
「寒冷地や積雪が多い地域での建築設計の外構の留意点」について教えて下さい!

地域毎の特性を把握して計画に落とし込むことが重要だよね!
『寒冷地での外構計画の留意事項について』を解説しよう!
はじめに

寒冷地における建築では、外構計画の配慮が建物の耐久性や安全性を大きく左右します。特に雪や凍結による被害は、外壁や屋根だけでなく、駐車場・舗装・階段・手すりといった“屋外構造”にも深刻な影響を与えます。
この記事では、寒冷地の外構設計で注意すべきトラブル事例と有効な対策方法を、分かりやすく解説します。

第1章 駐車場の設計上の留意点について

雪による使用制限を防ぐための工夫
除雪や排雪が困難な敷地では、冬季に駐車場が使えなくなることがあります。
積雪の影響を受けにくくするには、屋根(カーポート)を設けるか、融雪装置を導入することが効果的です。
主な対策:
- 上屋を設置して積雪を防止する。
- ロードヒーティングなどの融雪システムを採用する。
除雪作業と車止めの関係
除雪車の稼働時、車止めや段差が作業の妨げになるケースがあります。外構計画の段階から、除雪動線を考慮することが重要です。
主な対策:
- 車止めを設けない計画とする。
- 路端ポールで境界を明確にし、縁石の破損を防ぐ。
視認性の確保
積雪で路面標示(区画線や車いすマークなど)が隠れることがあります。サイン板を高い位置に設置して、冬でも視認できるようにしましょう。
主な対策:
- 雪に埋もれない高さにサインを設置する。
雪の保管スペースを確保する
除雪した雪の置き場がなく、車路が狭くなるトラブルもよくあります。堆雪スペースの確保や融雪槽の導入で対応可能です。
主な対策:
- 敷地内に堆雪スペースを設ける。
- 融雪槽を設置して排雪を効率化する。
第2章 舗装計画と凍上対策について

凍上による舗装の浮き上がり
寒冷地では、地盤凍結による「凍上」で舗装面が浮き上がることがあります。凍上抑制層を適切に設けることで、舗装の変形を防ぐことができます。
主な対策:
- 使用条件に合った舗装構成とし、凍上抑制層を設置する。
路面凍結と滑り防止
冬季は雪解け水が再凍結し、転倒事故の原因になります。排水計画と融雪設備の併用が有効です。
主な対策:
- 勾配や排水方向を適正に設定する。
- ロードヒーティングを導入する(特にバリアフリー通路)。
雪解けによるぬかるみ防止
未舗装部分は雪解けでぬかるみやすくなります。透水性のある砂利や砕石に置換し、排水処理を確保しましょう。
主な対策:
- 砂利や砕石で水はけを改善する。
- 通路部分には舗装を施す。
除雪による舗装損傷
除雪車のブレードによって舗装表面が傷みやすくなることがあります。補修のしやすさを考慮して、アスファルト舗装などを採用しましょう。
主な対策:
- 補修しやすい舗装材(アスファルト)を選定する。
- 融雪部のコンクリートは増し打ちして保護する。
水はけの悪い地盤での注意
泥炭や粘土質の地盤では凍上リスクが高まります。地盤置換と排水対策をセットで検討する必要があります。
主な対策:
- 凍結深度以下まで掘削し、透水性の高い砂や砕石に置換する。
第3章 段差・仕上げ材の工夫

ロードヒーティングとの取り合い
融雪エリアと非融雪エリアの境界は、温度差で段差や凍結が生じやすくなります。
主な対策:
- ヒーティング側に排水溝を設ける。
- 非融雪側の雪を削って段差を解消する。
凍結融解による仕上げの破損
出入口や犬走りなどの仕上げ材は、凍結と融解を繰り返して損傷しやすい部位です。
主な対策:
- 勾配(1/50程度)を確保し、水を溜めない。
- 吸水率の低い素材を使用する。
- モルタル仕上げを避け、角部は縁石や金物で補強する。
滑り防止の工夫
滑らかな石材やタイルは、雪で非常に滑りやすくなります。防滑性のある仕上げ材や融雪設備を組み合わせて安全性を確保します。
主な対策:
- 防滑仕上げ材を使用する。
- ロードヒーティングを設置する。
- 熱容量の大きい石材は、温度ムラに注意して納める。
第4章 凍上を防ぐための設計的配慮

ポーチやピロティなど、外気に接する床面は冷却面積が大きく、凍上が発生しやすい箇所です。構造的な工夫で被害を最小限に抑えることができます。
主な対策:
- スラブ端部に基礎を設け、凍結深度以下まで根入れする。
- スラブ下を凍上しにくい砂や砂利に置換する。
- 片持ちスラブ構造を採用して変形を抑える。
おわりに

寒冷地の外構設計は、「冬を制するものが建築を制する」と言っても過言ではありません。積雪・凍結・融雪を想定した設計は、建物の寿命だけでなく、利用者の安全にも直結します。小さな納まりの工夫が、長期的な維持管理コストを大きく左右します。
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積雪時の設計で参考になる書籍としては、下記を推奨します。非常に細部までまとめられていますので、寒冷地での計画に関わる人の必携本です。