避難上有効なバルコニーって何?
法令集に載っていないんだけど。。。
免除や緩和規定でよく出てくるワードだね!解説しよう!
はじめに
「避難上有効なバルコニー」の定義は、建築基準法には明確に記載されていないため、設計者にとって理解が難しい部分の一つです。しかし、免除や緩和規定においては頻繁に登場し、実際の設計に大きく影響を与える要素です。
本記事では、「避難上有効なバルコニー」の基本から、具体的な設計基準までを分かりやすく解説していきます。この重要な概念をしっかりと学んでいきましょう!
スポンサーリンク第1章 『避難上有効なバルコニー』って?
避難計画にも利用可能な安全基準を満たすバルコニーです。
どういう時に出てくるの?
具体的には、下記の3つの場合に出てきます。
① 2直階段の免除規定<本記事の解説対象>
② 重複距離の免除規定
③ 木造三階建共同住宅の設計
今回は、『2直階段の免除規定』について解説をしています。
第2章 『避難上有効なバルコニー』の構造基準について
建築基準法施行令 第121条『避難上有効なバルコニー』って?
(二以上の直通階段を設ける場合)
第百二十一条 建築物の避難階以外の階が次の各号のいずれかに該当する場合においては、その階から避難階又は地上に通ずる二以上の直通階段を設けなければならない。
<中略>
六 前各号に掲げる階以外の階で次のイ又はロに該当するもの
イ 六階以上の階でその階に居室を有するもの(第一号から第四号までに掲げる用途に供する階以外の階で、その階の居室の床面積の合計が百平方メートルを超えず、かつ、その階に避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するもの及びその階から避難階又は地上に通ずる直通階段で第百二十三条第二項又は第三項の規定に適合するものが設けられているものを除く。)
緩和や免除規定に度々出てくるワードなのね!
で?実際にどのくらいの大きさで設計すればいいの?
ほぼ100%の設計士が直面する『建築基準法に載っていないじゃん。。。』と言う状況。
そうなんです。具体的な構造基準が示されているのは、『防火避難規定の解説』です。
上記の本には、下記の内容が規定されています。(望ましい)
・『バルコニーと直通階段は、概ね対象の位置』に配置をすること。
・『それぞれの居室から、簡単にアクセス可能な配置』とすること。
・バルコニーの一辺を『75cm以上の敷地内通路』または『道路』に面して配置すること。
・『避難器具』を計画し、道路等まで安全に避難をすること。(タラップなど)
・バルコニーの床は、『構造耐力上安全なもの』とすること。
・バルコニーは、『奥行き:75cm以上、面積:2㎡以上』とすること。(但し避難ハッチの面積は含まない)
・共同住宅以外のバルコニーは、『2m以内の開口部を両面20分の防火設備または特定防火設備』とすること。
・出入口は、『幅:75cm以上/高さ:180cm以上/床面からの高さ:15cm以下』で計画をすること。
・バルコニーは、『十分外気に開放されている』こと。
・バルコニーの床は、『耐火構造又は準耐火構造など』とすること。
第3章 2以上の直通階段の免除規定について
そもそも何を緩和する時に使うんだっけ?
2以上の直通階段を設置する必要がある時に、緩和できるよ!
これは常套手段としてよくやる手法だから、法文を確認しておこう!
建築基準法を確認してみよう!
(二以上の直通階段を設ける場合)
第百二十一条 建築物の避難階以外の階が次の各号のいずれかに該当する場合においては、その階から避難階又は地上に通ずる二以上の直通階段を設けなければならない。
一 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂又は集会場の用途に供する階でその階に客席、集会室その他これらに類するものを有するもの
二 物品販売業を営む店舗(床面積の合計が千五百平方メートルを超えるものに限る。第百二十二条第二項、第百二十四条第一項及び第百二十五条第三項において同じ。)の用途に供する階でその階に売場を有するもの
三 次に掲げる用途に供する階でその階に客席、客室その他これらに類するものを有するもの(五階以下の階で、その階の居室の床面積の合計が百平方メートルを超えず、かつ、その階に避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するもの及びその階から避難階又は地上に通ずる直通階段で第百二十三条第二項又は第三項の規定に適合するものが設けられているもの並びに避難階の直上階又は直下階である五階以下の階でその階の居室の床面積の合計が百平方メートルを超えないものを除く。)
イ キャバレー、カフェー、ナイトクラブ又はバー
ロ 個室付浴場業その他客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業を営む施設
ハ ヌードスタジオその他これに類する興行場(劇場、映画館又は演芸場に該当するものを除く。)
ニ 専ら異性を同伴する客の休憩の用に供する施設
ホ 店舗型電話異性紹介営業その他これに類する営業を営む店舗
四 病院若しくは診療所の用途に供する階でその階における病室の床面積の合計又は児童福祉施設等の用途に供する階でその階における児童福祉施設等の主たる用途に供する居室の床面積の合計が、それぞれ五十平方メートルを超えるもの
五 ホテル、旅館若しくは下宿の用途に供する階でその階における宿泊室の床面積の合計、共同住宅の用途に供する階でその階における居室の床面積の合計又は寄宿舎の用途に供する階でその階における寝室の床面積の合計が、それぞれ百平方メートルを超えるもの
六 前各号に掲げる階以外の階で次のイ又はロに該当するもの
イ 六階以上の階でその階に居室を有するもの(第一号から第四号までに掲げる用途に供する階以外の階で、その階の居室の床面積の合計が百平方メートルを超えず、かつ、その階に避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するもの及びその階から避難階又は地上に通ずる直通階段で第百二十三条第二項又は第三項の規定に適合するものが設けられているものを除く。)
ロ 五階以下の階でその階における居室の床面積の合計が避難階の直上階にあつては二百平方メートルを、その他の階にあつては百平方メートルを超えるもの
2 主要構造部が準耐火構造である建築物又は主要構造部が不燃材料で造られている建築物について前項の規定を適用する場合には、同項中「五十平方メートル」とあるのは「百平方メートル」と、「百平方メートル」とあるのは「二百平方メートル」と、「二百平方メートル」とあるのは「四百平方メートル」とする。
つまり『用途と階』によっては、『緩和可能』と言うことだね!
2直免除適用は『6階以上に計画すれば5階以下は不要?』
結論:5階以下は不要とすることができます。(要協議)
6階建ての場合で、6階に『避難上有効なバルコニーと屋外避難階段』が必要となる場合に注目!!!実は、6階のみ『避難上有効なバルコニー』とすることで、5階以下は不要とすることも可能です。
※その場合でも、『避難器具』を計画し、道路等まで安全に避難ができないといけません。(タラップなど)
おわりに
「避難上有効なバルコニー」は、設計の際に法規制をクリアしつつ、避難計画に活かすことができる重要な要素です。法令上の明確な基準がないため、設計者は自身でしっかりと解釈し、設計に反映させることが求められます。今回の解説を通じて、皆さんがより理解を深め、実際の設計に役立てることを期待しています。
スポンサーリンク