宿泊施設の計画をすることが多いけど、
国立公園内の設計は初めてです。
特に自然公園法は見落としが怖いっす。。。
私は、普段自然公園法の特別地域内で設計案件を行っています。
一般地域と特別地域では規制力も段違いだから要注意ですよ!
- はじめに
- 第1章 本記事の解説内容について
- 第2章 敷地の与条件を把握しよう!
- 第3章 公園種別毎の規制行為を把握しよう!
- 第4章 特別地域には、3つの区分がある!
- 第5章 規制内容が知りたい時はここを確認!(自然公園法施行規則第11条)
- 1項 仮設の建築物に関する事項
- 2項 公園事業従事者若しくは農林漁業従事者の住宅に関する事項
- 3項 農林漁業に必要な建築物に関する事項
- 4項 集合別荘、集合住宅、保養所、用途上不可分の建築物に関する事項
- 5項 基準日前の造成行為若しくは着手工事に関する事項
- 6項 1~5項以外の建築に関する事項
- 7項 車道の新築に関する事項
- 8項 車道の改築または増築に関する事項
- 9項 分譲地等の造成を目的としたインフラ設備(道路や上下水道)に関する事項
- 10項 屋外運動施設に関する事項
- 11項 風力発電施設に関する事項
- 12項 太陽光発電施設に関する事項
- 13項 1~12項以外の仮設工作物に関する事項
- 14項 1~13項以外の工作物に関する事項
- 15項 木竹の伐採に関する事項
- 16項 指定区域内の木竹の損傷に関する事項
- 17項 露天掘り以外 の鉱物掘採若しく土砂採取に関する事項
- 18項 露天掘り の鉱物掘採若しく土砂採取に関する事項
- 19項 河川や湖沼の水位・水量の増減に関する事項
- 20項 指定湖沼・湿原等への汚水廃水に関する事項
- 21項 広告物に関する事項
- 22項 屋外での土石などの集積・貯蔵に関する事項
- 23項 埋立て・干拓に関する事項
- 24項 土地の開墾・形状変更に関する事項
- 25項 指定動植物の保護(採取・損傷・捕獲・殺傷)に関する事項
- 26項 指定区域内の指定動植物に関する事項
- 27項 指定区域内の指定動物の放出に関する事項
- 28項 色彩(屋根や壁面など)に関する事項
- 29項 指定区域への立入などに関する事項
- 30項 木竹や動植物の保護(損傷・採取・捕獲・殺傷等)に関する事項
- 31項 木竹や植物の保護(植栽・種まき)に関する事項
- 32項 動物の放出・屋外での行為(集積・貯蔵・火入れ・焚き火・車馬・係留・動力船)に関する事項
- 33項 動植物の保護(熱帯魚・その他指定種)に関する事項
- 34項 海底の形状変更に関する事項
- 35項 汚水・廃水に関する事項
- 36項 基準の特例に関する事項
- 37項 各行為共通の基準に関する事項
はじめに
コロナ禍が明けてインバウンド需要も活況の中、日本の自然資源の価値が見直されてきています。そんな自然の恩恵を享受しやすい環境での宿泊施設の建設がラッシュを迎えています。特に自然公園法が関係する国立公園や国定公園などの建築規制は、普段扱うことが少ないと思います。そんな自然公園法に馴染みの無い設計士の方々に向けて、自然公園法の建築規制について解説をします。
国立公園内での設計業務が多い私から見た重要条文など
現場ベースでの考えを直接お伝えできればと思います。
第1章 本記事の解説内容について
建築規制を理解する上で、自然公園法の大枠について正しく理解していることが大前提となります。下記記事にて自然公園法とはなんぞや?の解説を行いましたので、必ずご確認を頂いた上で本記事をお読み下さい。
解説対象について
下記自然公園法の概要の「公園計画<保護に関する計画>(行為規制に関するゾーニング)」を解説します。
第2章 敷地の与条件を把握しよう!
公園種別の1次情報を取得する
保護に関する地区設定については、各公園地域毎に定めています。結論からお伝えしますが、環境省の各公園管理センターに連絡をして直接聞いて下さい。ここは特に重要な為必ず1次情報をご自身で聞き取りにいきましょう。ダブルチェックとして、「〇〇公園 自然公園法 特別地域」と検索をすれば、大体はマップに記されておりますので、確認をしましょう。
例えば、栃木県日光国立公園内の那須で計画をするとき
環境省のHPより各エリアの管轄が示されています。那須郡の場合、「那須管理官事務所」にて協議及び照会が可能となります。何か不明点や迷うことがあれば、電話番号にかけるようにしましょう。
スポンサーリンク第3章 公園種別毎の規制行為を把握しよう!
