鉄骨造を設計しているんだけど、
床の納まりがわからなくて。。。
鉄骨造の床はいくつか工法があるよ!
中でも採用の多い合成スラブ工法と、
現場でのチェックポイントを中心に解説しよう!
はじめに
鉄骨造の設計において、床の納まりは非常に重要な要素です。特に合成スラブ工法は、施工性と構造的な効率性を兼ね備え、多くのプロジェクトで採用されています。本記事では、設計者が知っておくべき合成スラブ工法の5つの要点について解説し、現場で役立つチェックポイントも紹介します。これから鉄骨造の設計を進める上で、ぜひ参考にしてください。
スポンサーリンク第1章 鉄骨造の代表的な5種類の床の工法
この章では、『鉄骨造の床の工法にはどのような種類があるか?』代表的な5種類をご紹介します。本記事のメインの解説は、『①合成スラブ工法』となります。②から⑤の工法については、説明を割愛させて頂きます。ご理解のほどよろしくお願いします。
①合成スラブ工法<今回解説はコレ!>
鉄骨造で最も代表的な床の工法です。凹凸状のデッキプレートと呼ばれる部材を梁の上に敷き流し、上からコンクリートを打設します。「合成スラブ工法」という名前の通り、デッキプレートとコンクリートが一体的な構造体となって水平剛性を有します。工事の手間も大きく省くことができ、頭付きスタッドなどを併用することで、支保工を使わなくてもコンクリートの打設が可能です。
スポンサーリンク②ALC板工法
床にALCパネルを使用する工法です。耐火性能を有する為、耐火構造とする場合でも採用が可能です。
③キーストンプレート型枠工法
キーストンプレートを型枠にスラブを形成する工法です。キーストーンプレートとコンクリートは、構造体として一体で見ることができない為、コンクリートの荷重をキーストンプレート側で見てあげる必要があります。
<現場の声>
意匠を優先したい場合など、天井表しで使われることが多いです。
④Cチャン根太工法
木根太から下をCチャンで計画する納まりです。鉄骨工事と木工事の工事区分の調整が必須となります。
⑤木根太工法
鉄骨の構造体以降は、木造で仕上げる工法です。木造部材と鉄骨構造体が混じり合う為、一般的な鉄骨造のような溶接ができません。その為、事前に鉄骨に受材を用意しておかないと、納めることができません。工事区分を明確に設定しておく必要があります。
スポンサーリンク第2章 合成スラブ工法の概要
前述の通り、デッキプレートとコンクリートが一体となる『合成スラブ工法』は、構造的にも経済的にも合理的な工法となります。本章では、さらに深掘りをして解説をします。
デッキプレートが起こす革命
デッキプレートは、コンクリート打設前は型枠として機能し、打設後は一体的な構造に生まれ変わります。なんという万能選手でしょうか!そしてこのデッキプレートには、会社を問わず下記の一般的な『モジュール』が採用されています。
<高さ:75mm>
幅:600mm×高さ:75mm
幅:300mm×高さ:75mm
<高さ:50mm>
幅:600mm×高さ:50mm
幅:300mm×高さ:50mm
※防錆対策として亜鉛メッキ処理の有無があります。
デッキプレートを載せる小梁のスパンが3m確保できていれば、支保工要らずで計画が可能となる場合が多いです。
上記はあくまで参考値です。必ず構造設計者との調整をしてください!
スタッドで梁せいを抑えられる!
さらに打設前に『頭付きスタッドボルト』という引掛け代を鉄骨梁に設けることで、梁せい寸法を抑えることができるというメリットがあります。これにより水平ブレースも省略できる場合があります。
頭付きスタッドボルトにより、
スラブの面内荷重を鉄骨梁へと伝達させ、
より一体的な構造体へと進化しているんだ!
どこまでも合理的で、
知れば知るほど凄みが分かるな!
合成スラブ工法の採用が多い理由も分かるよね!
実際の製品情報も確認して、1次情報に触れてみよう!
耐火被覆が不要になる!
さらに、耐火建築物として計画をする場合、デッキプレート+90㎜程度のコンクリートを打設することで、『無被覆の耐火床構造』を実現できる可能性があります。
上記の厚みに関しては、
各建築物の与条件を踏まえ、設計者にて適正な計画としてください。
耐火被覆については、下記の記事で解説してるわ!
代表的なデッキプレート<一例>
QLデッキ(JFE建材株式会社)
スーパーEデッキ(日鉄建材株式会社)
MAデッキ(明治鋼業株式会社)
第3章 設計検討の指針
ここまでで『合成スラブ工法』の概要はご理解頂けたと思います。本章では、実際の設計での検討事項についてご説明をします。
スラブ厚と標準的なスパンは?
結論:荷重条件やスパンによる為、一概には言えません。
一般的な中小規模の建築物であれば、小梁@2.5m+合成スラブが、経済合理的な計画となります。
何を採用するかによって、スパンもスラブの厚みも大きく変わります。例えば、デッキプレートの凸凹寸法や厚み、コンクリートの厚みなど)
床に段差を設けたい!
梁のフランジでデッキプレートを受ける場合
梁のウェブでデッキプレートを受ける場合
スラブの剛性を考えると極力段差は設けることを推奨しませんが、特に水廻りなどは、設備計画上、床レベルを変えたい場合が多いと思います。その場合は、梁にデッキプレートの受け材を設けることで、クリアすることができます。上記の納まりを参照ください。
床に一部開口を設けたい!
結論:中小規模の建築物であれば、600×900mm以上の開口で小梁が必要になることが多いです。
※設計条件により一概には言えません。あくまで感覚値として押さえておいてください。
合成スラブは、一般的なコンクリートスラブとは違うんだ!
「一方向スラブ」といってデッキの溝方向に沿ってのみ荷重が伝達されるんだ!
構造設計者と十分な擦り合わせをして計画をした方がいいね!
第4章 現場でチェックすべきポイント
1デッキプレートの割り付け
露出天井の場合、上階のデッキが見える場合があります。これに伴い、デッキ受けなど二次部材も見えてくる為、施工図で詳細な確認を推奨します。モジュール寸法で割り切れない部分などは、フラッシングでの調整を前提に見え方の工夫が必要です。フラッシングは、上記の図をご参照ください。
2コンクリート止め
梁にかかるデッキプレートの末端には、コンクリート止めや小口塞ぎが必要です。構造体表しで計画を行う場合、コンクリートの打設跡が付着すると外観上好ましくありません。施工精度について、十分に現場と確認しておくことを推奨します。また、エンドクローズド加工のデッキプレートを採用することで小口塞ぎは不要になります。
スポンサーリンク3ひび割れ防止対策
前述の通り、デッキプレートはコンクリート型枠と鉄筋の役割を兼ねています。ひび割れ対策としてワイヤーメッシュを計画することを忘れないようにしてください。
<現場目線での対策>
現場あるあるとしては、スペーサーを使わずに、直接ワイヤーメッシュを敷いている場合があります。確実なかぶり厚確保の為にも、スペーサーの利用を指示するようにしましょう。
4梁の継手とデッキプレートの干渉部分
デッキと継手が干渉する部分は、デッキプレートはバーナーで切断の上、デッキプレートの谷部分をデッキ受けに載せて適切に処理を行うようにする。
スポンサーリンクおわりに
鉄骨造の床納まりは、適切な工法と材料を選択することで、構造の信頼性と経済性を高めることが可能です。合成スラブ工法は、その合理性から多くの現場で採用されている工法ですが、詳細な計画と施工管理が不可欠です。本記事を通じて、合成スラブ工法の特性や注意点を理解し、今後の設計に役立てていただければ幸いです。