【工作物残置】基礎/杭/アスベストは地中に残置できる?実際の現場トラブル3選とアスベスト関連法規を解説!

建築知識
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設計者A
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アスベストって解体しない時は放置で問題ないの?

一級建築士:SUPERRE
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アスベストや既存工作物に関する実際のトラブルを話そう!

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はじめに

物解体や改修工事でよく問題になるのが、アスベストや既存工作物の残置です。本記事では、アスベストについての関係法令をご紹介し、実際に起きた現場トラブルの事例を通じてその対策を考察します。加えて地下工作物の残置の可否についても解説します。

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第1章 頻出!アスベストに関する4法令!

一級建築士:SUPERRE
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本章では、アスベスト関連でよく出てくる『4つの法令』についてご紹介します。

ここで押さえるべきは、4つの法令

法規の概念図

1『土壌汚染対策法』:土対法
2『廃棄物の処理及び清掃に関する法律』:廃掃法
3『大気汚染防止法』→大防法
4『建築基準法』→建基法

上記の4つのそれぞれの法律の概念を表す図として、上記をご参照下さい。それでは、各法律の抑えるべきポイントを解説していきます。

法令① 土壌汚染対策法

一級建築士:SUPERRE
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一般的に『ドタイホウ』の呼び名で親しまれているよ!役所でも通じます!

どんな法律なの?

(目的)
第一条 この法律は、土壌の特定有害物質による汚染の状況の把握に関する措置及びその汚染による人の健康に係る被害の防止に関する措置を定めること等により、土壌汚染対策の実施を図り、もって国民の健康を保護することを目的とする。
引用:土壌汚染対策法(平成十四年法律第五十三号)

設計者A
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つまり土を綺麗に保つことで安全な暮らしを実現したいんだね!

アスベストは、いかにも有害だから抵触しそうだね。。。

一級建築士:SUPERRE
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結論:アスベストは、土対法は関係ありません。

※関係法令の1つとして紹介していますが、関係ないよ!ということだけ覚えて下さい

なぜ『土対法』と『アスベスト』は、関係ないの?

土対法は、『特定有害物質』(下記定義文引用)を対象に規制をかけています
実は、『アスベスト』は含まれないんです。

特定有害物質
第一条 土壌汚染対策法(以下「法」という。)第二条第一項の政令で定める物質は、次に掲げる物質とする。
一 カドミウム及びその化合物
二 六価クロム化合物
三 クロロエチレン(別名塩化ビニル又は塩化ビニルモノマー)
四 二―クロロ―四・六―ビス(エチルアミノ)―一・三・五―トリアジン(別名シマジン又はCAT)
五 シアン化合物
六 N・N―ジエチルチオカルバミン酸S―四―クロロベンジル(別名チオベンカルブ又はベンチオカーブ)
七 四塩化炭素
八 一・二―ジクロロエタン
九 一・一―ジクロロエチレン(別名塩化ビニリデン)
十 一・二―ジクロロエチレン
十一 一・三―ジクロロプロペン(別名D―D)
十二 ジクロロメタン(別名塩化メチレン)
十三 水銀及びその化合物
十四 セレン及びその化合物
十五 テトラクロロエチレン
十六 テトラメチルチウラムジスルフィド(別名チウラム又はチラム)
十七 一・一・一―トリクロロエタン
十八 一・一・二―トリクロロエタン
十九 トリクロロエチレン
二十 鉛及びその化合物
二十一 砒ひ素及びその化合物
二十二 ふっ素及びその化合物
二十三 ベンゼン
二十四 ほう素及びその化合物
二十五 ポリ塩化ビフェニル(別名PCB)
二十六 有機りん化合物(ジエチルパラニトロフェニルチオホスフェイト(別名パラチオン)、ジメチルパラニトロフェニルチオホスフェイト(別名メチルパラチオン)、ジメチルエチルメルカプトエチルチオホスフェイト(別名メチルジメトン)及びエチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト(別名EPN)に限る。)

引用:土壌汚染対策法施行令

(定義)
第二条 この法律において「特定有害物質」とは、鉛、砒ひ素、トリクロロエチレンその他の物質(放射性物質を除く。)であって、それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。

引用:土壌汚染対策法(平成十四年法律第五十三号)

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法令② 廃棄物の処理及び清掃に関する法律

一級建築士:SUPERRE
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一般的に『ハイソウホウ』と呼ばれています!

