直接外気に開放されている階段室に面する換気のための窓で開口面積が〇・二平方メートル以下のものに設けられる法第二条第九号の二ロに規定する防火設備を含む。)で区画されている場合においては、この限りでない。
2 三階以上の階を物品販売業を営む店舗の用途に供する建築物にあつては、各階の売場及び屋上広場に通ずる二以上の直通階段を設け、これを次条の規定による避難階段又は特別避難階段としなければならない。
3 前項の直通階段で、五階以上の売場に通ずるものはその一以上を、十五階以上の売場に通ずるものはその全てを次条第三項の規定による特別避難階段としなければならない。
第4章 避難階段の種類と構造について
(1) 屋内避難階段
(避難階段及び特別避難階段の構造)
第百二十三条 屋内に設ける避難階段は、次に定める構造としなければならない。
一 階段室は、第四号の開口部、第五号の窓又は第六号の出入口の部分を除き、耐火構造の壁で囲むこと。
二 階段室の天井(天井のない場合にあつては、屋根。第三項第四号において同じ。)及び壁の室内に面する部分は、仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ること。
三 階段室には、窓その他の採光上有効な開口部又は予備電源を有する照明設備を設けること。
四 階段室の屋外に面する壁に設ける開口部(開口面積が各々一平方メートル以内で、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備ではめごろし戸であるものが設けられたものを除く。)は、階段室以外の当該建築物の部分に設けた開口部並びに階段室以外の当該建築物の壁及び屋根(耐火構造の壁及び屋根を除く。)から九十センチメートル以上の距離に設けること。ただし、第百十二条第十六項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
五 階段室の屋内に面する壁に窓を設ける場合においては、その面積は、各々一平方メートル以内とし、かつ、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備ではめごろし戸であるものを設けること。
六 階段に通ずる出入口には、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で第百十二条第十九項第二号に規定する構造であるものを設けること。この場合において、直接手で開くことができ、かつ、自動的に閉鎖する戸又は戸の部分は、避難の方向に開くことができるものとすること。
七 階段は、耐火構造とし、避難階まで直通すること。
(2) 屋外避難階段
(避難階段及び特別避難階段の構造)
第百二十三条 屋内に設ける避難階段は、次に定める構造としなければならない。
(中略)
2 屋外に設ける避難階段は、次に定める構造としなければならない。
一 階段は、その階段に通ずる出入口以外の開口部(開口面積が各々一平方メートル以内で、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備ではめごろし戸であるものが設けられたものを除く。)から二メートル以上の距離に設けること。
二 屋内から階段に通ずる出入口には、前項第六号の防火設備を設けること。
三 階段は、耐火構造とし、地上まで直通すること。
(3) 特別避難階段
(避難階段及び特別避難階段の構造)
第百二十三条 屋内に設ける避難階段は、次に定める構造としなければならない。
(中略)
3 特別避難階段は、次に定める構造としなければならない。
一 屋内と階段室とは、バルコニー又は付室を通じて連絡すること。
二 屋内と階段室とが付室を通じて連絡する場合においては、階段室又は付室の構造が、通常の火災時に生ずる煙が付室を通じて階段室に流入することを有効に防止できるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。
三 階段室、バルコニー及び付室は、第六号の開口部、第八号の窓又は第十号の出入口の部分(第百二十九条の十三の三第三項に規定する非常用エレベーターの乗降ロビーの用に供するバルコニー又は付室にあつては、当該エレベーターの昇降路の出入口の部分を含む。)を除き、耐火構造の壁で囲むこと。
四 階段室及び付室の天井及び壁の室内に面する部分は、仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ること。
五 階段室には、付室に面する窓その他の採光上有効な開口部又は予備電源を有する照明設備を設けること。
六 階段室、バルコニー又は付室の屋外に面する壁に設ける開口部(開口面積が各々一平方メートル以内で、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備ではめごろし戸であるものが設けられたものを除く。)は、階段室、バルコニー又は付室以外の当該建築物の部分に設けた開口部並びに階段室、バルコニー又は付室以外の当該建築物の部分の壁及び屋根(耐火構造の壁及び屋根を除く。)から九十センチメートル以上の距離にある部分で、延焼のおそれのある部分以外の部分に設けること。ただし、第百十二条第十六項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
七 階段室には、バルコニー及び付室に面する部分以外に屋内に面して開口部を設けないこと。
八 階段室のバルコニー又は付室に面する部分に窓を設ける場合においては、はめごろし戸を設けること。
九 バルコニー及び付室には、階段室以外の屋内に面する壁に出入口以外の開口部を設けないこと。
十 屋内からバルコニー又は付室に通ずる出入口には第一項第六号の特定防火設備を、バルコニー又は付室から階段室に通ずる出入口には同号の防火設備を設けること。
十一 階段は、耐火構造とし、避難階まで直通すること。
十二 建築物の十五階以上の階又は地下三階以下の階に通ずる特別避難階段の十五階以上の各階又は地下三階以下の各階における階段室及びこれと屋内とを連絡するバルコニー又は付室の床面積(バルコニーで床面積がないものにあつては、床部分の面積)の合計は、当該階に設ける各居室の床面積に、法別表第一(い)欄(一)項又は(四)項に掲げる用途に供する居室にあつては百分の八、その他の居室にあつては百分の三を乗じたものの合計以上とすること。
第5章 避難階段の設置位置について
避難階段は、居室からの歩行距離が建築基準法で定められた範囲内であることが必要です。『歩行距離』については、下記記事にて解説をしています。是非正しい知識をつけていきましょう。
(敷地内の通路)
第百二十八条 敷地内には、第百二十三条第二項の屋外に設ける避難階段及び第百二十五条第一項の出口から道又は公園、広場その他の空地に通ずる幅員が一・五メートル(階数が三以下で延べ面積が二百平方メートル未満の建築物の敷地内にあつては、九十センチメートル)以上の通路を設けなければならない。引用:建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)
おわりに
避難階段は、設計の初期段階から慎重に計画しなければならない重要な要素です。災害時に命を守る避難経路として、その役割を正確に理解し、法規を遵守した設置が求められます。本記事を通じて、屋内避難階段・屋外避難階段・特別避難階段の違いや注意点についてイメージをつかんでいただけたのではないでしょうか?
安全で快適な建物づくりを目指すためには、正しい知識と対応が欠かせません。これを機に、避難階段の重要性を再確認し、設計に活かしていただければ幸いです。
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