計画地の該当地域により、規制対象行為が異なりますので下記の区分け毎に解説を進めます。
特別保護地区の場合(許可)
結論:建てることがほぼ不可能です。
「公益上必要と認められる建築物」以外建築不可の為、
民間施設はあきらめた方が賢明です。
法規制力:★★★★★
申請方法:許可
(特別保護地区)
昭和三十二年法律第百六十一号 自然公園法
第二十一条 環境大臣は国立公園について、都道府県知事は国定公園について、当該公園の景観を維持するため、特に必要があるときは、公園計画に基づいて、特別地域内に特別保護地区を指定することができる。
〜省略〜
3 特別保護地区内においては、次の各号に掲げる行為は、国立公園にあつては環境大臣の、国定公園にあつては都道府県知事の許可を受けなければ、してはならない。ただし、非常災害のために必要な応急措置として行う行為は、この限りでない。
一 前条第三項第一号、第二号、第四号から第七号まで、第九号、第十号、第十五号及び第十六号に掲げる行為
二 木竹を損傷すること。
三 木竹を植栽すること。
四 動物を放つこと(家畜の放牧を含む。)。
五 屋外において物を集積し、又は貯蔵すること。
六 火入れ又はたき火をすること。
七 木竹以外の植物を採取し、若しくは損傷し、又は落葉若しくは落枝を採取すること。
八 木竹以外の植物を植栽し、又は植物の種子をまくこと。
九 動物を捕獲し、若しくは殺傷し、又は動物の卵を採取し、若しくは損傷すること。
十 道路及び広場以外の地域内において車馬若しくは動力船を使用し、又は航空機を着陸させること。
十一 前各号に掲げるもののほか、特別保護地区における景観の維持に影響を及ぼすおそれがある行為で政令で定めるもの
〜省略〜
特別地域の場合(許可)
特別地域の中にも、いくつか種別がございます。
種別により難易度が大きく変わります。(次章解説)
法規制力:★★★★☆(種別による)
申請方法:許可
スポンサーリンク(特別地域)
昭和三十二年法律第百六十一号 自然公園法
第二十条 環境大臣は国立公園について、都道府県知事は国定公園について、当該公園の風致を維持するため、公園計画に基づいて、その区域(海域を除く。)内に、特別地域を指定することができる。
〜省略〜
3 特別地域(特別保護地区を除く。以下この条において同じ。)内においては、次の各号に掲げる行為は、国立公園にあつては環境大臣の、国定公園にあつては都道府県知事の許可を受けなければ、してはならない。ただし、非常災害のために必要な応急措置として行う行為又は第三号に掲げる行為で森林の整備及び保全を図るために行うものは、この限りでない。
一 工作物を新築し、改築し、又は増築すること。
二 木竹を伐採すること。
三 環境大臣が指定する区域内において木竹を損傷すること。
四 鉱物を掘採し、又は土石を採取すること。
五 河川、湖沼等の水位又は水量に増減を及ぼさせること。
六 環境大臣が指定する湖沼又は湿原及びこれらの周辺一キロメートルの区域内において当該湖沼若しくは湿原又はこれらに流水が流入する水域若しくは水路に汚水又は廃水を排水設備を設けて排出すること。
七 広告物その他これに類する物を掲出し、若しくは設置し、又は広告その他これに類するものを工作物等に表示すること。
八 屋外において土石その他の環境大臣が指定する物を集積し、又は貯蔵すること。
九 水面を埋め立て、又は干拓すること。
十 土地を開墾しその他土地の形状を変更すること。
十一 高山植物その他の植物で環境大臣が指定するものを採取し、又は損傷すること。
十二 環境大臣が指定する区域内において当該区域が本来の生育地でない植物で、当該区域における風致の維持に影響を及ぼすおそれがあるものとして環境大臣が指定するものを植栽し、又は当該植物の種子をまくこと。
十三 山岳に生息する動物その他の動物で環境大臣が指定するものを捕獲し、若しくは殺傷し、又は当該動物の卵を採取し、若しくは損傷すること。
十四 環境大臣が指定する区域内において当該区域が本来の生息地でない動物で、当該区域における風致の維持に影響を及ぼすおそれがあるものとして環境大臣が指定するものを放つこと(当該指定する動物が家畜である場合における当該家畜である動物の放牧を含む。)。
十五 屋根、壁面、塀、橋、鉄塔、送水管その他これらに類するものの色彩を変更すること。