少しニッチな法令なので、正式名称でないと会話が難しい気もします。

どんな法律なの?

(目的)
第一条この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。

引用:廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)

設計者A
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適正な廃棄を通して、住みやすい街にしたいんだね!

つまりアスベスト含有物を廃棄する場合、規制がかかるということか!

一級建築士:SUPERRE
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結論:アスベスト除去は規制対象です。
3つの有害レベルが設定されていて、それぞれで対応が異なるよ!

アスベストは、3種類の廃棄物に大別できる!

引用:環境省 石綿を含む廃棄物の規制の現状より

アスベストの廃棄物分類3選
1 特別管理産業廃棄物
2 石綿含有産業廃棄物
3 石綿含有一般廃棄物

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それぞれの定義を見てみよう!

『特別管理産業廃棄物』の定義

特別管理産業廃棄物
第二条の四 法第二条第五項(ダイオキシン類対策特別措置法第二十四条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の政令で定める産業廃棄物は、次のとおりとする。
 中略
ト 廃石綿等(廃石綿及び石綿が含まれ、又は付着している産業廃棄物のうち、石綿建材除去事業(建築物その他の工作物に用いられる材料であつて石綿を吹き付けられ、又は含むものの除去を行う事業をいう。)に係るもの(輸入されたものを除く。)、別表第三の一の項に掲げる施設において生じたもの(輸入されたものを除く。)及び輸入されたもの(事業活動に伴つて生じたものに限る。)であつて、飛散するおそれのあるものとして環境省令で定めるものをいう。以下同じ。)

引用:廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和四十六年政令第三百号)

第一条の二
 中略
9 令第二条の四第五号トの規定による環境省令で定める産業廃棄物は、次のとおりとする。
一 建築物その他の工作物(次号において「建築物等」という。)に用いられる材料であつて石綿を吹きつけられたものから石綿建材除去事業により除去された当該石綿
二 建築物等に用いられる材料であつて石綿を含むもののうち石綿建材除去事業により除去された次に掲げるもの
イ 石綿保温材
ロ けいそう土保温材
ハ パーライト保温材
ニ 人の接触、気流及び振動等によりイからハに掲げるものと同等以上に石綿が飛散するおそれのある保温材、断熱材及び耐火被覆材
三 石綿建材除去事業において用いられ、廃棄されたプラスチックシート、防じんマスク、作業衣その他の用具又は器具であつて、石綿が付着しているおそれのあるもの
四 令別表第三の一の項に掲げる施設において生じた石綿であつて、集じん施設によつて集められたもの(輸入されたものを除く。)
五 前号に掲げる特定粉じん発生施設又は集じん施設を設置する工場又は事業場において用いられ、廃棄された防じんマスク、集じんフィルターその他の用具又は器具であつて、石綿が付着しているおそれのあるもの(輸入されたものを除く。)
六 石綿であつて、集じん施設によつて集められたもの(事業活動に伴つて生じたものであつて、輸入されたものに限る。)
七 廃棄された防じんマスク、集じんフィルターその他の用具又は器具であつて、石綿が付着しているおそれのあるもの(事業活動に伴つて生じたものであつて、輸入されたものに限る。)

引用:廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和四十六年厚生省令第三十五号)

『石綿含有産業廃棄物』の定義

(産業廃棄物の収集、運搬、処分等の基準)
第六条 法第十二条第一項の規定による産業廃棄物(特別管理産業廃棄物以外のものに限るものとし、法第二条第四項第二号に掲げる廃棄物であるもの及び当該廃棄物を処分するために処理したものを除く。以下この項(第三号イ及び第四号イを除く。)において同じ。)の収集、運搬及び処分(再生を含む。)の基準は、次のとおりとする。
一 産業廃棄物の収集又は運搬に当たつては、第三条第一号イからニまでの規定の例によるほか、次によること。
 中略
ロ 石綿が含まれている産業廃棄物であつて環境省令で定めるもの(以下「石綿含有産業廃棄物」という。)又は水銀若しくはその化合物が使用されている製品が産業廃棄物となつたものであつて環境省令で定めるもの(以下この項において「水銀使用製品産業廃棄物」という。)の収集又は運搬を行う場合には、第三条第一号ホの規定の例によること。

引用:廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和四十六年政令第三百号)

