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組織設計事務所のブラック勤務の実態と給与について【現役一級建築士が徹底解説】

見習い女の子
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組織設計事務所に行きたい!

お金とか働き方はどんな感じですか?

DJケンゴ

大手組織設計事務所

意匠設計勤務の一級建築士が解説をしよう!

はじめに

あなたにとって働く意味とはなんですか?
企業の知名度や恵まれた給与水準を目指そうとすると、自ずと忙しい日々があなたを待っています。
組織設計事務所は、建築学科で学んだあなたならお分かりだと思いますが、意匠設計の就職先で言うと王道の花道ですこの記事では、実際勤務している私の実体験を記します。ぜひ転職や就職の参考になることを祈っております。

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第1章 組織設計事務所の特徴と魅力

組織設計事務所について

組織設計事務所とは?

組織設計事務所は、建築設計に関わる多くの部門(意匠、構造、設備、エンジニアリングシステム、都市計画、コンストラクションマネジメント等)を抱える大きな設計事務所です。建築設計から工事監理を行うことも特徴の一つです。各地方や国に支店を持ち、多種多様な建築物の設計に関わることができます。

そもそも組織設計事務所ってなんだっけ?
アトリエ事務所やハウスメーカーとは何が違うの?

という方は必見!!他の設計事務所のと比較や特徴解説は、下記記事にて解説をしています。
理解を深めたい方は、下記記事をご確認頂いてから読んで頂くことを推奨します。

組織設計事務所のメリットは?

実際に働いていて感じるメリットは、下記の4点です。

ランドマーク級の大規模プロジェクト設計経験を積むことができる
職場環境に悩んでも、異動で解決可能
大手企業向けの課題解決スキルを身につけられる
案件規模が大きい為、成長までの道のりは長いが、経験も豊富になる

組織設計事務所のデメリットは?

デメリットについても同様に挙げてみました。

大規模なプロジェクトの為、全体像を把握するのに時間を要する
・会社運営に貢献する為、時に必要性のない仕事を行う
組織全体の為の積極的な姿勢が求められる
独立及び起業に生きる経験が積みにくい

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第2章 設計者の働き方について

人手不足と仕事の体質について

設計職能は人手不足にあり、複数案件を兼務する形で業務が進みます。
各案件でのフェーズ(ヴォリュームチェック、プロポーザル、コンペティション、基本計画、基本設計、実施設計、監理段階、アフターメンテナンス)によって力の掛け方が異なります
忙しいフェーズが重なると必然的に勤務時間も長くなる傾向にあります。
設計を進行する上で、多くの諸条件の把握や関係者との折衝を踏まえ、総合的に進行していく為、個人に属人化する仕事体制になっていますだから代わりが効かないのです。そんな背景から、周りからのサポートも受けるのが難しく、一人で背負うようになってしまいます。

勤務実態について

ここで私の勤務形態をご紹介します。1年の半分くらいはこのような勤務を行っていました。

時刻所要時間内容備考
08:001時間15分家を出発する満員電車に揺られ出社をする
09:1545分始業メールチェックとその日の指示出しなど
10:001時間設計部会議各種連絡事項共有
11:001時間会議資料作成案件の施主定例に向けた資料作成
12:0050分昼食社内食堂もしくは近隣のお店で喫食
12:5010分身だしなみ休憩トイレで歯ブラシをして午後に切り替える
13:002時間建築計画検討案件のメールチェックとその日の指示出しなど
15:001時間案件①社内会議設備や構造との設計調整会議
16:001時間案件②社内会議設備や構造との設計調整会議
17:001時間外部施主会議設計検討内容の報告と意見交換
18:002時間案件③社内会議意匠設計者のみでデザイン検討
20:0030分夜ご飯会社でお弁当を食べる。早い時間で終わるお店がある。
20:301時間30分メールチェックと指示出し一日のメールチェックと成果物確認、翌日指示出し資料作成
22:002時間個人タスク整理各種案件で不足している検討や漏れなどを確認
24:00終業終電に間に合うように全力ダッシュで会社を出る
25:301時間30分帰宅帰り道にビールを買って一日を締めくくる
一日の主なスケジュールの例

一方で、労働基準法第36条に対しての遵法性意識は高い為、勤務時間表の入力は実態とは異なる時間を入力していました。これらは暗黙の了解であり、むしろ残業をしてまでやり切る方が美徳とされている雰囲気です。どれだけいいものを作れるか?の観点が強く「限られた時間内で」という観点が薄いのです。

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36協定とは?

俗に言う「サブロク協定」について、簡単に解説をします。
労働基準法36条に基づく労使協定は、企業が法定の労働時間(1日8時間・1週間で40時間)を越えて労働(残業)を指示する際に必要です。この36協定は、合意を結び、その内容を所轄の労働基準監督署に報告することが必要です。要するに、この合意を結ばずに企業が従業員に法定労働時間を越えた労働(残業)を命じることはできません。

