【バルコニー手すり】幼児転落やよじ登りなど安全対策!絶対に抑えるべき設計ポイントを一級建築士が解説

建築知識
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設計者A
設計者A

子供の落下事故とか、

手摺に絡む事故は痛ましいですよね。。

一級建築士:SUPERRE
一級建築士:SUPERRE

手すりは人命に直結する重要な要素だよね!

手すりに関しての規制と注意点を解説しよう。

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はじめに

バルコニーの手すりは、建築物における安全性を左右する重要な要素です。特に幼児や小さな子どもがいる家庭では、手すりの設計によって転落事故を未然に防ぐことが求められます。手すりの高さや強度、形状など、設計者が知っておくべきポイントは多岐にわたります。

本記事では、バルコニー手すりの設計において注意すべき重要なポイントについて解説し、幼児の転落やよじ登りのリスクを軽減するための具体的な対策を紹介します。

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第1章 手すりの規定について

手すりの規定で、必須の遵守項目は『高さ』のみです。(建築基準法)
その他規定は、各法令・規定内の『認証』や『性能評価』を取得する時に、初めて要求される規定となります。
その為、本記事でご紹介する規定はほとんどが任意規定です。こちらを前提に見ていただければと思います。

一級建築士:SUPERRE
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法令遵守は、『最低限』です。

もっと大切なのは、利用者の事故を未然に防ぐことです。

施主の要望や場面に合わせた『手すりの与件設定』が設計者に求められます。

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第2章 手すりの高さについて

建築基準法施行令第126条より、一般的な手すりの高さは『1,100mm』と認識されている方が多いと思います。まずはここを最低基準と捉えて差し支えありません。

確認審査機関
確認審査機関

1.1m未満にした場合、確認審査機関から指摘される場合があります。

(屋上広場等)
第百二十六条 屋上広場又は二階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さが一・一メートル以上の手すり壁、さく又は金網を設けなければならない。

引用:建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)

足掛かりに注意!

手すりの足掛かりレベルの図解
手すりの足掛かりレベルの図解

床面から850mm未満に腰壁や天板などが計画されている場合、そこが足掛かりになる場合があります。やむを得ず計画する場合は、その天端から1,100mmの高さに手摺天端を設定することを推奨します。

一級建築士:SUPERRE
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植栽や付近の室外機などの可動物とも800mm以上の離隔を確保しよう!

手すり付近の障害物との離隔図解
手すり付近の障害物との離隔図解
ベテラン上司
ベテラン上司

中間に補助用の手摺を設ける際も、足掛かりの注意が必要だよ!

手すりの中間補助図解
手すりの中間補助図解
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各種法令の高さに係る規制内容(適合任意)

日本建築学会資料集成

・立上り部分から、1,100mm以上を確保する
・よじ登り対策として、650mm以上を確保する
・幼児転落防止対策として、850mm以上を確保する

都市再生機構

・廊下及びバルコニーの床面から、1,200mm以上を確保する
・足掛かりになる部分から、1,100mm以上を確保する

ベターリビング(住宅性能評価を受ける場合)

・足掛かりになる部分から、1,100mm以上を確保する
・窓及び手摺の足掛かりになる部分から、850mm以上を確保する

不特定多数の人が利用する場合は?

一級建築士:SUPERRE
一級建築士:SUPERRE

私の勤務する会社では、

『不特定多数』が利用する施設では、上乗せ基準で設計をしていました!

不特定多数の人が利用する場合の上乗せ基準>
1,100mm → 1,300mmで計画することが多かったです。
※自社の過去事例より+200mmという規定にしていたようです。

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第3章 手すりの笠木(トップレール)について

ベターリビングによる規制内容(住宅性能評価を受ける場合)

【笠木の天端にモノが置けない形状にすること】

笠木の形状図解
笠木の形状図解
設計の師匠
設計の師匠

これにより物が落下する恐れが生じ、下階歩行者の重大な怪我につながる恐れがあります。

蒲鉾形状や通路側へ傾斜をつけるなど、「ここには物が置けない!」と思わせる形状を心がけることが大切です。

【笠木と腰壁の隙間は、300mm以下にすること】

笠木と腰壁の関係図
笠木と腰壁の関係図
ベテラン上司
ベテラン上司

これにより足がかかりにくくなります。

私が自主的に気をつけていること!

一級建築士:SUPERRE
一級建築士:SUPERRE

笠木は怪我をしないような納まりに!

いずれも怪我防止の観点で対策をしています。

面取りをして角出しの納まりを避けています。

端部は、引っ掛かりとなるような突起形状は避けるようにしています。

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第4章 手すり強度について

耐水平荷重の設計用荷重に係る各種規制

日本建築学会 JASS13

・身障者用手摺:120kg/m

ベターリビング(住宅性能評価を受ける場合)

・不特定多数が利用するバルコニー:150kg/m
・避難通路:150kg/m
・避難階段:150kg/m
・集合住宅の共用部:150kg/m
不特定多数が利用する吹き抜けに面する落下防止柵:300kg/m

一級建築士:SUPERRE
一級建築士:SUPERRE

屋外イベントなど、不特定多数で利用がある場所も、300kg/mで計画することが多いよ!

手摺に持たせる性能としては、「約3,000N/m」ってことだね!

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第5章 手すりの隙間について

ベターリビングによる規制内容

・足掛かりのある面と手摺下端水平材のスキマ寸法は、90mm以下とすること。
・手摺子間の感覚は、110mm以下とすること。(面内方向に295Nを加えた状況下での規定

ちょっと待って!!なんで110mmなの?

一般的な幼児の頭部は、直径110mm未満です。その為、直径110mmの円がすり抜けてしまうと落下の可能性が高くなります。

一級建築士:SUPERRE
一級建築士:SUPERRE

寸法の根拠も合わせて覚えると、忘れにくいよ!

私が自主的に気をつけていること!

一級建築士:SUPERRE
一級建築士:SUPERRE

不特定多数が利用する施設の場合、手摺子形式は採用せずパネル形式を採用しています。
モノの転落防止の為、床面から立ち上がりを 25mm程度設ける。
登りにくい形状を工夫する。

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第6章 ガラス手すりについて

ベターリビングによる規制内容

不燃材若しくは、難燃材とする。(コーナーキャップ等に利用する樹脂製品を除く)

私が自主的に気をつけていること!

一級建築士:SUPERRE
一級建築士:SUPERRE

合わせ強化ガラスを採用することが多いです。

倍強度ガラスは自然爆裂の事例がある為、採用していません
ガラス単板の採用の場合、飛散防止フィルムを採用しています。
破損時を考慮し、エッジカバーを設けたり、ガラスの小口が露出する納まりは避けています。
・ガラスとガラスの間は、シール目地としています。

空目地は控えており、やむを得ず採用する場合は、指詰防止の観点より6mm以下or25mm以上としています。

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おわりに

バルコニーの手すり設計は、単なる法令遵守にとどまらず、利用者の安全を第一に考えることが不可欠です。特に転落事故防止やよじ登り対策としては、手すりの高さ、隙間、形状など、細部まで注意を払うことが求められます。また、実際のトラブル事例を参考にすることで、具体的なリスクを理解し、より実践的な設計が可能となります。

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