(石綿含有産業廃棄物)
第七条の二の三 令第六条第一項第一号ロの規定による環境省令で定める石綿が含まれている産業廃棄物は、工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じた産業廃棄物であつて、石綿をその重量の〇・一パーセントを超えて含有するもの(廃石綿等を除く。)とする。

引用:廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和四十六年厚生省令第三十五号)

『石綿含有一般廃棄物』の定義

一般廃棄物の収集、運搬、処分等の基準)
第三条 法第六条の二第二項の規定による一般廃棄物(特別管理一般廃棄物を除く。以下この条及び次条において同じ。)の収集、運搬及び処分(再生を含む。)の基準は、次のとおりとする。
 中略
ホ 石綿が含まれている一般廃棄物であつて環境省令で定めるもの(以下「石綿含有一般廃棄物」という。)の収集又は運搬を行う場合には、石綿含有一般廃棄物が、破砕することのないような方法により、かつ、その他の物と混合するおそれのないように他の物と区分して、収集し、又は運搬すること。

引用:廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和四十六年政令第三百号)

(石綿含有一般廃棄物)
第一条の三の三 令第三条第一号ホの規定による環境省令で定める一般廃棄物は、工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じた一般廃棄物であつて、石綿をその重量の〇・一パーセントを超えて含有するものとする。

引用:廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和四十六年厚生省令第三十五号)

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アスベスト撤去に関する詳細な情報は、環境省HPよりご参照ください。
※本記事では、最低限の概要のみを取捨選択してお届けいたします。

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法令③ 大気汚染防止法

一級建築士:SUPERRE
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一般的に『タイボウホウ』と呼ばれています

こちらもニッチな法令なので、正式名称でないと会話が難しい気がします。

どんな法律なの?

(目的)
第一条 この法律は、工場及び事業場における事業活動並びに建築物等の解体等に伴うばい煙、揮発性有機化合物及び粉じんの排出等を規制し、水銀に関する水俣条約(以下「条約」という。)の的確かつ円滑な実施を確保するため工場及び事業場における事業活動に伴う水銀等の排出を規制し、有害大気汚染物質対策の実施を推進し、並びに自動車排出ガスに係る許容限度を定めること等により、大気の汚染に関し、国民の健康を保護するとともに生活環境を保全し、並びに大気の汚染に関して人の健康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図ることを目的とする。

引用:大気汚染防止法(昭和四十三年法律第九十七号)

設計者A
設計者A

『工場からの排出物』や『解体工事で出る有害物質』

などを規制して、住みやすくしてくれているのか!

一級建築士:SUPERRE
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結論:アスベスト撤去は、当然規制対象です。

※特定建設材料に該当です。処理方法は、各自で調査ください。

特定建設材料(アスベスト含む)に要注意!

建築物等の解体・補修・改造の際は、特定建築材料(アスベストなど)の有無を事前に調査する必要があります。検出された場合、石綿飛散防止対策が必須となります。

『特定建設材料』の定義

(定義等)
第二条
 中略
11 この法律において「特定粉じん排出等作業」とは、吹付け石綿その他の特定粉じんを発生し、又は飛散させる原因となる建築材料で政令で定めるもの(以下「特定建築材料」という。)が使用されている建築物その他の工作物(以下「建築物等」という。)を解体し、改造し、又は補修する作業のうち、その作業の場所から排出され、又は飛散する特定粉じんが大気の汚染の原因となるもので政令で定めるものをいう。

引用:大気汚染防止法(昭和四十三年法律第九十七号)

(特定建築材料)
第三条の三 法第二条第十一項の政令で定める建築材料は、吹付け石綿その他の石綿を含有する建築材料とする。

引用:大気汚染防止法施行令(昭和四十三年政令第三百二十九号)

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法令④ 建築基準法

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建築基準法は、略さずそのまま呼ばれています

どんな法律なの?

(目的)
第一条 この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。

引用:建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)

設計者A
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建築に最低限ルールを定め

『社会全体の共通利益』としよう!って感じですね!

