
「寒冷地や積雪が多い地域での監理上の鉄骨工事の留意点」について教えて下さい!

地域毎の特性を把握して計画に落とし込むことが重要だよね!
『寒冷地での鉄骨工事の留意事項について』を解説しよう!
はじめに

冬季の鉄骨工事は、雪や低温が直接的に構造体や作業品質に影響するため、特別な注意が必要です。特に、建方作業中の安全確保、溶接部の割れ防止、塗装品質の保持など、気温や湿度が関係する工程は多岐にわたります。
本記事では、寒冷地や積雪地での「鉄骨建方」「溶接・ボルト接合」「錆止め塗装」の3つの工程に焦点をあて、それぞれの注意点と対策を整理しました。

第1章 鉄骨建方|雪害による滑落事故を防ぐための対応策

鉄骨建方は、冬季の現場では最もリスクが高い工程のひとつです。降雪や凍結により鉄骨材が滑りやすくなるため、安全確保を最優先に考える必要があります。
対応策
- 降雪時の建方作業は原則禁止。
鉄骨表面が雪や氷で滑りやすくなるため、原則として降雪中は建方を行わないようにします。やむを得ず実施する場合は、足場や歩行経路に滑り止めマットを設置し、安全帯の着用を徹底するなど、十分な安全対策を講じます。 - 作業計画段階で気象情報を重視。
寒冷地では天候の急変も多いため、前日からの降雪予報を確認し、早めに作業可否を判断できる体制を整えておきましょう。
第2章 溶接・高力ボルト接合|低温・凍害による品質低下を防ぐ方法

鉄骨同士をつなぐ溶接接合や高力ボルト接合は、低温の影響を大きく受ける工程です。金属が冷えている状態で溶接を行うと割れやすく、またボルト部に雪氷が残ると摩擦接合不良の原因になります。
溶接接合への対策
- 悪天候時の作業は中止。
降雪や強風が発生している場合は、溶接を行わないことが基本です。雪が舞う中では視認性も低下し、アーク溶接の品質管理が困難になります。 - 気温0℃以下では母材を予熱する。
溶接部から100mm以上の範囲で、母材温度を36℃以上に加温してから施工を開始します。こうすることで、金属が冷却されすぎて溶接割れを起こすのを防ぎます。 - 溶接後は養生して急冷を防止。
低温環境では溶接部が急激に冷やされるとひび割れが発生するため、ブランケットやヒーターで保温養生を行いましょう。
高力ボルト接合への対策
- 接合部の雪氷を完全に除去。
高力ボルトの摩擦接合部に雪や氷が残っていると、摩擦力が発揮されずボルトが緩む恐れがあります。必ず温風で乾燥させ、接合面を完全に乾かした状態で締結します。
第3章 錆止め塗装|低温下での塗装不良を防ぐ環境管理

錆止め塗装は、気温・湿度の条件が仕上がりを左右するデリケートな作業です。寒冷地では乾燥が遅れたり、結露により密着不良が発生するリスクがあるため、施工環境の管理が不可欠です。
対応策
- 施工条件を守る。
錆止め塗装は、気温5℃以上・相対湿度80%以下の環境で行うのが原則です。条件を満たさない場合は、加温や除湿設備を使用して環境を整える必要があります。 - 鉄骨表面の結露を防止。
朝晩の寒暖差で鉄骨に結露が生じることがあるため、作業前には必ず表面状態を確認し、乾燥させてから塗装を開始します。
おわりに

寒冷地や積雪地での鉄骨工事は、「安全確保」と「品質管理」の両立が難しい季節施工の代表例です。建方・溶接・塗装のいずれの工程も、「作業環境の把握」と「事前の準備」が最も重要です。降雪予報のチェックや温度管理の徹底、適切な養生など、ほんの少しの工夫でトラブルは大きく減らせます。冬の現場では、「焦らず、安全第一で確実に」を合言葉に、品質と安全の両立を目指しましょう。
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積雪時の設計で参考になる書籍としては、下記を推奨します。非常に細部までまとめられていますので、寒冷地での計画に関わる人の必携本です。