十六 湿原その他これに類する地域のうち環境大臣が指定する区域内へ当該区域ごとに指定する期間内に立ち入ること。
十七 道路、広場、田、畑、牧場及び宅地以外の地域のうち環境大臣が指定する区域内において車馬若しくは動力船を使用し、又は航空機を着陸させること。
十八 前各号に掲げるもののほか、特別地域における風致の維持に影響を及ぼすおそれがある行為で政令で定めるもの
〜省略〜
海域公園地区の場合(許可)
他公園も同様ですが、漁協組合など相手によっては、難易度が大きく変わります。
特に排水関連など、現場では使用量(有償)を要求されることが、ザラです。
法規制力:★★★★☆
申請方法:許可
(海域公園地区)
昭和三十二年法律第百六十一号 自然公園法
第二十二条 環境大臣は国立公園について、都道府県知事は国定公園について、当該公園の海域の景観を維持するため、公園計画に基づいて、その区域の海域内に、海域公園地区を指定することができる。
〜省略〜
3 海域公園地区内においては、次の各号に掲げる行為は、国立公園にあつては環境大臣の、国定公園にあつては都道府県知事の許可を受けなければ、してはならない。ただし、非常災害のために必要な応急措置として行う行為又は第一号、第四号、第五号及び第七号に掲げる行為で漁具の設置その他漁業を行うために必要とされるものは、この限りでない。
一 第二十条第三項第一号、第四号及び第七号に掲げる行為
二 環境大臣が指定する区域内において、熱帯魚、さんご、海藻その他の動植物で、当該区域ごとに環境大臣が農林水産大臣の同意を得て指定するものを捕獲し、若しくは殺傷し、又は採取し、若しくは損傷すること。
三 海面を埋め立て、又は干拓すること。
四 海底の形状を変更すること。
五 物を係留すること。
六 汚水又は廃水を排水設備を設けて排出すること。
七 環境大臣が指定する区域内において当該区域ごとに指定する期間内に動力船を使用すること。
八 前各号に掲げるもののほか、海域公園地区における景観の維持に影響を及ぼすおそれがある行為で政令で定めるもの
〜省略〜
普通地域の場合(届出)
唯一『届出』で済ますことができる為、難易度は決して高くはありません。
法規制力:★★☆☆☆
申請方法:届出
(普通地域)
昭和三十二年法律第百六十一号 自然公園法
第三十三条 国立公園又は国定公園の区域のうち特別地域及び海域公園地区に含まれない区域(以下「普通地域」という。)内において、次に掲げる行為をしようとする者は、国立公園にあつては環境大臣に対し、国定公園にあつては都道府県知事に対し、環境省令で定めるところにより、行為の種類、場所、施行方法及び着手予定日その他環境省令で定める事項を届け出なければならない。ただし、第一号、第三号、第五号及び第七号に掲げる行為で海域内において漁具の設置その他漁業を行うために必要とされるものをしようとする者は、この限りでない。
一 その規模が環境省令で定める基準を超える工作物を新築し、改築し、又は増築すること(改築又は増築後において、その規模が環境省令で定める基準を超えるものとなる場合における改築又は増築を含む。)。
二 特別地域内の河川、湖沼等の水位又は水量に増減を及ぼさせること。
三 広告物その他これに類する物を掲出し、若しくは設置し、又は広告その他これに類するものを工作物等に表示すること。
四 水面を埋め立て、又は干拓すること。
五 鉱物を掘採し、又は土石を採取すること(海域内においては、海域公園地区の周辺一キロメートルの当該海域公園地区に接続する海域内においてする場合に限る。)。
六 土地の形状を変更すること。
七 海底の形状を変更すること(海域公園地区の周辺一キロメートルの当該海域公園地区に接続する海域内においてする場合に限る。)。
〜省略〜
ここまでで法文を確認し、計画行為が、許可もしくは届出に該当するか否かを正確に把握して下さい。次章では、特別地域について掘り下げて解説を行います。
スポンサーリンク第4章 特別地域には、3つの区分がある!
具体的な規制内容の解説を行う前に、特別地域の区分について触れておきます。下記自然公園法施行規則によると、第一種特別地域 / 第二種特別地域 / 第三種特別地域の3つに分類することができます。本文も確認をしてください。
結論から言うと、こんな感じです!