一級建築士:SUPERRE
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結論:原則、石綿の使用は禁止です。

石綿その他の物質の飛散又は発散に対する衛生上の措置
第二十八条の二 建築物は、石綿その他の物質の建築材料からの飛散又は発散による衛生上の支障がないよう、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない
一 建築材料に石綿その他の著しく衛生上有害なものとして政令で定める物質(次号及び第三号において「石綿等」という。)を添加しないこと。
二 石綿等をあらかじめ添加した建築材料(石綿等を飛散又は発散させるおそれがないものとして国土交通大臣が定めたもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを除く。)を使用しないこと。
三 居室を有する建築物にあつては、前二号に定めるもののほか、石綿等以外の物質でその居室内において衛生上の支障を生ずるおそれがあるものとして政令で定める物質の区分に応じ、建築材料及び換気設備について政令で定める技術的基準に適合すること。

引用:建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)

(著しく衛生上有害な物質)
第二十条の四 法第二十八条の二第一号(法第八十八条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定める物質は、石綿とする

引用:建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)

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第3章 実際にあったトラブル事例

本章では、私がプロジェクトを進めるにあたり実際にトラブルとなった事例を解説して参ります。アスベストを始め、既存建築物の構造体(杭など)の地中残置に関するトラブル事例も交えてお話させていただきます。

事例1 アスベストって舗装で上から封じ込めていいの?

一級建築士:SUPERRE
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結論:不可でした。

<トラブルの経緯>
フットサルコート付きの広大な土地(敷地面積:2ha程度)を購入済
・購入後、コートの表面からアスベスト含有塗料を検出。解体/撤去には1.5億円かかる。

一級建築士:SUPERRE
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<設計側の作戦案>

アスベストは解体及び除去をしないことで、『大防法』を適用外とする。

『廃掃法』の『廃棄物』の定義から除外して、

既存舗装の上から直接舗装で封じ込めできないかな?

トラブル事例1の計画断面構成を作成。
トラブル事例1の計画断面構成
行政官M
行政官M

その検討案だと『廃掃法』の解釈により、

下記理由で認められません。

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解釈によると『廃棄物』に該当

第3 地下工作物の取扱いについて
地下工作物の存置については、一般社団法人日本建設業連合会において「既存地下工作物の取扱いに関するガイドライン」(2020 年2月)が作成されている。次に掲げる1から4までの全ての条件を満たすとともに、同ガイドライン「3.2.3 存置する場合の留意事項」に基づく対応が行われる場合は、関連事業者及び土地所有者の意思に基づいて地下工作物を存置して差し支えない。なお、存置の対象となるのは、コンクリート構造体等の有害物を含まない安定した性状のものに限られる。また、戸建住宅の地下躯 体は対象に含まれない。
1 存置することで生活環境保全上の支障が生ずるおそれがない。
2 対象物は「既存杭」「既存地下躯体」「山留め壁等」のいずれかである。
3 地下工作物を本設又は仮設で利用する、地盤の健全性・安定性を維持する又は撤去した場合の周辺環境への悪影響を防止するために存置するものであって、老朽化を主な理由とするものではない。
4 関連事業者及び土地所有者は、存置に関する記録を残し、存置した地下工作物を適切に管理するとともに土地売却時には売却先に記録を開示し引き渡す。

なお、地下工作物を存置する場合においても、石綿含有建材やPCB使用機器などの
有害物、これら以外の内装材や設備機器などは全て撤去すべきものである。
また、地方
公共団体が上記の1から4までの条件を満たしていないと判断した場合は「廃棄物」に
該当
し得るとともに、生活環境保全上の支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認めら
れると判断した場合は、当該地下工作物の撤去等、その支障の除去等の措置を講ずべき
ことを命ずることが可能
である。

引用:第 12 回再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(令和3年7月2日開催)を踏まえた廃棄物の処理及び清 掃に関する法律の適用に係る解釈の明確化について(通知)

