【寒冷地/積雪地】開口部(窓・ガラス・トップライト・シャッター)の設計上の注意点

建築知識
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一級建築士 / DJ / ブロガー / TOEIC815 / 設計事務所勤務。建築・不動産関連及び宿泊事業に関するサイト「アーキクエスト」の運営者。JIA優秀賞受賞/元組織設計事務所勤務/学生コンペ受賞/米国バックパッカー

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見習い女の子
見習い女の子

「寒冷地や積雪が多い地域での建築設計の開口部(窓やガラス、トップライト、シャッターなど)の留意点」について教えて下さい!

建築戦士スー
建築戦士スー

地域毎の特性を把握して計画に落とし込むことが重要だよね
寒冷地での留意事項について』を解説しよう!

はじめに

寒冷地の番人が現れた
寒冷地の番人が現れた

積雪や寒風が厳しい地域では、建物の快適性や耐久性を確保するため、一般的な設計では不十分なことがあります。窓やガラス、トップライト、換気口、シャッターなど、各部位の性能や納まりの違いによって、結露や凍害、雪害のリスクが大きく変わるためです。
本記事では、寒冷地・積雪地域における開口部計画に関しての重要ポイントを解説します。建物の快適性や安全性を高めるための具体的な対策や注意点を、カテゴリーごとに整理して紹介します。

記事のレベル
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第1章 サッシの設計と断熱対策

断熱性能を極める開口部
断熱性能を極める開口部

寒冷地では窓まわりの断熱性能が不十分だと結露やカビが発生し、室内環境や健康にも影響します。正しい仕様選定と納まりが重要です。

結露対策

  • 高断熱窓を採用:外側アルミサッシ+内側樹脂ペアガラス(二重サッシ)が実務で多く使用されます。
  • 断熱サッシは外壁断熱とサッシ断熱部を連続させ、熱橋を防ぐ。
  • 一重アルミサッシ(ペアガラス)は結露防止が不十分なため、結露受けを十分に設置。
  • 結露受けの水は拭き取り式、排水経路は屋内ルートを推奨。
  • プールや浴室では水がサッシに流れ込まないよう室内勾配で設計。

外壁からの突出と結露

  • 外壁面より内側にサッシを設置することで結露を低減。

カーテンウォールスパンドレル部の結露

  • 天井懐の漏気防止や断熱処理で熱伝導を抑える。
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第2章 ガラスの凍害対策

特注の天空ガラスを採用する神殿
特注の天空ガラスを採用する神殿

寒冷地では複層ガラスの封着部に水が入り込むと凍害が起こり、ガラス性能が低下します。設計段階で水の排出とシール幅を十分に確保することが重要です。

  • 複層ガラスの飲み込み代は15mm以上確保。
  • ガラスシール幅は厚いガラス6.8mm以下の場合5mm以上、8mm以上の場合7mm以上。
  • 下枠に8mm以上の水抜き穴を設け、浸入水を排出。
  • シーリング材はシリコーン系を使用。
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第3章 水切皿板の雪害対策

水切皿板の秘宝を探し出す勇者達
水切皿板の秘宝を探し出す勇者達

雪や凍結により皿板に雪氷が堆積すると、建具の開閉が妨げられます。勾配や形状の工夫で雪害を軽減できます。

  • 水切れの良い材料・形状を選定。
  • 皿板の勾配は30度以上、可能なら45度。先端は壁面から約20mm突出。
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第4章 トップライトの結露・雪害対策

結露を排除する魔物の家
結露を排除する魔物の家

トップライトは結露が発生しやすく、また積雪によって採光が低下することがあります。設置位置や断熱性能、排水経路の工夫が求められます。

結露対策

  • 空気循環装置や吹出口でガラス周辺の空気を動かす。
  • 湿気の多い場所への設置は避ける。
  • 水滴排出用の勾配、結露受け、排水経路を確保。
  • 高断熱サッシやペアガラス、発熱ガラスを検討。

採光低下対策

  • ハイサイドライトの利用。
  • 陸屋根トップライトは45度以上の勾配で設置、立ち上がりは積雪量に応じて決定。
  • 必要照度は照明で補う。
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第5章 換気口・ガラリの雪害対策

天空は風が強すぎてガラリも換気口も機能しない
天空は風が強すぎてガラリも換気口も機能しない

雪や氷で換気口・ガラリが塞がれると換気性能が低下します。取り付け位置や庇の工夫、排水設計が重要です。

  • 庇、防雪フード、防風板を設置。
  • 吹きだまりを考慮した位置決め。
  • チャンバー設置と排水経路の確保。
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第6章 シャッターの雪害対策

ステンドグラス風のひみつのシャッター扉
ステンドグラス風のひみつのシャッター扉

雪が堆積するとシャッターに側圧がかかり変形する恐れがあります。強度設計と雪処理の工夫で安全性を確保します。

  • 側圧に耐えるスラット強度を確保。
  • 庇などで前面の雪処理を行う。
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おわりに

寒冷地の知識を手にいれた
寒冷地の知識を手にいれた

積雪寒風地での建築は、設計の段階から各部位の特性を理解し、細やかな対策を講じることが非常に重要です。窓やガラスの断熱、結露対策、トップライトの設置や採光計画、換気口やシャッターの雪害対策など、ひとつひとつの工夫が居住快適性や建物の耐久性に直結します。
本記事で紹介したポイントを設計に取り入れることで、居住者にとって快適で健康的な住環境を提供し、長期にわたって安全に使用できる建物を実現できます。寒冷地ならではの課題に対応することで、設計の質を高め、トラブルを未然に防ぐことが可能です。

カテゴリー主な問題主な原因対応策
サッシ結露、カビ断熱不足、外壁突出高断熱窓、二重サッシ、結露受け、内側設置
ガラス凍害水浸入飲み込み代15mm以上、シール幅確保、水抜き穴、シリコーンシール
水切皿板開閉支障雪害・凍害水切れ良く、勾配30~45度、先端壁面20mm突出
トップライト結露、水滴、採光低下結露・雪害空気循環、断熱サッシ、発熱ガラス、勾配・排水経路確保、ハイサイドライト
換気口・ガラリ給排気口閉塞雪害・凍害庇・防雪フード・防風板設置、チャンバーと排水配慮
シャッター側圧による変形雪害強度確保、雪処理対策(庇など)
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寒冷地での計画に関してのおすすめ書籍

勇者を救う救世主が残した魔本
勇者を救う救世主が残した魔本

積雪時の設計で参考になる書籍としては、下記を推奨します。非常に細部までまとめられていますので、寒冷地での計画に関わる人の必携本です。

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