
見習い女の子
運用中の安全性や不具合防止に向けた建築計画の留意点について教えて下さい!

建築戦士スー
事業推進をする方やプロジェクトマネージャーの目線で『管理・運用での留意点』を解説します!
はじめに

建物の品質を左右する大きな要素のひとつが、「計画段階でどこまでリスクをつぶしておけるか」です。外装の落下、漏水、設備の不具合、連動システムの不備……。竣工後にこれらが発生すると、建物利用者の安全を脅かすだけでなく、補修コストも膨大になります。
本記事では、一級建築士の視点から“安全確保・不具合防止”に関わる重要チェック項目を体系的に整理しました。

第1章 落下・安全性に関わるチェックポイント

外装材の落下(CW・石材・金属外壁・サイン等)
対応策
- 施工計画書に沿った施工管理と定期的な点検を徹底する
- 強度検討書等で不適格な外装材を排除
- 石・タイル・金属外壁の剥離対策を施工時に反映
- カーテンウォール外装の飛散防止策を実施
- サイン類は保持材の強度を計算し安全性を確保
内装材の落下(天井材・器具類)
対応策
- 施工計画書に準拠した施工・点検を行う
- 軒天は耐風仕様(LGS、ビスピッチ等)に基づく施工
- システム天井・大面積天井は耐震仕様で施工
- サイン等は保持材強度を算定
メンテナンス通路からの落下
対応策
- 施工図を作成し、危険箇所を明示・対策
手すり・吹抜けからの落下
対応策
- 施工図に基づき危険ポイントに対処
床のすべり・段差によるつまずき
対応策
- 規定の防滑性能を満たす材料を選定
- 段差をなくすか、注意表示を設置
衝突事故の防止
対応策
- 衝突リスクを施工図で事前に排除
- 衝突が起きやすい部位には表示を設置
- 必要に応じて緩衝材を設置
扉の隙間による挟まれ
対応策
- 施工図レベルで危険箇所を検討
- メーカー仕様に基づき挟まれ防止措置を施工
第2章 EV・ESC・ゴンドラ・オートドア等の安全性

ロープ性能
対応策
- メーカー施工図と検査記録を確認
制御システム(閉じ込め事故防止)
対応策
- メーカー施工図・検査記録を確認
エスカレーター周辺の安全
対応策
- 設置基準・仕様通りに施工されているか確認
- メーカー図面・検査記録のチェック
ゴンドラの安全性
対応策
- 操作・各機能の安全点検
- 官庁検査結果の確認
- メーカーと協議し、安全性を確保したうえで設置
オートドア・回転扉・シャッター
対応策
- 必要な安全装置の設置と妥当性の確認
- 停電・災害時の避難経路・方法を事前に確認
第3章 漏水・結露のリスク管理

屋根
対応策
- 防水納まり・施工図の作成
- 施工計画書に基づく施工
- 水張り検査の実施
外壁
対応策
- 施工図・特殊納まり図の作成
- 施工計画書に沿った施工・検査
- シーリング接着試験の実施
- 雨天時の施工状況を点検
厨房・浴室・重要室上部
対応策
- 防水種別の確認
- 防水納まり・施工図の整備
- 配管貫通部の適切な処理
- 必要に応じて水張り検査
設備漏水
対応策
- 水圧試験・満水試験・通水試験の実施
- スプリンクラー等の破損リスクへの対応策を計画
- 漏水発生時の損害対応フローを整理
第4章 防災設備の連動確認

建具・防火シャッター
対応策
- 防災連動試験で全数確認
- メーカー・施工者による検査の実施
ダンパー・排煙設備・空調機
対応策
- 防災連動試験を全数実施
- メーカー・施工者検査を確認
非常放送・自火報・非常照明・自家発・パニックオープン・非常用EV
対応策
- 全数連動試験を実施
- メーカー・施工者検査
衛生系(消火設備・ガス遮断)
対応策
- 全数連動試験
- メーカー・施工者検査
第5章 停電防止のためのチェック

漏電
対応策
- 定格感度電流の整合を確認
- 変圧器B種接地線の漏洩電流を点検
接続部接触不良・絶縁不良
対応策
- 増し締めマーキング・確認シールの目視
- 絶縁抵抗試験の実施
容量オーバー
対応策
- 全負荷試験(照明・空調・換気・動力・水)を実施
第6章 セキュリティ連動の確認

電気錠(メタルキー含む)・セキュリティゲート・カードリーダー・パッシブセンサー・照明・エレベーター
共通対応策
- 全数動作確認
- セキュリティ連動試験の実施
第7章 振動・騒音対策

空調・衛生設備
対応策
- 振動・騒音が規定値以内か測定
- 各室で普通騒音計による測定(暗騒音・外部騒音含む)
- 問題が想定される箇所の事前確認
第8章 接触不備(給水・排水・ガス・ダクト)

給水
対応策
- クロスコネクションの有無
- 上水=通水試験、中水=着色水試験
排水
対応策
- 満水試験の実施
ガス
対応策
- 気密試験の実施
ダクト
対応策
- 風量・温度・湿度の測定
第9章 臭気対策

排気による周囲環境への配慮
対応策
- 厨房排気・除害設備・ごみ処理排気の対策を実施
おわりに

建物の品質と安全性を高めるには、計画段階から施工・検査に至るまで、一つひとつの確認を積み重ねることが欠かせません。落下や漏水、設備トラブルは「起きてからでは遅い」ため、今回のリストを参考に、プロジェクトごとのチェック体制に組み込みやすい形で活用していただければと思います。
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