建築基準法施行令第117条2項一号を適用する場合、区画貫通処理の規定を教えて欲しいです!
『建築基準法』と『建築物の防火避難規定の解説』を基に、わかりやすく解説しよう!
はじめに
建築物の安全性を保つために、防火区画を貫通する設備(風道、管、ケーブルなど)についての処理方法は非常に重要です。建築基準法施行令第117条第2項一号では、特定の条件下で防火区画を貫通する際に必要な対応について規定しています。
本記事では、換気ダクトや給排水管、電気ケーブルなどが防火区画を貫通する場合に求められる対応について、法令を基に詳しく解説します。実際の設計や施工においてどのような対応が求められるのか、具体的な例も交えながら確認していきましょう。
スポンサーリンク第1章 令第117条第2項一号って?
令第117条第2項一号は、区画等で分離することで『別の建築物』として扱える条文だね!
早速、法文でおさらいしていこう!
第二節 廊下、避難階段及び出入口
(適用の範囲)
第百十七条 この節の規定は、法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、前条第一項第一号に該当する窓その他の開口部を有しない居室を有する階又は延べ面積が千平方メートルをこえる建築物に限り適用する。
2 次に掲げる建築物の部分は、この節の規定の適用については、それぞれ別の建築物とみなす。
一 建築物が開口部のない耐火構造の床又は壁で区画されている場合における当該床又は壁により分離された部分
二 建築物の二以上の部分の構造が通常の火災時において相互に火熱又は煙若しくはガスによる防火上有害な影響を及ぼさないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものである場合における当該部分
『区画して分離とみなす』っていうのは分かるけど、建築設備が貫通する場合(区画を跨ぐなど)って貫通処理すれば問題ないのかな?
建築設備の貫通については、『建築物の防火避難規定の解説』で正式に解説がされているよ!
次章では、その内容に触れていきます!
第2章 令第117条第2項一号の区画を建築設備等が貫通する時の注意点
建築基準法施行令第117条第2項一号の規定に基づき、異なる建築物と見なされる耐火構造の床や壁を、換気・暖房・冷房設備の風道や給水管、配電管などの設備が貫通する際(ただし、風道の貫通部付近に吹き出し口がある場合は除く)には、以下の措置が講じられているものに限り、問題ないものと判断されます。
①『風道』について
風道は、不燃材料で造る必要があります。建築基準法施行令第112条第21項各号に準拠する構造のダンパーを設けなければいけません。『昭49建告第1579号』は、適用しません。
スポンサーリンク(窓その他の開口部を有しない居室等)
第百十一条 法第三十五条の三(法第八十七条第三項において準用する場合を含む。)の規定により政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、次の各号のいずれかに該当する窓その他の開口部を有しない居室(避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室その他の居室であつて、当該居室の床面積、当該居室からの避難の用に供する廊下その他の通路の構造並びに消火設備、排煙設備、非常用の照明装置及び警報設備の設置の状況及び構造に関し避難上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合するものを除く。)とする。
(中略)
21 換気、暖房又は冷房の設備の風道が準耐火構造の防火区画を貫通する場合(国土交通大臣が防火上支障がないと認めて指定する場合を除く。)においては、当該風道の準耐火構造の防火区画を貫通する部分又はこれに近接する部分に、特定防火設備(法第二条第九号の二ロに規定する防火設備によつて区画すべき準耐火構造の防火区画を貫通する場合にあつては、同号ロに規定する防火設備)であつて、次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを国土交通大臣が定める方法により設けなければならない。
一 火災により煙が発生した場合又は火災により温度が急激に上昇した場合に自動的に閉鎖するものであること。
二 閉鎖した場合に防火上支障のない遮煙性能を有するものであること。引用:建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)より
②『管』について
建築基準法施行令第129条の2の4第1項第七号に準拠した構造とする必要があります。『平12建告第1422号』の基準の遵守も必要です。尚、建築基準法施行令第112条第20項の規定に準じてすき間をモルタル等で埋める必要があります。
スポンサーリンク第一節の二 給水、排水その他の配管設備
(給水、排水その他の配管設備の設置及び構造)
第百二十九条の二の四 建築物に設ける給水、排水その他の配管設備の設置及び構造は、次に定めるところによらなければならない。
(中略)
七 給水管、配電管その他の管が、第百十二条第二十項の準耐火構造の防火区画、第百十三条第一項の防火壁若しくは防火床、第百十四条第一項の界壁、同条第二項の間仕切壁又は同条第三項若しくは第四項の隔壁(ハにおいて「防火区画等」という。)を貫通する場合においては、これらの管の構造は、次のイからハまでのいずれかに適合するものとすること。ただし、一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で建築物の他の部分と区画されたパイプシャフト、パイプダクトその他これらに類するものの中にある部分については、この限りでない。
イ 給水管、配電管その他の管の貫通する部分及び当該貫通する部分からそれぞれ両側に一メートル以内の距離にある部分を不燃材料で造ること。
ロ 給水管、配電管その他の管の外径が、当該管の用途、材質その他の事項に応じて国土交通大臣が定める数値未満であること。
ハ 防火区画等を貫通する管に通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後二十分間(第百十二条第一項若しくは第四項から第六項まで、同条第七項(同条第八項の規定により床面積の合計二百平方メートル以内ごとに区画する場合又は同条第九項の規定により床面積の合計五百平方メートル以内ごとに区画する場合に限る。)、同条第十項(同条第八項の規定により床面積の合計二百平方メートル以内ごとに区画する場合又は同条第九項の規定により床面積の合計五百平方メートル以内ごとに区画する場合に限る。)若しくは同条第十八項の規定による準耐火構造の床若しくは壁又は第百十三条第一項の防火壁若しくは防火床にあつては一時間、第百十四条第一項の界壁、同条第二項の間仕切壁又は同条第三項若しくは第四項の隔壁にあつては四十五分間)防火区画等の加熱側の反対側に火炎を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じないものとして、国土交通大臣の認定を受けたものであること。(防火区画)