3.2.3 存置する場合の留意事項
(1)全般的な留意事項
全般的な留意事項としては以下のことが挙げられる。
・既存地下工作物について撤去するか否かを決定するのは当該工作物を所有している発注者もしくは土地所有者である
既存地下工作物を存置する場合においても、石綿含有建材やPCB使用機器などの有害物はもちろんのこと、それ以外の内装材や設備機器などは全て撤去すべきものである。 存置の対象となるのは、コンクリート構造体等の有害物を含まない安定した性状のもの に限られる。
・存置する場合は、対象物の図面や記録等を作成し、設計図書とともに発注者及び土地所 有者が保存することが必要である。併せて他の関係者(設計者、施工会社等)も保存す ることが望ましい。
・存置に関する関係者間での打ち合わせ等のやり取りを記録として残すことで、意思決定 の過程を明確にする。
・一部の自治体においては、既存地下工作物を存置する際には存置に関する書類の提出を求めているため、事前に自治体へ確認する。
・発注者及び土地所有者は、設計者又は施工会社より提出された記録を、存置物を撤去す るまでの期間保持することが必要である。また、存置物の存在は土地売買契約時の重要 事項であることから、土地所有者は土地売却時には相手方に説明するとともに、図面等 の記録を引き渡す。
・直ちに新築工事の計画はないが、税務上や土地の有効利用の観点等から、既存建物の上 屋を解体することは珍しいことではない。このケースにおいても将来の有用性に鑑み、 地盤の健全性・安定性を維持するために存置することは十分考えられる。将来、建築等 の土地利用計画が確定した時点で改めて取扱いについて検討することとする。
・万一、存置した後から生活環境保全上の支障が判明した場合には、行政から撤去命令が 出される可能性も考えられるため、存置可能かどうかの判断は慎重に行う。
(2) 工学的な留意事項 既存地下工作物を存置する際には、工学的留意点として以下のような内容が挙げられる。 ・設備ピットなどの地下空間については、将来の崩落の可能性や溜まり水の腐食など、生活環境保全上の支障となるおそれがある場合は、その空間を充填したり躯体に水抜き
穴を設けたりするなどの対処を検討する。 ・将来再利用されることを考慮して、既存地下工作物を存置する場合は、コンクリート強度や鉄筋などの仕様についても、可能な限り記録しておくことが望ましい。 ・存置した既存地下工作物が、新築建物に悪影響を及ぼさないように配慮し、場合によっては既存地下工作物と新築建物との間にクリアランスを設けるなどの検討を行う。 ・存置した既存地下工作物の近くに新規の杭を打つ場合は、設計支持力が構造計算どおりの性能を示すよう、杭先端が既存地下工作物よりも深い深度となるよう配慮する。
・存置した杭によって、地盤剛性の低下抑制効果やせん断剛性の増加効果、新設杭の沈下 剛性が増加するという研究結果がある 3.2.5)。また、液状化安全率が増加することも考えられる 3.2.6)。
・新設基礎が直接基礎の場合、既存地下工作物の有無による不同沈下量の入念な検討を行 うことが望ましい。
・基礎入力動の増加や、存置杭の配置が不均等の際に新設杭基礎にねじれが励起される場合がある 3.2.7)。
以上のような留意点を考慮することで既存地下工作物の存置によって起こりうる諸問題に対応できると考えられる。

引用:既存地下工作物の取扱いに関するガイドライン

行政官M
行政官M

一言で言うと、有害な物質は片付けてください!ってことですね。

設計者A
設計者A

よくわかりました。作戦を立て直します!

一級建築士:SUPERRE
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<現場でのラーニング>

実はアスベスト含有について、土地購入時の重要事項説明から抜けていました。

土地の前所有者には、責任追及と対応を求めています。

購入前に疑う視点を待つことが予防策です!

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トラブル2 既存杭は地中に残置していいの?

一級建築士:SUPERRE
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結論:条件付きで可能です。

『第3地下工作物の取扱いについて』をご参照ください。(トラブル1項目)

トラブル3 建物購入前のアスベスト含有調査は慎重に!

アスベスト含有範囲や種別により、撤去費用は大きく変わります。土地購入前には、必ず机上調査や実地調査を行い、事業予算の精度を高めていきましょう

一級建築士:SUPERRE
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ちょっと待って!

土地及び建物購入前の調査ではここに気をつけて!

アスベストのサンプルを採取する場合、壁や天井などをくり抜いてサンプリングをする必要がございます。当然売り物である建物に傷をつける行為となりますので、売主の許可が必要です。また、費用負担についても、仲介や売主と直接交渉して円滑に進めていくことが求められてきます。

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おわりに

アスベストや基礎・杭の残置に関する課題は、法令や規制を正しく理解し、それに基づいた適切な対応が求められます。特に、アスベストに関しては関連法令が複雑で、現場でのトラブルを防ぐためにはその理解が欠かせません。本記事で紹介した実際のトラブル事例や法規のポイントを参考に、現場でのリスクを最小限に抑えるよう努めてください

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