
「寒冷地や積雪が多い地域での仮設工事の留意点」について教えて下さい!

地域毎の特性を把握して計画に落とし込むことが重要だよね!
『寒冷地での仮設工事の留意事項について』を解説しよう!
はじめに

寒冷地の工事現場では、雪害・凍害・低温障害といった自然条件が常に付きまといます。冬季の施工は工程が遅れがちになり、労務効率や安全性にも影響が出やすいのが実情です。
本記事では、寒冷地での仮設工事における設計・施工のポイントを体系的に整理しました。各章では「何が問題になりやすいのか」「どう防ぐのか」を簡潔にまとめています。

第1章 工程計画|冬を見越したスケジューリング

冬季施工では、雪や低温による作業効率の低下や資材調達の遅延が大きな課題です。適切な工程計画を立てることで、工事の停滞を最小限に抑えることができます。
主な課題
- 寒冷による作業効率の低下
- 材料の搬入や施工タイミングの制約
対応策
- 雪や寒さの影響を受けにくい工法を採用する
- 準備期間に余裕を持たせた工程計画を立案
- 冬季の工事休止時は、適切な養生方法を事前に検討
第2章 準備段階|地域特性と気象データの把握

寒冷地では、地域ごとの気候条件や凍結深度の違いを正しく理解することが重要です。事前準備が不十分だと、設計段階での想定ミスが施工中のトラブルにつながります。
主な課題
- 過去の気象データの未収集による設計・施工リスク
- 地域特性を考慮しない工事計画
対応策
- 過去10年分の気象資料(気温・降雪量・風速など)を収集
- 凍結深度や積雪傾向を把握し、計画に反映
- 寒冷地の施工記録や事例を調査・共有
第3章 資材計画|冬季対応の材料選定と在庫管理

寒冷期は資材の供給が不安定になり、温度制限付きの材料も増えます。資材の選定・発注・保管を早期に行うことが、現場停滞を防ぐ鍵になります。
主な課題
- 材料供給の遅延や不足
- 気温条件を満たさない資材の使用
対応策
- 冬期休業に備えた前倒し発注と在庫確保
- コンクリートの生産能力・運搬距離を事前確認
- 冬季仕様の吹付材・シーリング材を採用
- 養生・除雪用の資材(防風シート・融雪機器など)を整備
第4章 労務計画|寒さに負けない作業体制をつくる

寒冷地では、雪や低温により作業員の負担が増大します。労務計画の精度を高めることで、安全かつ効率的な作業環境を維持できます。
主な課題
- 交通障害による通勤遅延
- 低温環境による作業効率低下
対応策
- 悪天候時の交通ルートや代替手段を確保
- 労務効率低下を見込み、人員配置に余裕を持たせる
- 採暖された休憩所を設置し、作業員の健康を守る
第5章 安全・衛生管理|雪氷事故と低温リスクを防ぐ

冬季現場の安全管理では、落雪・凍結・一酸化炭素中毒など複合的なリスクが発生します。衛生面でも感染症対策を徹底することが欠かせません。
対応策
- 除雪と安全帯の徹底で転落事故を防止
- 雪止め・防護ネットを設けて落雪氷の危険を回避
- 加熱器具使用時は換気を十分に確保
- 現場の清掃・換気・衛生管理を日常化する
第6章 防火管理|暖房設備使用時の火災対策

冬季は暖房器具やボイラーの使用が増え、火災リスクが上昇します。防火体制の強化は、寒冷地の現場運営において欠かせません。
対応策
- 消火設備を整備し、定期的に防火訓練を実施
- 暖房機器の排気・点検をこまめに行う
第7章 養生計画|風雪に耐える仮設構造を設計する

養生設備は、冬季の強風・積雪により破損・倒壊の危険があります。安全で保温性の高い養生を行うことが、品質維持と工期短縮につながります。
対応策
- 雪荷重・風圧に耐える強度のある養生構造を設置
- 防風シートを風上側に配置し、内部温度を安定
- 加熱機器は熱量計算の上で配置し、効率的に使用
第8章 プレハブ事務所・仮設施設|積雪対策を考慮した設計

仮設のプレハブ事務所や休憩所では、積雪や落雪による事故が発生しやすい。構造・配置の工夫で安全性と快適性を両立する必要があります。
対応策
- 寒冷地仕様のプレハブを使用
- 許容積雪荷重を超えた場合は雪下ろしを実施
- 融雪マットや庇・雪止めを設置し、転倒・落雪を防ぐ
- 通路や階段は囲いを設けて風雪から保護
第9章 登り桟橋・階段|滑り事故防止の基本

登り桟橋や階段は、雪や氷が付着しやすい場所。定期的な除雪と滑り止め対策で、転倒事故を防止します。
対応策
- 定期的な除雪と滑り止め設置
- 必要に応じて融雪マットを併用
第10章 仮設給排水|配管凍結を防ぐ設計と施工

仮設給排水は凍結・破損のリスクが高く、凍害対策が必須です。凍結深度やヒーター設置など、設計段階から対策を講じましょう。
対応策
- 給水配管を凍結深度以下に埋設し、水抜き栓を設ける
- 凍結防止ヒーターを設置
- 排水管に十分な勾配を取り、滞水を防止
- トイレ・洗面所などは採暖・ヒーターで凍結防止
第11章 上屋計画|安全性と快適性を両立する構造計画

上屋(仮設屋根)は、作業効率を守るための重要な要素。積雪・風圧・採光を考慮したバランスの良い設計が求められます。
対応策
- 上屋の採否を検討し、構造形式を適切に選定
- 積雪荷重・風圧に耐えるよう補強を実施
- 内部空間を十分に確保し、落雪リスクを軽減
- 作業環境を考慮し、採光・照明計画を整備
おわりに

寒冷地の仮設工事では、自然条件を制御する設計力が現場の成否を分けます。雪や氷は避けられないものですが、正しい計画と準備によって、それらを“予測できるリスク”へと変えることが可能です。「気象を読む力と、余裕ある工程設計」。この2つが、冬の現場を安全かつ効率的に進めるための最大の武器です。
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積雪時の設計で参考になる書籍としては、下記を推奨します。非常に細部までまとめられていますので、寒冷地での計画に関わる人の必携本です。