
「寒冷地や積雪が多い地域での監理上のコンクリート工事の留意点」について教えて下さい!

地域毎の特性を把握して計画に落とし込むことが重要だよね!
『寒冷地でのコンクリート工事の留意事項について』を解説しよう!
はじめに

寒冷地でのコンクリート工事は、気温や降雪、凍結といった自然条件による品質低下のリスクが高く、特に「凍害」「雪害」「低温障害」への対策が重要になります。コンクリートは一度凍結すると内部組織が破壊され、強度や耐久性が著しく低下します。そのため、打設前後の環境管理、養生方法、そして材料選定に細心の注意が求められます。
本記事では、「型枠関連」「寒中コンクリート」「打ち放しコンクリート」の3つの観点で、寒冷地施工時の注意点を解説します。

第1章 型枠関連の施工と雪氷対策

寒冷地の型枠工事では、雪氷の残留や再凍結が品質不良の主な原因となります。特に外気温が0℃を下回る環境では、施工前の準備が仕上がりを大きく左右します。
- コンクリート打設前に天候を確認し、降雪の可能性がある場合は型枠上をシートで覆うか上屋を設置する。
- 型枠内部や鉄筋に雪氷や霜が付着していないか確認し、スチームクリーナーなどで完全に融解させる。
- 融雪後は再凍結を防ぐため、加熱機器を用いて型枠内を温める。
- 外壁の打継ぎ部では、融雪水が下部で凍結しやすいため、型枠下部に確認穴を設けるなど、施工中の目視確認を可能にしておく。
このような「事前対策」と「加熱養生」を徹底することで、凍結による付着不良やコンクリートの空隙発生を防ぐことができます。
スポンサーリンク第2章 寒中コンクリートの管理と養生方法

寒中期に施工するコンクリートは、凍結前に必要な初期強度(50kg/cm²)を確保できるかどうかが品質の分かれ目です。温度管理を怠ると、表面凍結や構造欠陥が生じる恐れがあります。
施工時のポイントは以下の通りです。
- 打設後は加温・保温養生を行い、所定期間内に必要強度を確保する。
- 外気温が0℃以下になるときは、コンクリート露出部をシートや断熱材で覆い、温度が下がりすぎる場合は加熱養生を実施。
- 風による体感温度の低下を防ぐため、外気温が0℃以上でもシート養生を行うことが望ましい。
- 気温が連日氷点下となる場合は、型枠全体を覆うか上屋を設けることで内部温度を一定に保つ。
- 外気温が-10℃を下回る場合は、上屋内で加熱養生を行うことを基本とする。
- コンクリートの調合は、積算温度方式または気温補正によって設定する(参考:日本建築学会『寒中コンクリート施工指針』)。
- 打設後は自動記録温度計で温度を監視し、構造体温度と近い環境でテストピースを封かん養生する。
- 防凍剤の使用は慎重に検討し、必要最小限に留める。
これらを実践することで、低温下でも十分な強度と耐久性を確保でき、ひび割れや凍害のリスクを抑制します。
スポンサーリンク第3章 打ち放しコンクリートの凍害対策

寒冷地における打ち放しコンクリートは、美観と耐久性の両立が難しい工種です。特に、薄塗り補修を行った部分が凍結により剥離しやすい点に注意が必要です。
そのため、施工段階で以下の点を意識することが重要です。
- 密実なコンクリートを一度で打設し、補修の必要がない仕上がりを目指す。
- 万一補修が必要な場合は、寒冷環境での硬化特性を考慮した材料を使用する。
凍害による剥離や白華を防ぐためには、「打設前の計画」と「硬化中の温度管理」が最も有効な対策となります。
スポンサーリンクおわりに

寒冷地でのコンクリート工事は、施工環境の管理が品質そのものを決定づけるといっても過言ではありません。気温・風・湿度・雪氷といった自然条件を読み取り、打設から養生まで一連の流れを科学的にコントロールすることが重要です。凍害を防ぎ、長期にわたり美観と性能を維持するためには、「計画」「確認」「記録」の3つのプロセスを徹底すること。これこそが、寒冷地の現場で信頼される建築をつくるための基本です。
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積雪時の設計で参考になる書籍としては、下記を推奨します。非常に細部までまとめられていますので、寒冷地での計画に関わる人の必携本です。