参考までに、労働基準法の原文を転記します。

(時間外及び休日の労働)
第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
② 前項の協定においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができることとされる労働者の範囲
二 対象期間(この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる期間をいい、一年間に限るものとする。第四号及び第六項第三号において同じ。)
三 労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる場合
四 対象期間における一日、一箇月及び一年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数
五 労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項
③ 前項第四号の労働時間を延長して労働させることができる時間は、当該事業場の業務量、時間外労働の動向その他の事情を考慮して通常予見される時間外労働の範囲内において、限度時間を超えない時間に限る。
④ 前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。
⑤ 第一項の協定においては、第二項各号に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)並びに一年について労働時間を延長して労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め七百二十時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができる。この場合において、第一項の協定に、併せて第二項第二号の対象期間において労働時間を延長して労働させる時間が一箇月について四十五時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間)を超えることができる月数(一年について六箇月以内に限る。)を定めなければならない。
⑥ 使用者は、第一項の協定で定めるところによつて労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であつても、次の各号に掲げる時間について、当該各号に定める要件を満たすものとしなければならない。
一 坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務について、一日について労働時間を延長して労働させた時間 二時間を超えないこと。
二 一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間 百時間未満であること。
三 対象期間の初日から一箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の一箇月、二箇月、三箇月、四箇月及び五箇月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の一箇月当たりの平均時間 八十時間を超えないこと。
⑦ 厚生労働大臣は、労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするため、第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の健康、福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して指針を定めることができる。
⑧ 第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、当該協定で労働時間の延長及び休日の労働を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の指針に適合したものとなるようにしなければならない。
⑨ 行政官庁は、第七項の指針に関し、第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。
⑩ 前項の助言及び指導を行うに当たつては、労働者の健康が確保されるよう特に配慮しなければならない。
⑪ 第三項から第五項まで及び第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は、新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務については適用しない。

昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法

ブラック勤務の生活への影響とワークライフバランスの課題

お気づきの方もいらっしゃると思いますが、これだけの多忙を極めていると家庭どころではありません。現に私の周りでは、家庭内崩壊を起こしている方が多かったです。まさにモーレツ社員といった感じでしょうか。当然平日は、子供が起きている時間に帰ることはない為、家庭への負担は大きく、休日の趣味に充てる時間などありません。もし趣味に当てようものなら、家庭崩壊まっしぐらです。
私の生まれは、親が自営業を営んでいたこともあり、常に親が家にいる状態でした。リモートワークが取り入れてからは、就業時間が短縮している傾向にあると思います。

加えて食事が不規則になりがちです。特に夜遅くにご飯を食べる方が多い為、設計者の過半数以上は、逆流性食道炎を発症していました。

第3章 給与についての現状と課題

意匠設計職能の新卒5年目の給与は?

一番皆さんが興味のある項目と思います。
ズバリ新卒5年目の年収額は、年収800万円です。これは残業に依存した給与となっており、基本給は決して高くありません。他のメンバーと比較しても同じくらいでした。新卒2年目時点では、年収700万円程度でした。1年毎に基本給は上がりますが、月給1~2万円程度の増額です。
勤務時間は月々で変動はあるものの、前章の勤務時間を踏まえると、時間を捨ててお金を得ている感覚に近いと私は感じています。

参考 一級建築士の給与平均値について

一級建築士の平均年収について見てみましょう。政府の統計をまとめると下記の表になります。

企業規模月給(万円)賞与(万円)年収(万円)程度
1,000人以上51228800
100人〜999人38.9151617
10人〜99人38.8103568
引用:e-stat 政府統計の総合窓口「賃金構造基本統計 調査令和元年以前 職種DB第1表」より

上記の表からは、企業規模が1,000人以上の会社では、月給がおよそ51万円で賞与が228万円。これにより年収は800万円を超える平均とされています。一方で、100人〜999人の会社では、月給が約38.9万円で賞与が151万円。これにより年収は約617万円程度となります。さらに、10人〜99人の企業では、月給が約38.8万円で賞与が103万円。こちらの場合、年収は合計で約568万円です。

まとめると、一級建築士の収入は、勤務する会社や事務所の規模に依存する傾向が御座います

一級建築士は社内でどれくらいの人が所有している?

一級建築士の取得に不安がある方が多いと思いますが、実際社内での取得率はどうであったか?振り返ります。
私の勤務会社ですと約3割が未取得でした。組織設計事務所は、一級建築士取得を推奨しています。お祝い金制度を設けている会社が多く、受験する回数に応じて金額が減る会社も御座います。残念なことに、優秀な人が多い為、一級建築士取得は通過点として見られる為、社内での過大な評価はされません。給与は、私が在籍していた会社では、月給が3万円程度増えました。確認申請に自身の名前が記載される、合コンや友人からのウケが良い。まさにこれくらいだと思います。

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第4章 組織設計事務所を選ぶポイント

最後に個人的なおすすめの観点をお伝えします。
結論から申しますと、「設計したい用途」これを明確に持つことが重要です。
それは、組織設計事務所は物件の完成までの期間が長く、担当フェーズもごく一部に限る場合も多いです。例えば、〇〇PJの基本設計のみ担当。実施設計以降は、他の担当者に引き継ぎなど。
これを繰り返している時に、やりがいが薄れる瞬間が出てきます。その際に、設計したい用途が明確だとやりがいがブレずに済みますし、公言し続けると担当に任命される可能性も高まります。

組織設計事務所は、それぞれの会社の強みがありますが、建築用途にも強みが出ています。
日経アーキテクチャーなどでよくランキング解説がされていますので、要チェックです

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おわりに

組織設計事務所での働き方や魅力、そして課題について実体験を通じてお伝えしました。建築の世界は素晴らしいチャンスと成長の場であり、組織設計事務所はその中でも一つの舞台です。

組織設計事務所は、多彩なプロジェクトに関わり、大規模なプロジェクトの経験を積むことができる魅力があります。しかし、その一方で忙しい日々や長時間労働など、ワークライフバランスの課題も存在します。労働基準法や労使協定による規制もありますが、業界の特性により長時間労働が一般的となっていることも事実です。

給与についても、企業規模や取得資格によって差があることが明らかになりました。一級建築士取得には、サポートを受ける会社も多いですが、その後の給与アップや評価は個人差があるようです。

建築設計の道を進む際には、自身の目標や希望する用途を明確にすることが重要です。組織設計事務所は、その特性を活かし、建築のプロとして成長する場でもあります。適切な選択と努力により、充実した建築設計のキャリアを築いていってください。

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