第百十二条 法第二条第九号の三イ若しくはロのいずれかに該当する建築物(特定主要構造部を耐火構造とした建築物を含む。)又は第百三十六条の二第一号ロ若しくは第二号ロに掲げる基準に適合する建築物で、延べ面積(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の二分の一に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)が千五百平方メートルを超えるものは、床面積の合計(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の二分の一に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)千五百平方メートル以内ごとに一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備(第百九条に規定する防火設備であつて、これに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後一時間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。以下同じ。)で区画しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物の部分でその用途上やむを得ないものについては、この限りでない。
(中略)
20 給水管、配電管その他の管が第一項、第四項から第六項まで若しくは第十八項の規定による一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁、第七項若しくは第十項の規定による耐火構造の床若しくは壁、第十一項本文若しくは第十六項本文の規定による準耐火構造の床若しくは壁又は同項ただし書の場合における同項ただし書のひさし、床、袖壁その他これらに類するもの(以下この条において「準耐火構造の防火区画」という。)を貫通する場合においては、当該管と準耐火構造の防火区画との隙間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければならない。引用:建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)より
③『ケーブルなど』について
建築基準法施行令第112条第20項に準ずる構造とし、防火上支障のないような仕様とする必要があります。
(防火区画)
第百十二条 法第二条第九号の三イ若しくはロのいずれかに該当する建築物(特定主要構造部を耐火構造とした建築物を含む。)又は第百三十六条の二第一号ロ若しくは第二号ロに掲げる基準に適合する建築物で、延べ面積(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の二分の一に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)が千五百平方メートルを超えるものは、床面積の合計(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の二分の一に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)千五百平方メートル以内ごとに一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備(第百九条に規定する防火設備であつて、これに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後一時間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。以下同じ。)で区画しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物の部分でその用途上やむを得ないものについては、この限りでない。
(中略)
20 給水管、配電管その他の管が第一項、第四項から第六項まで若しくは第十八項の規定による一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁、第七項若しくは第十項の規定による耐火構造の床若しくは壁、第十一項本文若しくは第十六項本文の規定による準耐火構造の床若しくは壁又は同項ただし書の場合における同項ただし書のひさし、床、袖壁その他これらに類するもの(以下この条において「準耐火構造の防火区画」という。)を貫通する場合においては、当該管と準耐火構造の防火区画との隙間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければならない。引用:建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)より
建築基準法施行令第117条第2項一号で定める開口部については、通常、風道などの貫通部は近くに吹き出し口がある場合を除き、開口部には該当しないと考えられます。また、施行令第5章第2節は避難に関する規定であるため、避難に支障をきたさないための措置(延焼防止や煙の流入防止)が求められ、煙感知機能を備えたダンパーの設置などが必要です。さらに、ケーブル類の貫通部分に関しても、同様の考え方から、一般的な防火区画以上の対策を行えば問題ないと考えられます。
第3章 「建築物の防火避難規定の解説」を手に入れよう!
建築基準法や国土交通省の告示や通達を見ても、
本記事に関する情報は、載ってニャイよね?
そうなんだよ。『建築物の防火避難規定の解説』にしか載っていないんだ。
つまりこれがないと、設計が行き詰まってしまう場合があるんだ。
設計者は必ず購入すべき本です!少し高いけど、ずっと使えるから持っておくべきだよ!
おわりに
防火区画を貫通する建築設備の処理について、建築基準法施行令第117条第2項が定める条件と措置を適切に理解することは、安全な建物設計に不可欠です。適切な材料や構造の選定と、法規に準拠した設置方法を守ることで、火災時の被害を最小限に抑えることが可能です。建築設備が防火区画を貫通する場合は、ここで紹介した各対応策をしっかりと踏まえ、万が一の際にも安心できる設備計画を行いましょう。
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