親の土地を使って大きな家に建て替えたいなー!
用途地域は確認したかな?
高さや大きさで規制がかけられている可能性があるよ!
はじめに
本記事は、用途地域の定義や種類、調査方法について、一級建築士目線で解説します。
不動産の購入を考えている方や用途地域について知りたい方は、是非この記事を参考にしてください。特にこれから建物を建てようとする方、今後建て替えを検討されている方は必見の内容です。
第1章 全ては計画的なまちづくり計画で形成される
日本では、都市計画法にて区域を明確に分類し、計画的にまちづくりが行われています。
下記のイメージをご覧ください。都市計画法上は、下記の3つの区域に分類されています。
1 都市計画区域
都市計画区域は、計画的な街づくりを進めるために定められた地域。
都市計画区域は、日本全土の約25%にあたります。人々の9割以上が、都市計画区域に暮らしています。都市計画法に定められた規則を守らなければいけない重要な地域です。
都市計画区域は次の2つに区分されます。
1−1 市街化区域
市街地化(都市化)に対して積極的な都道府県が定めた区域です。(複数の都道府県にまたがる都市計画区域については国土交通大臣)
細かな建築規制を定め、無秩序なまちづくりができないようにしています。
現在市街地を形成する区域、または、10年以内に市街化を図るべき区域です。人が住む為に、家や商業施設や文化施設などが建つエリアを指し、広大な森林や農地などは見られません。市街化区域では、用途地域が必ず定められます。これにより、そのエリア内で建てられる建物の種類や大きさが制限され、人々の快適な暮らしを守るための役割を果たしています。
1−2 市街化調整区域
市街地化(都市化)に対して消極的な区域です。
市街化が進行しないように設けられた区域です。人が住むような開発やまちづくりの予定がありません。従って、用途地域の指定がありません。自然環境の保守を重んじ、一部の許可以外は、建築制限がかけられています。
1−3 非線引き都市計画区域
法律上は「区域区分が定められていない都市計画区域」と呼ばれます。
2000年の都市計画法改正以前は「未線引き区域」と呼ばれていました。
市街化区域及び市街化調整区域以外の区域です。まちづくり方針や区域計画が未設定であり、仮置き状態にあります。
郊外のリゾート地は、非線引き都市計画区域が多いんだ!
普段リゾート開発の仕事をしているんだけど、大体がこの区分って印象だね。
都市計画法の原文
ここまでの説明区域について、都市計画法の都市計画区域に関する原文となります。
必ず1次情報を得る癖をつけた方が良いよ!
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昭和四十三年法律第百号 都市計画法
第五条 都道府県は、市又は人口、就業者数その他の事項が政令で定める要件に該当する町村の中心の市街地を含み、かつ、自然的及び社会的条件並びに人口、土地利用、交通量その他国土交通省令で定める事項に関する現況及び推移を勘案して、一体の都市として総合的に整備し、開発し、及び保全する必要がある区域を都市計画区域として指定するものとする。この場合において、必要があるときは、当該市町村の区域外にわたり、都市計画区域を指定することができる。
2 都道府県は、前項の規定によるもののほか、首都圏整備法(昭和三十一年法律第八十三号)による都市開発区域、近畿圏整備法(昭和三十八年法律第百二十九号)による都市開発区域、中部圏開発整備法(昭和四十一年法律第百二号)による都市開発区域その他新たに住居都市、工業都市その他の都市として開発し、及び保全する必要がある区域を都市計画区域として指定するものとする。
3 都道府県は、前二項の規定により都市計画区域を指定しようとするときは、あらかじめ、関係市町村及び都道府県都市計画審議会の意見を聴くとともに、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣に協議し、その同意を得なければならない。
4 二以上の都府県の区域にわたる都市計画区域は、第一項及び第二項の規定にかかわらず、国土交通大臣が、あらかじめ、関係都府県の意見を聴いて指定するものとする。この場合において、関係都府県が意見を述べようとするときは、あらかじめ、関係市町村及び都道府県都市計画審議会の意見を聴かなければならない。
