
見習い女の子
「寒冷地や積雪が多い地域での給排水設備計画の留意点」について教えて下さい!

建築戦士スー
地域毎の特性を把握して計画に落とし込むことが重要だよね!
『寒冷地での給排水設備計画の留意事項について』を解説しよう!
はじめに

寒冷地では、給排水設備が 凍結や積雪による障害 を受けやすく、設計の段階で入念な対策を講じる必要があります。配管の破損や断水、メーターの凍結といったトラブルは、設備の機能だけでなく、建物の維持管理コストにも直結します。
本記事では、寒冷地での「給排水設備計画」における主要な注意点と対策を、カテゴリー別に整理して解説します。

第1章 量水器の凍結・積雪対策について

主な課題
- 凍結による破損
- 積雪による検針の妨げ
対策ポイント
- 量水器は凍結深度以下に設置する。
- 寒冷地仕様(二重ぶた・断熱型ボックスなど)の製品を採用する。
- 検針の効率化には遠隔計測メーターを導入する。
第2章 給水管の凍結防止計画について

主な課題
- 凍結による断水・配管破損
対策ポイント
- 給水管は断熱された1階床下ピット内に配置する。
- 水抜き栓を設け、容易に排水できる構造とする。
- 配管は先上り方式とし、U字や門型配管は避ける。
- 凍結の恐れがある箇所はヒーターと防露材で保護。
- 水抜き水は浸透桝や湧水層など単純系統で処理する。
第3章 パイプシャフトの断熱設計について

主な課題
- 外気に近いPSの凍結による配管破損
対策ポイント
- PSは外周部を避けて配置。やむを得ない場合は断熱・採暖を行う。
- 点検扉は断熱エアタイト型(SAT)を採用する。
第4章 受水槽・給水ポンプの凍結防止について

主な課題
- 機器や配管の凍結・故障
対策ポイント
- 受水槽・ポンプは可能な限り屋内に設置。
- 受水槽室の断熱・採暖を行い、室温を5℃以上に保つ。
- 屋外設置の場合は断熱構造のタンクを採用し、配管やマンホールも凍結防止対策を実施。
第5章 通気管のつらら・落下防止策について

主な課題
- 通気管先端につららが発生する
対策ポイント
- 給湯系排水の通気管は屋上まで立ち上げる。
- 外壁面に設置する場合は風上を避け、バルコニーなど安全な位置とする。
第6章 消火設備の凍結・積雪対策について

主な課題
- 凍結による消火機能の喪失
- 積雪で送水口が使用できない
対策ポイント
- 外気に接する配管は乾式方式を基本とする。
- 凍結深度以下に敷設し、立ち上がりには水抜装置を設ける。
- 半屋外や屋外の駐車場では粉末消火設備を検討。
- 送水口は落雪のない位置に設置し、除雪動線を確保する。
第7章 排水設備と竪樋の凍結対策について

主な課題
- 排水桝・竪樋の凍上・凍結
対策ポイント
- 排水桝は底部を凍結深度以下に設ける。
- バルコニードレンは間接排水とし、屋上排水を落とさない。
- 竪樋は100mm以上の口径とし、暖房室経由のルートを確保。
- 凍結防止ヒーター(テープ型・挿入型)を設置する。
第8章 FF式湯沸器と給排気計画について

主な課題
- 配管・コイルの凍結破損
- 積雪による給排気トップの閉塞
対策ポイント
- 寒冷地対応のFF式湯沸器を採用(水抜き装置・ヒーター付き)。
- 給排気トップは積雪面より高い位置に設ける。
- 屋根からの落雪が直撃しない位置を選定する。
第9章 給湯管・ポンプ・膨張タンクの防凍設計について

給湯管・ポンプ
- 常時循環方式を採用。長期間使用しない場合は水抜きを実施。
膨張タンク
- 密閉式を基本とし、開放型の場合は凍結防止対策を実施。
- 設置室内は採暖する。
第10章 衛生器具・散水栓の凍結防止策について

衛生器具
- 寒冷地仕様の水栓・便器を採用。
- トイレは5℃以下にならないように管理。
- フラッシュバルブ類は水抜き不可のため採暖を行う。
散水栓
- 必ず水抜き装置を設ける。
第11章 屋内給排水管の防露対策について

主な課題
- 水温低下による配管表面の結露
対策ポイント
- 配管に防露処理を施し、湿気の滞留を防ぐ。
おわりに

寒冷地での給排水設備設計は、単に「凍らせない」だけでなく、維持管理やコスト、利用者の安全性 を見据えた総合的な判断が求められます。特に凍結深度、外気との接触、採暖条件の3点を押さえることで、長期的に安定した設備運用が可能になります。
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積雪時の設計で参考になる書籍としては、下記を推奨します。非常に細部までまとめられていますので、寒冷地での計画に関わる人の必携本です。
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