
敷地内の通路の有効幅員の取り方について教えてください!

解釈と条件について、『建築物の防火避難規定の解説』をもとに解説します!
はじめに

建築物の避難計画を考える際に重要なのが「敷地内の通路」です。特に、大規模な建築物や特殊建築物では、災害時に安全かつ円滑な避難を確保するために、この通路の有効幅員や配置が厳しく求められます。しかし、法律上の規定が多く、適用範囲や具体的な算定方法に戸惑うことも多いでしょう。
本記事では、「敷地内の通路」の定義や適用対象を整理しながら、防火避難規定に基づく有効幅員の考え方を解説します。適切な計画を行うことで、避難の安全性を確保し、建築基準法に適合した建築設計を進めるための理解を深めていきましょう。

第1章 敷地内の通路とは?


敷地内の通路とは、建築物の避難階段等から地上へ下りてから、避難上有効な空地までスムーズに避難を行わせるための通路を指します。こちらは、建築物の防火避難規定の解説で記されています。
対象の建築物は?

下記条件に該当する場合、『敷地内の通路』の計画対象となります。
<条件>
① 法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる特殊建築物
② 階数が3以上の建築物
③ 政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物
④ 延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計)が1000㎡を超える建築物
建築基準法を見てみよう!
第六節 敷地内の避難上及び消火上必要な通路等
(適用の範囲)
第百二十七条 この節の規定は、法第三十五条に掲げる建築物に適用する。
(特殊建築物等の避難及び消火に関する技術的基準)
第三十五条 別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物又は延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計)が千平方メートルをこえる建築物については、廊下、階段、出入口その他の避難施設、消火栓せん、スプリンクラー、貯水槽そうその他の消火設備、排煙設備、非常用の照明装置及び進入口並びに敷地内の避難上及び消火上必要な通路は、政令で定める技術的基準に従つて、避難上及び消火上支障がないようにしなければならない。

『敷地内の通路』に関する条文は、建築基準法施行令第六節の第128条です!つまり、適用の範囲は、建築基準法第35条の対象建築物を参照する必要があるんだね!
対象の経路は?

以下の部分の経路に適用されます。
① 屋外への出口 〜 道・公園・広場・空地まで
② 屋外避難階段口 〜 道・公園・広場・空地まで
建築基準法を見てみよう!
(敷地内の通路)
第百二十八条 敷地内には、第百二十三条第二項の屋外に設ける避難階段及び第百二十五条第一項の出口から道又は公園、広場その他の空地に通ずる幅員が一・五メートル(階数が三以下で延べ面積が二百平方メートル未満の建築物の敷地内にあつては、九十センチメートル)以上の通路を設けなければならない。
(避難階段及び特別避難階段の構造)
第百二十三条 屋内に設ける避難階段は、次に定める構造としなければならない。
(中略)
2 屋外に設ける避難階段は、次に定める構造としなければならない。
一 階段は、その階段に通ずる出入口以外の開口部(開口面積が各々一平方メートル以内で、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備ではめごろし戸であるものが設けられたものを除く。)から二メートル以上の距離に設けること。
二 屋内から階段に通ずる出入口には、前項第六号の防火設備を設けること。
三 階段は、耐火構造とし、地上まで直通すること。
(屋外への出口)
第百二十五条 避難階においては、階段から屋外への出口の一に至る歩行距離は第百二十条に規定する数値以下と、居室(避難上有効な開口部を有するものを除く。)の各部分から屋外への出口の一に至る歩行距離は同条に規定する数値の二倍以下としなければならない。
2 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂又は集会場の客用に供する屋外への出口の戸は、内開きとしてはならない。
3 物品販売業を営む店舗の避難階に設ける屋外への出口の幅の合計は、床面積が最大の階における床面積百平方メートルにつき六十センチメートルの割合で計算した数値以上としなければならない。
4 前条第三項の規定は、前項の場合に準用する。

階数が3以下で延べ面積が200㎡未満の建築物の敷地内は、90cmでいいんだね!
第2章 敷地内の通路の取り扱い

令第128条に規定される敷地内の通路は、避難のための通路であるため、有効幅員は以下のように取り扱います。
塀などの扱いについて

有効幅員の合算について

有効幅員は、合算で1.5m以上の幅員を確保していても、敷地内の通路としては認められません。必ずまとまった寸法で1.5mを確保するようにしましょう。
スポンサーリンク敷地内通路として取り扱うための条件

建築基準法施行令第128条における「通路」は、敷地内の屋外にある通路と考えられます。ただし、以下の要件を満たし、かつ避難上問題がない場合には、敷地内通路として取り扱うことができます。
<条件>
① 通路の有効幅員を1.5m以上確保すること。
② 通路部分は、屋内部分と耐火構造の壁・床および常時閉鎖式の防火設備で区画し、通路の壁および天井の下地・仕上げを不燃材料とすること。
③ 通路部分は、外気に十分開放されていること。

これらの取り扱いは、狭小敷地などで敷地内通路を確保することが困難な場合に適用されるものであり、一般的には開放性のあるピロティなどが該当します。
第3章 「建築物の防火避難規定の解説」を手に入れよう!


建築基準法や国土交通省の告示や通達を見ても、
本記事に関する情報は、載ってニャイよね?

そうなんだよ。『建築物の防火避難規定の解説』にしか載っていないんだ。
つまりこれがないと、設計が行き詰まってしまう場合があるんだ。
設計者は必ず購入すべき本です!少し高いけど、ずっと使えるから持っておくべきだよ!
おわりに

「敷地内の通路」は、災害時の避難を確実にするために欠かせない要素です。適切な幅員を確保し、法的要件を満たすことで、安全性の向上だけでなく、建築計画のスムーズな進行にもつながります。
特に、防火避難規定に基づいた「1.5m以上の有効幅員」や「門扉の扱い」など、細かな要件を正しく理解しておくことが重要です。本記事の内容を参考に、敷地内通路の計画・設計を進めてみてください。
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