5 都市計画区域の指定は、国土交通省令で定めるところにより、公告することによつて行なう。
6 前各項の規定は、都市計画区域の変更又は廃止について準用する。
2 準都市計画区域
準都市計画区域は、都市計画区域外ですが、将来的な都市化(市街地化)が見込まれる区域の土地利用を前もって規制することで、長期的に一体性のある都市として開発されることを目的としています。これらは、都道府県が定めた区域(複数の都道府県にまたがる都市計画区域については国土交通大臣)です。日本全土の1%にも満たないです。
都市計画法の原文
ここまでの説明区域について、都市計画法の準都市計画区域に関する原文となります。
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昭和四十三年法律第百号 都市計画法
第五条の二 都道府県は、都市計画区域外の区域のうち、相当数の建築物その他の工作物(以下「建築物等」という。)の建築若しくは建設又はこれらの敷地の造成が現に行われ、又は行われると見込まれる区域を含み、かつ、自然的及び社会的条件並びに農業振興地域の整備に関する法律(昭和四十四年法律第五十八号)その他の法令による土地利用の規制の状況その他国土交通省令で定める事項に関する現況及び推移を勘案して、そのまま土地利用を整序し、又は環境を保全するための措置を講ずることなく放置すれば、将来における一体の都市としての整備、開発及び保全に支障が生じるおそれがあると認められる一定の区域を、準都市計画区域として指定することができる。
2 都道府県は、前項の規定により準都市計画区域を指定しようとするときは、あらかじめ、関係市町村及び都道府県都市計画審議会の意見を聴かなければならない。
3 準都市計画区域の指定は、国土交通省令で定めるところにより、公告することによつて行う。
4 前三項の規定は、準都市計画区域の変更又は廃止について準用する。
5 準都市計画区域の全部又は一部について都市計画区域が指定されたときは、当該準都市計画区域は、前項の規定にかかわらず、廃止され、又は当該都市計画区域と重複する区域以外の区域に変更されたものとみなす。
3 都市計画区域外
長期的にも土地利用の計画がない、或いは、なされていない都道府県が定めた区域(複数の都道府県にまたがる都市計画区域については国土交通大臣)です。日本全土の約75%にあたります。
都市計画区域外の建築規制について
都市計画区域外で建築を計画する場合、以下の規定に関わる建築基準法は適用除外とすることができます。
<適用除外項目>
接道義務、用途地域規制、建蔽率、容積率、高さ制限、防火地域指定
建築基準法の原文
第三章 都市計画区域等における建築物の敷地、構造、建築設備及び用途
第一節 総則
(適用区域)
第四十一条の二 この章(第八節を除く。)の規定は、都市計画区域及び準都市計画区域内に限り、適用する。〜中略〜
第八節 都市計画区域及び準都市計画区域以外の区域内の建築物の敷地及び構造
昭和二十五年法律第二百一号 建築基準法
第六十八条の九 第六条第一項第四号の規定に基づき、都道府県知事が関係市町村の意見を聴いて指定する区域内においては、地方公共団体は、当該区域内における土地利用の状況等を考慮し、適正かつ合理的な土地利用を図るため必要と認めるときは、政令で定める基準に従い、条例で、建築物又はその敷地と道路との関係、建築物の容積率、建築物の高さその他の建築物の敷地又は構造に関して必要な制限を定めることができる。
2 景観法第七十四条第一項の準景観地区内においては、市町村は、良好な景観の保全を図るため必要があると認めるときは、政令で定める基準に従い、条例で、建築物の高さ、壁面の位置その他の建築物の構造又は敷地に関して必要な制限を定めることができる。
建築基準法の抜け道かもしれない!!!
自然豊かな土地には「森林法」や「自然公園法」が厳しく待ち構えているよ。
みんな考えることは同じだよねw
第2章 用途地域について
この章では、都市計画区域の市街化区域における用途地域について解説を行います。
用途地域は3つに分類できる!?
