
「寒冷地や積雪が多い地域での監理上の石工事の留意点」について教えて下さい!

地域毎の特性を把握して計画に落とし込むことが重要だよね!
『寒冷地での石工事の留意事項について』を解説しよう!
はじめに

寒冷地や積雪地域での石工事は、凍害の影響を最も受けやすい仕上げ工事のひとつです。特に湿式工法の場合、モルタルや目地から水が浸入・凍結し、剥離やひび割れといった深刻な損傷を引き起こします。
この記事では、冬季施工時の工法選定・施工条件・仕上げの3つの観点から、現場で実践できる凍害対策をわかりやすく整理しました。寒冷期に外壁石張りや石積みを行う設計者・施工者の方は、ぜひ参考にしてください。

第1章 工法の選定|冬季は乾式・先付け工法が基本

冬季の施工では、まず「湿式を避ける」という判断が最も重要です。モルタルを使用する湿式工法は、凍結による付着不良や剥離リスクが高く、寒冷地では特に不向きです。
- 冬期間は乾式工法または先付け工法を採用する
- 乾式金物を使用し、モルタルを使わない構法を検討する
- 石材裏面に通気層を確保し、結露や凍結水の排出を促す
これにより、温度や湿度の影響を受けにくくなり、長期的な耐久性を確保することができます。
スポンサーリンク第2章 施工条件|気温・凍結リスクに応じた養生と判断

やむを得ず湿式工法で施工する場合は、気温の確認と養生の徹底が不可欠です。モルタルが硬化する前に凍結すると、強度不足・付着不良・仕上げ剥離などを引き起こすため、施工可否の判断を慎重に行う必要があります。
- 冬季施工は極力避ける(特に外装部)
- モルタル施工時の気温が2℃以下、または施工後に0℃以下になる恐れがある場合は施工中止
- やむを得ず施工する場合は、保温養生・採暖を実施し、モルタルの凍結を防止
施工時は外気温だけでなく、下地温度や風の強さも確認することが大切です。
スポンサーリンク第3章 その他の留意点|目地と裏込めで凍害を防ぐ

湿式工法での凍害は、多くの場合水の侵入経路に起因します。目地や裏込めの施工精度が低いと、内部に浸入した水が凍結・膨張し、石材を押し出すように破壊してしまいます。
- 目地からの浸水を防ぐため、弾性シーリング材を充填する
- 裏込めモルタルは、隙間なく充填し空洞をつくらない
- 施工後は雨雪が当たらないよう、上屋掛けやブルーシートで養生を行う
これらの対策により、凍結による石材の剥離・割れを大幅に減らすことができます。
スポンサーリンクおわりに

寒冷地での石工事は、水と温度の管理がすべての品質を左右します。とくに冬季は、モルタルの硬化不良や凍結膨張による剥離など、外気条件が直接仕上げに影響を与える季節です。「どうしても冬に施工しなければならない」場合こそ、乾式工法の採用や保温養生の徹底が必要です。設計段階での工法選定と、現場での確実な管理を両立させることで、美観と耐久性を兼ね備えた石仕上げを実現できます。
スポンサーリンク寒冷地での計画に関してのおすすめ書籍

積雪時の設計で参考になる書籍としては、下記を推奨します。非常に細部までまとめられていますので、寒冷地での計画に関わる人の必携本です。