第1種:そもそも建てられない
第2種/第3種:建築規制あるよー
スポンサーリンク(特別地域の区分)
昭和三十二年厚生省令第四十一号 自然公園法施行規則
第九条の十二 国立公園又は国定公園に関する公園計画のうち、保護のための規制に関する計画を定めるに当たつては、特別地域(特別保護地区を除く。以下同じ。)を次の各号のいずれかに掲げる地域に区分するものとする。
一 第一種特別地域(特別保護地区に準ずる景観を有し、特別地域のうちでは風致を維持する必要性が最も高い地域であつて、現在の景観を極力保護することが必要な地域をいう。)
二 第二種特別地域(第一種特別地域及び第三種特別地域以外の地域であつて、特に農林漁業活動についてはつとめて調整を図ることが必要な地域をいう。)
三 第三種特別地域(特別地域のうちでは風致を維持する必要性が比較的低い地域であつて、特に通常の農林漁業活動については原則として風致の維持に影響を及ぼすおそれが少ない地域をいう。)
第5章 規制内容が知りたい時はここを確認!(自然公園法施行規則第11条)
それでは、本題の規制内容です。
規制内容については、「自然公園法施行規則第11条(特別地域、特別保護地区及び海域公園地区内の行為の許可基準)」に記載があります。しかし原文が長すぎる為、環境省が公式に発表している表「自然公園法施行規則第11条(基準部分)引用関係整理表」を引用して分解します。
規制内容を手っ取り早く知りたい人!
下記の順番で見ていくとスムーズですよ!
①自然公園法施行規則第11条(基準部分)引用関係整理表
(この下に項目毎に抜粋しているものです!)
②施行規則第11条で詳細確認
1項 仮設の建築物に関する事項
2項 公園事業従事者若しくは農林漁業従事者の住宅に関する事項
3項 農林漁業に必要な建築物に関する事項
4項 集合別荘、集合住宅、保養所、用途上不可分の建築物に関する事項
5項 基準日前の造成行為若しくは着手工事に関する事項
6項 1~5項以外の建築に関する事項
7項 車道の新築に関する事項
8項 車道の改築または増築に関する事項
9項 分譲地等の造成を目的としたインフラ設備(道路や上下水道)に関する事項
10項 屋外運動施設に関する事項
11項 風力発電施設に関する事項
12項 太陽光発電施設に関する事項
13項 1~12項以外の仮設工作物に関する事項
14項 1~13項以外の工作物に関する事項
15項 木竹の伐採に関する事項
16項 指定区域内の木竹の損傷に関する事項
17項 露天掘り以外 の鉱物掘採若しく土砂採取に関する事項
18項 露天掘り の鉱物掘採若しく土砂採取に関する事項
19項 河川や湖沼の水位・水量の増減に関する事項
20項 指定湖沼・湿原等への汚水廃水に関する事項
21項 広告物に関する事項
22項 屋外での土石などの集積・貯蔵に関する事項
23項 埋立て・干拓に関する事項
24項 土地の開墾・形状変更に関する事項
25項 指定動植物の保護(採取・損傷・捕獲・殺傷)に関する事項
26項 指定区域内の指定動植物に関する事項
27項 指定区域内の指定動物の放出に関する事項
28項 色彩(屋根や壁面など)に関する事項
29項 指定区域への立入などに関する事項
30項 木竹や動植物の保護(損傷・採取・捕獲・殺傷等)に関する事項
31項 木竹や植物の保護(植栽・種まき)に関する事項
32項 動物の放出・屋外での行為(集積・貯蔵・火入れ・焚き火・車馬・係留・動力船)に関する事項
33項 動植物の保護(熱帯魚・その他指定種)に関する事項
34項 海底の形状変更に関する事項
35項 汚水・廃水に関する事項
36項 基準の特例に関する事項
37項 各行為共通の基準に関する事項
自然公園法の原文を読もう!
自然公園法 の原文 ←ここをクリック!
自然公園法施行規則 の原文 ←ここをクリック!
仕上げに法文に目を通しましょう。何事も1次情報に触れることは非常に重要です。
おわりに
自然公園法の理解は、日本のリゾート建設において極めて重要です。
本記事では、自然公園法の大枠について詳しく説明し、特別地域の区分及び規制内容や実際のトラブルを防ぐ内容についても触れました。これを基に、建築プロジェクトや自然環境の保護において正しい判断を下す手助けとなれば幸いです。
自然公園法の環境調査を学ぼう!
広大な敷地を利用して大規模にリゾート開発をする人向け!
敷地の大きさが1haを超える場合、自然公園法の環境調査(アセス)が必要となります。下記は、環境調査をトラブル事例を交えて解説しています。ぜひご参照ください。