用途地域は大きく住居系、商業系、工業系に分類可能です。さらに以下の13種類に細分化されます。
住居系の用途地域
第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、田園住居地域、準住居地域
商業系の用途地域
近隣商業地域、商業地域
工業系の用途地域
準工業地域、工業地域、工業専用地域
具体的な建築規制について
各用途地域毎に、建築規制が設定されています。詳しくは別の記事で解説を致します。
都市計画法の原文
下記は、都市計画法の用途地域に関する法文の原文となります。
スポンサーリンク第九条 第一種低層住居専用地域は、低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域とする。
昭和四十三年法律第百号 都市計画法
2 第二種低層住居専用地域は、主として低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域とする。
3 第一種中高層住居専用地域は、中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域とする。
4 第二種中高層住居専用地域は、主として中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域とする。
5 第一種住居地域は、住居の環境を保護するため定める地域とする。
6 第二種住居地域は、主として住居の環境を保護するため定める地域とする。
7 準住居地域は、道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するため定める地域とする。
8 田園住居地域は、農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域とする。
9 近隣商業地域は、近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するため定める地域とする。
10 商業地域は、主として商業その他の業務の利便を増進するため定める地域とする。
11 準工業地域は、主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するため定める地域とする。
12 工業地域は、主として工業の利便を増進するため定める地域とする。
13 工業専用地域は、工業の利便を増進するため定める地域とする。
(一部抜粋)
第3章 勝手にランキング形式で考察してみました!
番外編 日本の用途地域割合ランキング
国土交通省が公表しているデータを参照すると、上記のランキングとなります。
比率の高い地域は、いずれも住居系地域であり、まさに人が居住する為の開発・保全区域を体現するような結果となっています。
用途地域名称 | 面積 (ha) | 全体に占める比率 (%) |
---|---|---|
第1種低層住居専用地域 | 341,699.7 | 18.45 |
第2種低層住居専用地域 | 15,599.6 | 0.84 |
第1種中高層住居専用地域 | 258,095.0 | 13.94 |
第2種中高層住居専用地域 | 100,322.1 | 5.42 |
第1種住居地域 | 419,909.7 | 22.68 |
第2種住居地域 | 86,575.2 | 4.68 |
準住居地域 | 27,600.0 | 1.49 |
近隣商業地域 | 74,666.0 | 4.03 |
商業地域 | 73,772.1 | 3.98 |
準工業地域 | 201,643.5 | 10.89 |
工業地域 | 104,321.6 | 5.63 |
工業専用地域 | 145,845.0 | 7.88 |
計 | 1,850,149.5 | 100.00 |
番外編 日本全体での都市計画区域はどれくらい?
区域名称 | 区域数 | 面積 (ha) | 現在人口 | 計画人口 |
---|---|---|---|---|
都市計画区域 | 1,189 | 10,069,048 | 119,517,300 | – |
市街化区域 | – | 1,440,000 | 85,377,800 | 88,318,000 |
市街化調整区域 | – | 3,376,888 | 11,018,200 | – |
人口集中地区(平成17年) | – | 1,247,743 | 84,140,700 | – |
国土交通省によると、都市計画区域には1,189の区域があり、総面積は10,069,048 haです。市街化区域には計画人口が88,318,000人で、現在人口は85,377,800人です。市街化調整区域には計画人口が記載されていませんが、現在人口は11,018,200人です。人口集中地区(平成17年)の人口は84,140,700人で、面積は1,247,743 haです。
スポンサーリンク第4章 用途地域図の調べ方と検索方法
用途地域を確認する方法を解説致します。
基本的には、各行政庁(市町村役場など)にて公開されている用途地域図や電話でのヒアリングが、最速かつ正確ではありますが、ハードルが高いと感じる方もいらっしゃると思います。
とりあえず調べてみたい!という方は、「用途地域マップ」や「国土数値情報ダウンロード」を活用を推奨します。
用途地域マップ
国土交通省 用途地域データ
おわりに
本記事では、用途地域について、その概要と種類、建築制限、調べ方などをわかりやすく解説しました。建築設計の際には、用途地域の確認を忘れずに行い、希望する建物を建てることができるようにしましょう。今後の設計や実務にお役立ていただければ幸いです。ありがとうございました。